花園由香
「おはようございます。」
メイド服に身を包む女性に、一人の少女は起こされた。
「おはよう、仲田さん。」
少女は挨拶を返し、ベットから身を起こした。少女の名は、花園由香。花園家は、江戸時代に炭鉱を見つけ、そこそこ位の高い貴族のような感じだ。このメイド服のようなものを着ているのが、お母さんの雇人、仲田早苗である。見た目は若く見えるが、もう30を超えている。
「ご飯の用意ができていますよ。」
由香は伸びをし、地面に足をつけた。私の家はそこまでの裕福ではないが、日々の食糧には困らなかった。
白米は毎日食べることができる。加えて、野菜もある。戦時中の日本、何故ここまで食糧が集まるのか。その理由は、花園家は炭鉱を所有していることもあり、国への販売が可能だ。なんだかんだで必要となるため、売り上げは高かった。そこで、由香の母、花園美春は、農民から高額で野菜を買っている。農民は大金を手にし、私たちは食料を得る。ウィンウィンとはこのことか。本来なら、自分の財産は自分のために使うのが基本だ。ましては戦時中の日本。周りから見れば、愚かと言われても仕方ないだろう。では何故、美春はこのような行動をするのか。その理由はたった一つ。美春は人の笑顔が大好きだった。戦時中の日本に笑顔は消えかけていた。そんな世の中に少しでも笑顔が生まれるように美春はこのような行動をとっている。
「明日はお母様がお帰りになられますね。」
「ええ。楽しみです。」
食卓まで移動した私は、腰を下ろした。
「お母さん、元気かな…」
はい、補足が一つあります。
「ベット」と表記されている部分がありますが、それは、地面に寝ているわけではない、と言う意味で、私たちの想像するベットよりはだいぶ質素なものです。
では、この作品について少し説明をします。この作品は、本編「あの花の丘で」のサイドストーリーとなります。が、本編にも繋がります。以上です。