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7日目 天界転生部門

私は、深夜に死んだ目になりながらパソコンをカタカタしていた。


今日で6連勤目だ。


私だけでなく周りも同じ。


死んだ目でカタカタしている。

誰も何もしゃべらない。


なんでこんなことに......。


――……6日前


「おはようございます!」


私は笑顔で出社する。


ここは、天界転生部門。


天界で死んだ魂を転生させる部署だ。


みんな笑顔で仕事をしていた。

定時退社できる。


ホワイトな職場、なはずだった。

あの時までは。


「なんですって!?」


その声が部署に響き渡る。


部長の声だった。

顔面蒼白になっていた。

みんなは驚いて部長を黙ってみていた。


「はい。はい。」


と相槌を打った後電話を切る。


そして深刻な顔をして電話を切る。

みんなの視線が部長に向く。

部長は、少し沈黙した後、


「地上に魔王が現れた。」


そう告げた。


――魔王。


それは神話の時代にいたと言われる存在だ。


地上を地獄のようにする存在とされる。


それが地上に現れたというのだ。


みんな顔面蒼白でざわざわしだした。


地上を地獄のようにするのは心が痛いが問題はそこじゃない。


問題は、人がたくさん死ぬということだ。


そうするとどうなるか。


――私たちの仕事が異常に増える。


――……

そして今に至る。


私達は碌に寝ていなかった。


エナドリを片手にカタカタと無言で打ち込む。


明け方に帰って、すぐ会社に戻ってくる。

帰るのめんどくさくて帰らないものもいた。


「うわあああああああ!?」


と急に叫んで暴れまわる者もいた。

その気持ちはわかるとみんな思ったが取り押さえて落ち着けた。


そして、7日目の日の出あたりだった。


部長が電話を取る。


「......はい。転生部門です。はい。......はい!?本当ですか!?」


部長が驚き叫んだ。


「はい!わかりました!」


そう言って電話を切る。

みんなの視線が部長に向く。


「みんな!地上に勇者が現れた!」


!?

勇者!?

魔王を神話の時代に打ち倒し、魔王が現れたときに現れ打ち倒すと言われている

あの!?


「やったあああああ!!!」


それまでの疲労が嘘みたいにどんちゃん騒ぎだった。

みんなテンションがすごかった。

仕事しすぎておかしくなってるのか、嬉しくておかしくなってるのかわからないけどもうどうでもよかった。


私達は、大盛り上がりだった。


それから数日、目に見えて仕事は減っていた。


勇者の大活躍のおかげだ。


私達の部署で、地上の勇者をモニターに映しながら仕事をしていた。

普通に仕事中にそんなことをしていてはだめだが、部長が


「他の部署には秘密でしよう。だって、俺たちの救世主の活躍みたいじゃん?」


と勝手にしたのだ。


私達は、確かにと思い反対しなかった。


そして仕事をしながら、


「いいぞ!そこだ!」


と私たちは野球観戦のように応援しながら仕事をしていた。


そんなある日、いつものように出社すると、会社の雰囲気が暗かった。


なぜかみんな落ち込んでいた。


「あの、なにかあったんですか?」


意を決して私が聞いてみると、勇者が死んだと予想だにしない返答が帰ってきた。


その言葉を脳が理解を拒んだ。


勇者が死んだ?


そんな、あの彼が?


彼のことを私だけじゃなくこの部署全員が知っている。

彼の強さ、優しさ。


あの彼が?

そんな馬鹿な。


信じられずその時の映像を見たという人に詳しく聞く。


「仲間の剣士が裏切ったんだ。俺はもうお前の影でいるのはまっぴらだと。お前ばかり活躍して目立ってるのが許せない。魔王様は俺を見てくれた。お前を倒せば幹部にしてくれるんだ。そう言って後ろから刺したんだ......。」


悲しそうな表情でそう言った。


ふざけるな。


最初の感情はそれだった。

陰でいるのはまっぴらだ?

目立ってるのが許せない?


何言ってる。

私達はお前を見ていた。

勇者の幼馴染として相棒として支えていたお前をちゃんと見ていた。

いろんな村の人たちも勇者だけじゃなくお前に感謝していただろう。


それなのに......!


ショックすぎて何も言えなかった。


そして、それから魔王の幹部になった剣士が暴れ続けて、死人が増えていき、私たちの仕事はまた増えていった。


クマを作りながらも無言で仕事をする。


みんな苦しみながら悲しい表情をしていた。


お前が死んだなんて嘘だろ......。

勇者。


みんな心の中は勇者のことを考えていた。



――……

数日後、異変が起きる。


仕事量が減っていた。


そして、部長に電話がかかってきてある事実が判明する。


「みんな。勇者の子供のライムが旅に出た。」


子供!?

あいつ子供いたのか!?


みんなざわざわする。


モニターを調節する。

そしてモニターに一人の少年が映る。


......似ている。確かに。


こいつ、魔王を倒す気なんだな。


そう感じて私は一言いう。


「みなさん。こいつのことを見守って応援しましょう。なんたってあいつの子です。やってくれます。」


みんなそれぞれ


「そうだな。応援するか。」


「ああ、あいつに似て、やってくれそうな何かを感じるよ。」


「頑張れよ。」


と声を出していた。


――……

それからというもの、どんどんライムは魔王城へと近づいていた。


相棒で幼馴染の剣士のゼイドという者が一緒なのが、裏切り者のあいつを思い出してしまいちょっと疑いの目で見てしまう。

それでも進んで行き、とうとう魔王城についた。


とうとうついたんだな。

お前ならできるぞ。


やってやれ。それで世界を救うんだ。


そうみんな応援していた。


どんどん進んで行く。


そして最深部で奴が現れた。

裏切り者の剣士だ。


「あ、あんたは!?」


とライムが驚く。当然だ勇者の仲間の剣士が魔王城にいたのだから。


「久しぶりだな。」


「ま、まさか、父さんが死んだのは......。」


「そうさ、俺がやったのさ。だってしょうがないだろ。奴がいる限り俺は影だ。」


「そんな、そんな理由で!?お前だけは許さない!」


そうして戦いが始まる。


最初は苦戦したが、これまでの戦いでライムもゼイドも成長していた。


どんどん剣士は追い詰められていき、倒れる。


その時、剣士がゼイドに言う。


「おい、お前、影で満足か?光になるなら今だぞ。」


「悪いけど興味ねえよ。俺は、笑っててほしいやつらが笑えるようになればいい。それだけだ。」


そう言って剣を振り下ろした。


ゼイドは、ライムに向かって


「行くぞ。」


と呼びかけた。


私は反省した。

今まで疑っててすまなかった。


お前は最高の相棒だ。


そして魔王の玉座につく。


そこで信じられないものを見る。


ライムも驚きで声が出なかった。


魔王の顔は勇者だった。


「偽物だ!!!」


私はそう叫んだ。

しかし、こちらの声は聞こえない。


「と、父さん......?」


そうライムが声を何とか出す。


違う!あいつは死んだんだ!そいつは偽物なんだ!気づいてくれ!


「ああ、そうだ。ライム。俺だ。」


そう魔王がつぶやく。

卑怯者が!


そうしてライムの頬に手を触れて、


「俺の仲間にならないか?」


そう聞いてきた。


「え?お、俺は......。」


ライムは答えられずにいた。


「やぁ!!」


ゼイドが斬りりかかる。


「ゼイド!?」


「何を迷ってる!こいつは偽物だ!忘れたのか!お前の親父は、あの人は、こんなことを言う人じゃない!」


そう言われてライムはハッとした。


そうだ。あいつはそんな奴じゃない。

思い出せ。


そうしてライムは剣を取り、


「ゼイド倒そう!世界を救うんだ!」


そう言って魔王に駆け出した。


――……

「最高でしたね!」


ビールを飲みながら私は言う。


「ああ、魔王倒した瞬間みんな立ち上がって歓声上げたもんな」


と上司は同意した。


私達は、部署の人全員で飲み屋に来ていた。


「いやーゼイド最初は信用してなかったんだけどね。」


とどこからか声が聞こえる。


「私は最初からわかってたよ。いい目をしていた。」


としたり顔で言う人もいれば、


「いや、ライムもゼイドも頑張ったな!ゆっくり休んでほしいな!平和になった世界で!」


と笑顔で語る人もいた。


みんな笑顔で、人生で一番うまい酒をこの日は飲んだ。


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