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1章 カゲナ 影と光の はじまり  作者: Kagena
第1章:カゲナ 影と光の はじまり
4/4

第4話 (悪魔は眠り、剣は踊る) 3分

静かな朝――すべてが眠りにつく中、ひとつの戦いが始まっていた。

力とは何か。制御とは何か。

そして、自分だけの“強さ”とは。

カゲナは、まだ知らない「覚悟」と向き合うことになる。

かつて悪魔を宿し、今はひとりで力を制する姉。

すべてを読み、冷静に戦うメイド。

そして、力を求める少年。

――この朝、それぞれの“強さ”が交錯する。

静寂の朝。空気は冷たく澄んでいて、家の奥で誰かの寝息が小さく響いている。


カゲナは目を開け、しばらくぼんやりと天井を見つめていた。

全身が少し重い。あの精神の戦い――ノクシアと天使の戦いが、彼の心に深く刻まれていた。


(カゲナ・心の声)「……ノク、まだ寝てる」


心の奥に意識を向けると、返ってくるのは静かな気配。

まるで深い湖の底に沈んでいるような、そんな眠りだった。


(カゲナ・心の声)「すごく……疲れたんだな」


静かに起き上がり、上へと向かう。朝の風を感じようと階段を上がると――


カゲナ:「……なに、これ」


目の前の光景に、思考が止まった。

広がる野原の中心で、ミレイナとクレアナが戦っていた。


いや、ただの訓練ではない。

空気が軋む。草が斬れ、空が震える。

まるで命と命が交わるような、純粋な“力の衝突”がそこにあった。


クレアナは、白い翼をひらりと揺らし、美しい動きで剣を振るう。

その動きには無駄がなく、まるで音楽のようなリズムすら感じさせる。


クレアナ:「――計算、完了しました」


静かに告げる声。彼女の目が冷静にミレイナを捉え、次の動きを完全に予測する。


(カゲナ・心の声)「……クレアナさんの能力……“計算”?」


すべてを読み、流れを制し、戦いの未来を組み立てる力。

それが、彼女の真骨頂。


だが、対するミレイナはまるで逆だった。


ミレイナ:「はっはっ、いいね……どんどん来なよ!」


ミレイナの足元から闇が吹き上がる。だがそれは暴走ではない。

ギリギリのところで踏みとどまり、理性と本能の間を渡り歩くような制御だった。


(カゲナ・心の声)「ミレイナ姉さん……あの魔力……暴走しそうなのに、抑えてる……」


クレアナが後退する。

ミレイナは空中に手をかざし、ぽんっと何かを創り出した。


それは――無数の鈴のような道具。空中で舞い、何かのタイミングで炸裂する仕掛けのようだった。


(カゲナ・心の声)「……これ、アイテム? 創造……!?」


クレアナ(少し感心したように):「その創造力、健在ですね。武器は相変わらず苦手のようですが」


ミレイナ:「ふん、アイテムは得意だけど、武器はね、形がまとまらないのよ。バランスとかめんどくさいし」


ぶっきらぼうな言い方とは裏腹に、そのアイテムは正確に戦況を操っていた。


(カゲナ・心の声)「これが……ミレイナ姉さんの能力、“創造”……」


だがその力の発動と共に、魔力の暴れが強くなる。

時折、地面がひび割れ、風が泣いた。


(カゲナ・心の声)「……やっぱり、暴走しそうなんだ……」


戦いがさらに熱を増す。

クレアナがついに剣を捨てた。


クレアナ:「剣はいりません。わたし自身が、“刃”です」


彼女の手が変形し、鋭い金属のような質感を纏う。

白い翼が大きく広がり、その姿はまるで天使と武人が融合したかのようだった。


その美しさに、カゲナは一瞬、息をするのを忘れた。


(カゲナ・心の声)「これが……クレアナさんの“本気”……?」


二人の力がぶつかり合う。

だが、その時――


クレアナ(ぽつりと):「……もし、あの子の中の悪魔が、まだいたら」


クレアナ:「今のミレイナ様は、“抑えている”。けれど、あの悪魔がいたら……魔王以上の存在になっていたかもしれませんね」


(カゲナ・心の声)「……!」


その言葉が、カゲナの中で強く響いた。


(カゲナ・心の声)「悪魔が……まだ、ミレイナの中にいたら。でも今、彼女は一人で立ち、一人で暴走を抑え、一人で戦っている……」


カゲナ(ぽつりと):「……すごいな」


その瞬間、静かな電子音が鳴り響いた。


クレアナ:「――タイマー、終了です」


ふたりの戦いが止まり、空気が少しずつ穏やかに戻る。


そして、ふたりの視線が同時にこちらへ向けられた。


ミレイナ:「見てたんだ、カゲナ」


ミレイナが笑う。風に揺れる黒髪の中、赤い瞳が優しく光っていた。


ミレイナ:「ねぇ……あんたも、やってみる?」


その挑戦的な目に、カゲナは拳を握り返した。


カゲナ:「俺も、自分の力だけで……やってみたい」


ノクシアは、まだ深く眠っている。

けれど――

自分の力だけで、どこまでできるのか。知りたい。


ミレイナ:「よし、来な」


ミレイナが構えた。

闇がまた、静かに広がり始める――。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、ミレイナとクレアナという「対照的な戦い方」を持つ二人の対決、そしてカゲナがその姿に心を動かされ、自分の力と向き合う場面を描きました。

ミレイナの中には、かつて悪魔がいたという設定も、今後の展開に大きく関わってきます。

ノクシアが眠る中でのカゲナの戦いが、どんな意味を持つのか――それはまた、次の物語で。

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