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5 ロックされた部屋



 あの子たちはどうしてるだろう。蜘蛛が無事に植え込みの陰に隠れたのを確認した後、僕は一旦マンションの部屋に戻ってみることにした。

 途中で自分の家の前に救急車が止まっているのが見えた。

 帰ってきた母親に発見されたんだろうな。取り乱す両親の顔が思い浮かんで、憂鬱な気分になる。


 思えば悪いことしたな。自殺した後の事なんて考える余裕なかったからな。

 死ねばすべてが無になると思っていたし。

 こんな風に死んでも続きがあるなんて思ってもいなかった。

 僕は担架で運ばれる自分の姿を見ないように意識を背けてマンションに戻った。


 女の子はソファで弟を抱くようにして寝ていた。

 お弁当ハンバーグを食べて一息ついたのか、寝顔にも安堵感が表れている。

 僕は女の子に聞くのは諦めて、この家の主、母親の名前を調べることにした。

 とりあえず、名前と顔を知らなければ探しようがない。


 名前は案外簡単にわかった。

 壁にかかった透明の郵便物入れの一番表側に電気料金の領収書の封筒が入っていたのだ。

 よし、名前は確認した。あとは写真か何かで顔を確認したいところだ。


 女の子達が寝ているリビングをくまなく見渡してみたが、写真立てとかそういうものはなかった。

 その部屋を出て奥の寝室に行ってみる。

 そういえばこの部屋にはいるのは初めてだった。

 女の子の言葉で、母親は出かけているものと思っていたから、他の部屋を探すなんて考えてもいなかったのだ。

 しかし、実は寝室で母親は心臓麻痺で死んでいた、とか。


 そういうことはなかった。

 散らかった部屋の真ん中にあるダブルベッドの上にはクシャクシャになったシーツと毛布、それと脱ぎ捨てられた部屋着のジャージがのっているだけだった。


 そうだ。

 あの子たちは部屋の外に出られないんだろうか。

 出られるのなら助けを呼ぶのは簡単なはずだ。

 寝室を抜け出して玄関に行ってみる。

 玄関のドアは上下に鍵が二つあり、それが二つともにロックされていた。


 女の子の背丈では、椅子を持ってきたとしても上の方の鍵は開けられないだろう。

 いや、そうかな?


 椅子に乗って手を伸ばせば、あの子でも届きそうなんだけどな。

 不思議に思いながら二人のいるリビングダイニングに戻るときにわかった。

 僕はドアをすり抜けていたから気づかなかったが、リビングダイニングのドアが開かないようになっているのだった。閂のようなもので外から閉められているのだ。


 普通のマンションの部屋はこんな鍵ついていないはずだから、ここの母親が子供が無闇に出て行かないように後付けしたのだろう。


 リビングダイニングに戻ると、ソファで二人は寝息を立てていた。

 この子たちが自力で脱出できないのなら、やはり助けを呼ぶしかない。

 とりあえず母親を探すべきだろうけど、名前はわかったがまだ顔がわからない。

 それに、考えてみれば顔がわかったところで、どこをどう探せばいいのだろうか。


 職場も交友関係もわからない人間を人に尋ねる事もせずに見つけ出すというのは至難の技だ。

 ふと、さっきの交番を思い出した。

 ひょっとしたら地域の住民のデータとか交番にあるんじゃないかな?

 頼りないアイデアだと自分でも思ったけど、僕は再び風船のようにさっきの派出所の前に舞い降りた。


 表から覗く薄暗い派出所の中は無人だった。

 奥の方からテレビの音声が聞こえてくるから、住居を兼ねた奥の間に引っ込んでるんだろう。


 住民台帳とか、それっぽいデータがないかスチールの本棚を眺めるが、見当たらなかった。

 最近はそういうのはパソコンだろうからな。

 パソコンを見ると、スリープ状態なのか、本体の小さなランプだけ点灯していて画面は真っ暗だった。



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