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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第六十九幕【逃げて隠れて】

俺 (ダルクス)がハシゴを下まで降りていくと小さな空間があり、壁には大きな半開きになった扉があってそこから光が漏れていた。


その扉の隙間をそっと覗いてみると、血色の悪い奴らが数人部屋の中を彷徨っている。そして、そこは見覚えのある部屋だった。人探しで一通り部屋を周った時に一度訪れていた1Fの大きなサロンへと繋がっていたらしい。


(成る程。確かに俺の泊まった部屋の下は丁度このサロンがあったハズだ)


しかし前来たときは、サロンには廊下から入る以外の扉は無かったハズだが…この扉は…?


少し考えて納得した。

確か、サロンは壁に大量の絵画が飾られてたな。中には人よりも一回り大きい額縁の絵も…


多分その額縁が開閉出来る隠し扉になってたんだ。


俺は再びサロンを覗く。

すると、向かいの壁面にある別の額縁も半開きになっており、中から他のゾンビ共が正に沸き出てきていた。


(この屋敷はこうやって、至る所に秘密の通路が張り巡らされてるんだな…)


さて、どうしたもんか。

このゾンビ共…おそらくこの村の村人達に間違いねぇだろう…

そうなると、彼らをこういう風にした"親玉"が居るって事になるが…


元を絶たねぇと意味が無ぇよな…


「クソッ…!メンドクセー」


俺はポツリと呟いて頭を掻く。

どーしてこう、行く先々で問題にぶち当たるかな…。

そういうのは勇者の前で起これっての!!




〜〜〜〜〜




「うぅん…」


打ちっぱなしの床に寝転がり、なんとか眠って時間を潰そうとするも、冷たく固い床の上で寝れるハズもなく…


私 (セリザワ)は呻きながら何度も寝返りをうっていました。


ふとリューセイさんの方を見ました。


リューセイさんは壁に背を預けあぐらをかいてました。

眉間にシワを寄せて貧乏ゆすりをしながら汗をダラダラとかいていました。フーッフーッと怪しげな息遣いを発しながら…

私は思わずギョッとしました。


「ッだぁぁぁ!!!」


暫くすると、リューセイさんは叫んで鬼の様な形相で私に近付いて来たんです!!


「ひ、ヒィィィ!!?な、なんですかっ!?」


「ハァ…ハァ…ゴメン…これ以上は耐えられそうにない…」


私は部屋の隅に逃げます。


「しょ、正体を現しましたね…!!り、理性をちゃんと保って下さい!!」


「ハァ…ハァ…少し…少しだけで良いから…だ…抱かせてくれ…」


「もう隠す気もないんですねっ!?完全に言っちゃってるじゃないですかっ!!?」


「ちがっ…抱かせてってそういう意味じゃなく…あー!!もう良いっ!!とにかく今は黙って抱かれてくれぇ!!!」


そう言っていきなり飛び付いてきたリューセイさんに、思いっきりしがみつかれました。


「いやあぁぁぁぁぁ!!!!?」


ブンブンと身体を揺らしますが、しがみついたリューセイさんは剥がれる事はなく…私の体に顔をうずめてきます…


「ハァ…ハァ…もう少し…もう少し…」


「ちょっと!?仮にも私は天使ですよ!?天界の者なんですよ!?こんな事が許される訳が…だ、誰か助けてぇぇぇぇぇ!!!」


半泣きになりながら顔を上げると…私達が落ちてきた穴からジーッとトーヤマ先輩が覗いていました。


「と、トーヤマ先輩っ!!?」


「なーにやってんのさ。こんな時にイチャイチャして…」


「トーヤマ先輩!!違いますから!!早くここから引き上げてくださ〜い!!」


「まったくも〜ちょっと待ってて」


そう言ってトーヤマ先輩は何処かに行ってしまいました。


ーーーーー


「た…助かったぁ~…」


トーヤマ先輩が何処からか持ってきたロープのお陰で無事、私は穴から脱出が出来ました。リューセイさんもその後に続いて這い上ってきて…

その顔は私が付けた引っ掻き傷で痛々しい姿になっていました。


「いつつ…何もこんなになるまで引っ掻かなくても…」


「それで済んで良かったと思うべきですよっ!!密室でいきなり女性を襲うなんて…!!」


「いや、だからこれには深い訳が…」


「聞く耳を持たないっ!!」


私はプイッと頬を膨らませて顔を反らします。

その時、トーヤマ先輩は扉を少し開けた隙間から廊下を眺めながら口を開きました。


「後輩ちゃん達がイチャイチャしてる間に館はトンデモない事になってるよ」


「イチャイチャしてませんからっ!!」


「館中ゾンビで溢れ返ってるんだよ。早いトコこの館は脱出した方が良いだろうね」


「ゾンビっ!?」


リューセイさんが驚きの声を上げ、ドアに近付き隙間を覗きます。


「ゲッ…マジじゃん…」


私は何のことやら理解が追いつきませんでした。


「急に色んな部屋から湧き出して来たんだよ。私が居た食堂の暖炉が動いたかと思ったら、地下に続く階段があってそこから大量のゾンビが…」


「よ、良く無事にここまで来れましたね…?」


リューセイさんが不思議そうに言いました。


「あぁ、ウチ影が薄いから。ゾンビ達見向きもしないで難なくここまで来られたよ〜。ミスディレクション…ウチの隠された才能ってヤツが開花したのかね?」


トーヤマ先輩はそう言ってフフンとドヤ顔をしました。私はヤレヤレと首を振り言います。


「トーヤマ先輩いつもポケ〜ッとしてるから、ゾンビ仲間だと思われたんじゃないですか?」


「あぁ〜確かに、先輩さんの目って輝きのない感じが死んでるっぽいし、ワンチャンそうかもしれないッスね」


リューセイさんも続けてそう言いました。


「言うに事欠いて失礼だな君達は」


「…で、どうするんですか。このままココに居るって訳にも行かないでしょ?早く安全な場所に逃げましょうよ」


リューセイさんが書斎を物色しながら言います。私はそれを制止します。


「ちょっと、貴方が指図しないで下さいよ滞納者の分際でっ!!良いですか?貴方は身柄を拘束されている身なんですから…!!」


「つったって、じゃあアンタ達が先行して行くか?ここは元勇者の俺に任せてくれた方が良いと思うけど…」


リューセイさんはそう言いながら書斎にあった椅子を一つ持ち上げ、思いっきり床に叩き付けました。


バキャア!!


椅子はバラバラにへし折れます。

リューセイさんはそこから手頃に折れた棒を拾います。


「よし。これでひとまず武器は大丈夫。…で、どうする?」


リューセイさんは私達に目配せします。


「ぐぬぬ……………い、良いでしょう。今はお互いいがみ合ってる場合では無いですし…今回は一旦停戦協定って事で…」


「決まりだなっ!よし、じゃあ俺の後ろからちゃんとついて来いよ…」


そう言って、リューセイさんは棒を構えながら慎重に廊下に出ていきます。


「ちょ、ちょっと待って下さいっ!!何処に行くつもりなんですか!?」


「ゾンビは館の中から湧いて出てきたんだろ?だったら外の方が安全なハズだ。窓でも扉でも探してまずは外に出よう!」


私とトーヤマ先輩は顔を見合わせて、仕方なくリューセイさんの後を追いかけるのでした…




〜〜〜〜〜




「リーサ様ぁ〜!!正気に戻って下さ〜い!!」


ユーリルがそう叫ぶもその声は届かず、リーサは焦点の定まらない目でナイフを持って追いかけてくる。


廊下には他にもゾンビ達が居たが、それを押し退けながら進んでいく。


「なんなんですかこのゾンビ達はぁ!!ゾンビにしては機敏だし道具も使えるし扉も階段も開けて登ってくるし…!!」


「ゾンビなんですかね…?どっちかと言うと…"操られてる"とかそっちの方が…」


イズミルは走りながらも冷静に分析する。


「そうなんですか!?」


「なんとなくそんな気がしますっ!…どちらにせよ、この館にはこれらを引き起こした黒幕が居ると見て間違いないでしょうね!」


「そいつを倒せば、リーサ様も他のゾンビ達も元に戻りますかっ!?」


「多分…!ですが、私達に今出来る事は…」


「全力で逃げるだけ!!ですね!!」


そう言って二人が廊下を駆け抜けて行く。


そんな二人の様子を鏡に映して何処かの部屋から覗いている者…顔にツギハギのある女は不敵に微笑んだ。


「もっとだ…もっと私のゾンビ達の力を引き出してくれ宝箱配置人共よ…フフフ…これなら…"タニシ様"もお喜びになるに違いない…フフフ…」




続く…

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