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8、小蓮の策

小蓮には、呪いを解く策があった。机から手をどけて、元の位置に戻って続きを話す。


「呪う場合は、対象者のよくいる場所に呪具を置く必要があります。住居の敷地内、特に寝床の近くなどです。呪具は術者の手掛かりになるので、足がつかないように終わったら回収しないといけません」


どんなものかは、危険なので本には書いていなかった。術者によっても使う物は違うと思う。


「将軍を死んだことにすれば、犯人が必ず回収に現れるはずです」

「なるほど、そこを捕まえるということだな」

「はい。使用人の誰かが、犯人の協力者になっているはずなので、広範囲を探すよりかは回収したところを捕まえれば一石二鳥です。こちらも協力者が必要なので、信用できる人を選ばないといけません。犯人の目星はありますか?」


藍英は背もたれに身を預ける。目線を斜め下に向け、左手を右腕に置き右手を軽く握りながら顔に近づけて思案する。


「皇帝や宰相とは良い関係を保っていると思う。先帝を廃した時も、俺は二人に協力した。政策に対しては、必ず宰相を通して目立たないようにしている。

父を殺した、黒の暗殺部隊の者を処分するのにも協力してもらった。黒の部隊は存在しないことになっているから、そこにいることを家族は知らない。死んでも事故死扱いになる。そうなると、軍関係者かもしれない」

「そうですか」(香呂さんが言ってたことは、本当だったんだ)


小蓮は暗い気持ちになった。



その後、屋敷の使用人と、軍の一部の部下に計画を話すことになった。


「将軍が呪われていたなんて!」


その場の全員が驚愕した。

王先生は呪いのことを知っているので、医師として協力してもらうことになった。王先生も屋敷に呼ばれた。


「小蓮なのか!? どうしたんだ少年のようだったのに、すっかりきれいになって、もう年頃の娘だな」

「あははは」


久しぶりの再会で、気持ちが和んだ。


「しかし、師念があんなことをするとはな」

「そうなんです。それに気が付いて、師匠の元から逃げたんです」(ということにしておく)

「そうだったのか!」

「王先生のところにも行ったんですよ。そこで、偶然将軍に会ったので、師匠のことを言うことにして付いて行きました。それで匿ってもらったのですが、師匠はここにも来ました」

「やはりあの時来たのは、小蓮だったのだな。そうか、師念にはバレていたのか。お前に何もなくて良かった」


小蓮は上手くいったと、藍英に目配せする。藍英が話を引き継いだ。


「先生には呪いを解くために、協力してもらいたい」

「分かりました。私で良ければ、お手伝いいたします」



数日後、皇宮の朝議で藍英が危篤状態だと、官吏より報告された。


「動くこともかなわず、衰弱しているそうです。医師の説明では、呪いではないかとのことです」


ざわっ! 出席者達が動揺する。

呪いは実際に効果があるのか、ないのか、半信半疑なところがある。しかし、呪具が見つかることがたまにあり、不可解なそれらしい死もあるのが現状だ。そのため、法律で固く禁じられていた。



朝議が終わると藍英の屋敷に、赤の総大将(ちょう)氏と、黄の大将軍(きょう)氏が、様子を見に見舞いに訪れた。張氏は50代後半、白髪交じりの髪を頭上で結び、上品な口ひげがある。姜氏は30代後半、背が高くがたいも良い、黄茶色のツンツンととがった短い髪が横になびいている。使用人に案内されて、二人は藍英の寝室に入った。

藍英は横になり、目をつむっている。首まで呪いのあざが広がっていた。王医師が座って様子を見ている。


「容態はどうなのだ」


張将軍が、心配そうに声をかけた。


「痛みで、意識が続きません」首を横に振る。

「なんと」


二人は部屋を出た。使用人が後から付いて行く。


「まだ若いのに__。呪いとはこうも効果があるものなのか。恐ろしいことだ」

「まったくです」

「先代のことといい、(たい)家で不幸が続くとは、気の毒よ」


二人の将軍は帰っていった。

藍英は寝室で、見送った使用人の報告を聞いた。


「お二人は、神妙な面持ちでお帰りになりました。特に変わったご様子はありませんでした」

「そうか」


それからも、代わる代わる官吏や軍部の者が見舞いに来て様子を見ていった。藍英は日に日にやせ細り、あざが顔面にまで広がり、黒くざらついて干からびていた。見舞いに来た者は、恐ろしさで早々に帰っていった。


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