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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第九十六幕【vs英国紳士】

凄まじい風圧の中心で、イクリプスとダルクスによる目にも止まらない速さの戦闘が繰り広げられていた。


イクリプスが刺し向けるレイピア、そして魔法による追撃をダルクスは素手で受け流す。


「フン…正直舐めてたよ。中々やるみたいだな…四天王に選ばれるだけはあるって訳だ」


ダルクスは向けられたレイピアの切っ先を掴み言った。


「私の攻撃を素手で全て防ぎその余裕…貴方も只者ではないですね…。是非、そちらからも攻撃してきて貰えませんかね?」


イクリプスは身を翻して一旦ダルクスから離れる。


「お前、それだけの力…下手すりゃお前んトコの魔王より強くなってんじゃないのか?」


「フフフ…えぇ、そうですね…。ドーラ様より強い…そうかもしれない…」


「ほぉ?それはそれは…えらい自信だな。それはどうなんだ?魔王が聞いたら怒るんじゃないか?」


「何故です?四天王が魔王より強いのは当たり前の事です」


イクリプスはシルクハットをクイッと直し、落ち着いた口調で続ける。


「姫様を守る四天王が姫様より弱かったら守る意味が無いじゃないですか…」


「フン…」


ダルクスは後方に手をかざす。


一本の木がガサガサガサ…と大きく震えたかと思うと、バキバキ!っと太い枝が何本か折れる。


枝はダルクスの回りに集まり、目に見えない力で細く削れ、先を尖らせ何本もの槍となってプカプカと浮いている。


「んじゃ、こっからは手加減無しだ。お前の実力は充分分かったしな…!!」


ビュンビュン!!


槍の何本かを高速で飛ばしながら、ダルクスはイクリプスに向かっていく。


ガキン!カキン!


レイピアで飛んできた槍を受け流しながら、イクリプスもダルクスに向かっていく。


二人は衝突。槍とレイピアで弾き合いの大混戦を繰り広げた。合間にダルクスは右手に溜めた力を放出、衝撃波の様に放つがイクリプスは華麗に避け、負けじと魔法でも反撃をする。


二人の能力はほぼ互角…

お互い傷付ける事も傷付けられる事もなく平行線の攻防が続いた。


ガキン!!


槍とレイピアがカチカチと音を立てて抑え合う。


「俺の攻撃にこんなに耐えるヤツ…久し振りだよ」


「それはコチラのセリフですねぇ」


イクリプスは片手で持ったレイピアでダルクスの槍を受け止めながら、もう片方の手を燕尾服の中へ入れ…アンティーク調のピストル…シュヴァルツを取り出し容赦無く発砲した。


パンパンパン!!


「ゲッ!」


ダルクスは咄嗟に身を引き後方に大きく離れ弾丸を回避する。


「テメェ…そんなもんまで…!!」


「フフフ…ヤケに驚かれるんですねぇ?そんなにシュヴァルツはお嫌いですか…」


「それはちっと、紳士的じゃ無いんじゃないか?」


「貴方の力を認めた結果です。切り札だったんですが…コレを使わせるとは人間にしとくには勿体ない能力だ」


「悪い事は言わねぇから、お前んとこの姫様に言っとくんだな。シュヴァルツや兵器を運用してると…いずれ自分の身まで滅ぼす事になるってな。………それは人類が作り出した負の産物…。この世界にあってはならないんだ」


「何を言ってるんですか…これは本当に素晴らしい発明ですよ。シュヴァルツ…。確か発明した人間の名前から来ていたのでしたか?これに関しては人間に感謝しなくてはなりません。良くぞ発明してくれたと…。それに、貴方達人間とは違い我々魔族は聡明で身の程をわきまえています。こんな事で身を滅ぼすなど…」


「…言っても無駄みたいだな。忠告は聞いておくもんだ………ぞ!!!」


ダルクスが腕を上げる。

地面からボコボコッと埋まっていたであろう岩が浮き上がり、ダルクスが腕を下ろすと一斉にイクリプスに向かって放たれた!


イクリプスは地面を蹴り上げ上空に飛び避ける。そのまま右手に力を溜め…闇の力を大きく増幅させ巨大な玉となったものを投げる!


ドドドドドドドドドド!!!!!


「チッ…」


ダルクスが空中に魔法陣を描く。

すると、前方に大きなバリアが出来る。


バチバチバチ!!!!!


バリアに接触した闇の玉は電気を帯びて受け止められ、バチン!!と弾き飛ばされしまう。


「ことごとく止めてくれますねッ!!」


その様子を空中に浮遊しながら上から見るイクリプスは歯を食いしばっている。


弾き飛ばされた闇の玉は近くの湖に落ちる。


ドッパーーーーーン!!!!!


「うぉっ!!」


大きな津波となってダルクスは飲み込まれてしまう。


「……………フッ…」


イクリプスは軽く微笑み、そして…


「アッハッハッハッハッ!!!」


あえなく波に流されたダルクスを高らかに笑い飛ばす。


「アッハッハッハッハッ……………ハッ…!?」


ビュビュビュビュン!!!


無数の槍が波の中から飛んできて、イクリプスはあわや串刺しになりそうになるのを寸での所で避ける!


しかし、直後にダルクスも波の中から飛び出し、空中に浮遊するイクリプスの元まで飛んできて手に持った槍で猛攻を開始する。


ガキン!ガキン!ガキン!


再び、槍とレイピアでの弾き合い(空中戦)が始まった…!!




ーーーーー




「勇者様〜!?」


ユーリルが上空で呼びかけながらあっちこっちと飛んでいる。

暫くして、木の上にコアラのようにしがみついているずぶ濡れのリューセイを発見する。


「なにしてるんですか?」


「遊んでる様に見えるか…?」


「うーん………はい」


「あのなぁ…」


リューセイはスルスルと木を降りた。

服を絞りながら続ける。


「さっきの波を見ただろ?それにさらわれたんだよ…。それよりユーリル!良いトコに来た!お前の力が必要だ!」


「え?」


「アイツ…フラップジャックを倒すにはお前が前にホラ、光の大剣になってみせただろ?」


「えぇ〜!?またアレするんですかっ!?結構疲れるんですけど…」


「文句言うなって!フラップジャックには打撃が効かないんだ!ビームもアイツのすばしっこさだと避けられるのが関の山…だから…!!」


「分かりましたよっ!!やれば良いんでしょやれば…」


ユーリルは大きく溜め息をついて、決心したのか顔をキリッとさせて、リューセイの構えた光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)の中に入っていった。


使い切った光力がみるみると回復していく。


「よし…!!これなら…」


リューセイは木の陰から飛び出した。


「オイ!!フラップジャック!!俺はココだぞ!!ソロソロ決着をつけようじゃないかっ!!」


「おいジャック!!おったで!!」


リューセイを探していたフリルが呼びかける。

フラップジャックは別の木の上の枝に腰掛け、優雅に何処から出したのかティーカップでジャスミンティーを啜っていた。


「おいジャック!!何、呑気に茶シバいとんじゃ!はよ!アイツが逃げるで!」


「………うるさい………」


ボソッと言って、仕方無しとティーカップを木の上に置いてフラップジャックはトン…と木から降りてくる。


「フリルが…………戦ってくれれば良い……………」


「何ぬかしとんじゃ…ワシ、ただの日傘役割のメンダコやぞ…よぉ言うわ」


「……………ハァ……………」


フラップジャックは一溜め息吐くと、ザン!と地面を蹴ると…


「うおっ!?」


一瞬でリューセイの目の前に。

振り上げた頭のタコ足を振り下ろし…


バゴンッ!!!!!


「どひっ!!」


リューセイは飛び退く。

地面は大きく陥没してしまった。


「ちょちょちょ、呼んだけど!!待てよノールックで来んな!!準備ってもんがあるんだよっ!」


言いながらリューセイは光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)を構えた。


「ユーリル!頼む!!」


「はいはい…」


言って、光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)はビカッ!っと光を漏らす。


次第に光の粒子は光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)に纏わり付き…巨大な光の大剣の刃となった。


「オイオイ!ジャック!光っとる、光っとるでぇ!!」


フリルが叫ぶ。


「明るいのも……………眩しいのも……………嫌い……………」


フラップジャックはその場を動かず、タコ足だけを伸ばしリューセイに差し向ける。


「勇者……………様っ……………!!光の大剣は……………長くは続かな……………早急な……………決着を……………」


ユーリルの苦しそうな声が漏れる。


「分かってるって!!」


ズバン、ズババン!!


そう言ってリューセイは、迫りくるタコ足をことごとく切り捨てた。


「……………!!」


頭のタコ足を全て切り落とされてしまった。

そのせいでショートカットのような髪型になってしまったフラップジャック。


「だ、大丈夫かジャック!?」


「……………」


フリルが焦りながら言うもフラップジャックは表情を変えない。


「さぁ、まだやるか!?」


リューセイは挑発する。


「あったり前じゃろがいっ!!こんなんでジャックが音を上げるかいっ!!タコ足なんて直ぐに再生させ…」


「パンケーキ食べたい……………」


「はっ!?」


「疲れた……………パンケーキ食べたい……………」


フラップジャックは言って、リューセイに背を向けて歩き始めた。


「ジャック!?」


「馬車に戻る……………」


急に意気消沈したフラップジャックはそう言って馬車に向かう。


「ジャック!!お前相変わらずマイペースと言うか飽きっぽいと言うか…」


「リューセイ……………またね……………」


フラップジャックは軽く手を振って去っていった。


「なんだ………呆気なく終わっちゃった………あの娘、自由奔放だな………」


リューセイはポカンと立ち尽くすしかなかった。




続く…

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