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そばにいた

作者: kno

 春先の夕陽がとても綺麗な日だった。


「______いってきます。」


 随分と暖かくなった気候は薄手のパーカーで充分なくらいで少し強めの風が髪を仰いで心地いい。

 夕陽の光を浴びながら、少し目を閉じて歩いていた。

 その時――――浴びていた光が遮られた。

 遮ったのは華奢な背中を丸めて柵を乗り越えようとする女の子だった。

「…………っおい!」


 バサッと靡いた服が音を立ててその身体は川の方に落ちていく。

 必死に伸ばした手は届かず、かすめもしなかった。

 

 ドボーンという激しい音と飛沫をあげた水が頬に届きそうなくらい飛んできたその瞬間

____景色が下へ向かって線を引いた。







 今日は夕陽がとても綺麗だ。

 夕暮れ時、いつものように橋を歩いていた時、川の方からかすかに弱い声が聞こえた。

 仔猫だ…………

 その仔猫は川の中の出っ張った石にしがみついて声を上げていた。

 どうしてあんなところに?母猫はどうしたのか?

 そんなことがよぎった気もしたけどもう衝動だった。背負っていた荷物を肩から下ろして、ポケットにあったスマホや鍵なんかも全部地面に投げ捨てて飛び込んだ。


 ドボーンという激しい音と飛沫をあげた水が服にしみて身体が冷えていくのを感じる。今日は穏やかといってもやっぱり川は流れがあって思ったように泳げない。それでも何とか仔猫の元までたどり着けた。


「とっ……届いた……わっ!」


 突然身体が言うことを聞かない。後ろから誰かに掴まれたような感覚がしてとても怖かった。


 でもそれは――――


「ぶはっ!……掴まれ!」

「…………え?」



 支えていてくれたのは――――君だった



「なにしてんだよ……ん?猫?」

「…………。」




 寄りかかってしまえば、楽を知ってしまえば


 もう二度と立てない気がしてた。




「仔猫助けるために飛び込んだのか……びっくりしたァ。でも――」

「……えっと。」


「......よかったぁ。」


 君と出会ったのは夕陽がとても綺麗な日でした。






 

「あったなーそんなこと。

 あれがハルとむうとの馴れ初めかぁ。」

『いやぁほんとビックリしたよ。猫助けるために川飛び込むなんてなんかの主人公だろ。』



 ハハッと笑うハルの顔



「あの時は必死だったんだよ、わかってるの?むう。」

「……にゃあお。」


朝食で使った食器を洗いながら足元にいるむうに話しかける




 あの時2人で助けた仔猫を私が引き取った

 名前は――むう

 上唇は黒に下唇から顎全体が明るい茶色で色がわかれてるのが特徴のサビ猫



『ガリガリだったけど、もうすっかり美猫だなぁむう。』

「にゃぁぁあ。」

「ご機嫌だねぇむう。」

「にゃあお。」

『サヨは少しご機嫌ななめか?

よしよし、サヨも撫でような!』



撫でられてる時のように耳をたたみ目を細めてご機嫌な様子のむう

 この子は私とハルとで返事の仕方が変わる


 私に対しては「にゃあお」と高く短めの返事

 ハルに対しては「にゃぁぁあ」と長く伸びた返事






「......ねぇハル、なんでまたあんな無茶したの?」

『......ごめんな。なんかあの時と重なってさ。って言い訳にしかならないか...。』


「ハルが優しい人なのはわかってるけど、今回ばかりは怒ったよ。」

『はい、ごめんなさい。』



「今でも電話くるよ。もう謝罪なんていいのに。」

『...うん。』








_____サヨさんのお電話でお間違いないですか?


_____はい。あの警察の方が私に何か?


_____実は、先程......







_____この度は誠に申し訳ございませんでした!

謝って済む話ではありませんが...


_____サヨさん?ですか?...私のせいで

本当にごめんなざぃ...。。







「一生分泣いたよ。」

『うん。』



「ずっと一緒って言ったのに。」

『......ごめんな。』



「ハルもあっちで泣いてればいいのに。」

『うん。もうすげぇ泣いたよ。』



「声...聴きたい。」

『...聴こえたらいいのに。』



「頭撫でてよ。」

『してるよ。ずっと』




_____窓からの風だけが頭を撫でていく




 

「ふぅぅ。……さ!そろそろ学校行かないと!

 行ってくるねむう。留守番よろしく!」


靴を結びながら後ろにいるであろうむうに話しかける




サビ猫は自身の右横を見上げて


「...にゃぁぁあ。」


 

 リュックを背負って最後にもう一度――――




 これからずっと変わることのない

 フレーム越しで



ハハッと笑ってるハルの顔




「……行ってきます!」

「にゃあお。」



 ――いってらっしゃい


 


ざっくりすぎる作品でしたが、いかがだったでしょうか。これは中学生の頃に作った物語で実はもっと長編の予定で書いておりました。まだ中身がうまく構成できなかった頃なので今になって大まかなストーリーとして投稿しています。

好評であれば後日談なんかを構想したいと思います。


評価、コメントお待ちしております。

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