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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第五十四幕【vs大章魚】

寂しい岩だけの無人島にポツンと取り残されたリューセイとユーリル。


そんなに広くはない島。宝箱を一つ島の真ん中に設置して終わりにしていた。


「前の冒険でもこういう島って一つだけ宝箱置かれてたりしてたよな」


そんな事を言いながら宝箱配置をサクッと終わらせたリューセイ達は、隣合って体操座りで月明かりをボーッと眺めて船を待ちぼうけていた。


リューセイはユーリルの方を向く。


「そう言えばずっと聞きたかったんだけど、なんで最初誰かを転生させようってなった時、俺を選んだんだ?」


「え?そうですね…え〜と…ひょんな事で勇者様の世界を管轄にねじ込まれた時、私、思いの外その世界を気に入っちゃって…【普遍世界】をもっと知る為に文献を読み漁ってました。そんな文献の中に描かれてたんです。【女神と行動する異世界の主人公】が…私は『これだ!』と思いましたね」


「文献…というかライトノベルな。お前が読んでたかのは…」


「直ぐに私は行動に移しました。異世界に転生させるに値する人材を探す為…」


「その判断材料はなんだったんだよ?」


「【黒髪】の【日本の男子高校生】で【童貞でコミュ症の癖にクールぶってる】人ですね」


「ちょっと待てや!!なんだその判断材料は!!」


「文献を統計した結果です!!それで晴れて勇者様を選んだ訳ですよ!!」


「誠に遺憾なんだが!!そんなん…俺意外にも居ただろ!!」


「いいえ、居ませんでした。勇者様は異世界転生するに値する才能をお持ちの数少ない一人だったんです!」


「全然嬉しくない才能!!」


「でも実際、勇者様は頑張ってくれたじゃないですか。ほら、私が与えたチート能力【キラチャーム】を上手く活用して危機を乗り越えて…」


「それもお前が用意したものだったのかよ!?」


「だって…文献には異世界転生した者はチート能力を持ってなければいけない、ハーレムでなければいけないって書いてましたもん」


「俺はラノベの上で踊らされたピエロなんですか!?別にそうでなければいけない事ないんだよ!!あれはただの創作物であって…!!」


「フフ…"上"に創られたこの世界も言わば"創作物"と言えるのかもしれませんね…」


「やかましいわッ!!」


そんなリューセイのツッコミを言い終わる前に、ユーリルは立ち上がり指を指す。


「あ、見て下さい!船が戻って来ましたよ!」


「ほんとだ…。解決したのかな?」


「ふぁ〜…。あの船が戻ってきたら私、一旦"上"に戻りますね。夜も遅いし…ひゃわ!!」


ユーリルがいきなり驚きの声を上げた。お尻を抑えながらリューセイを見据えると…


バチン!!


と、いきなり平手打ちを喰らった。


「って!!!何すんだよ!!!」


「今お尻触った〜!」


「さ、触ってねぇよ!!」


「女神のお尻を触るなんてっ!!」


「触ってねぇって!!」


そう言い合っていた時、リューセイは何かに後ろから突き飛ばされユーリルを押し倒す形に倒れてしまった。


「いやぁ!!このタイミングで勇者様がオオカミに!!!」


「ち、違う!!今何かに押されて…!!」


バッと後ろを振り返るも、何も居ない。


「………なんなんだ?」


「うぅ〜…上級女神になれない〜…」


ユーリルは顔を抑えて悶えている。


「なんだそれ?『私お嫁に行けない〜』の女神バージョンか?」


リューセイはサッと立ち上がって船に向かって手を降る。


「サッサと迎えに来てくれ〜!」


「ちょっと!女神を押し倒しておいてなんなんですか!?」


「そんな事言ってる場合か!!なんか凄く悪い予感がするんだ!!」


「そうやって話を反らして…!!」


ギャーギャーと言い争っているリューセイ達の横の海面から真っ黒な影がにゅ〜っと伸び、影を作る。

リューセイ達は言い合いをピタッと止め、お互い恐る恐るその影に目をやった。


そこにあったのはとてつもなくデカい…




〜〜〜〜〜




「なんだアレは!?」


ラグジュアリー号の船員の一人が、前方を指差し騒いでいる。

ダルクス、イズミル、リーサは船首の方に向かった。


リューセイを置いてきた無人島の辺りに巨大な巨影が月明かりの中、蠢いている。


正確に言うと、リューセイ達を置いてきた無人島自体がニョロニョロと蠢いていた。


「あ、あれは………タコか…!?」


ニョロニョロと八本の触手が蠢いている。それは巨大なタコだった。その一本の足に巻き付かれブンブン振り回されているのは…リューセイだ。


「あの島は巨大タコの頭だったんですね!!鉄塔を捻じ曲げたのもあの子で間違い無さそうです!」


リーサが怯えながら言う。


「あれは…【アッコロカムイ】ですね。この海域には居ないハズですけど…鉄塔を破壊して入り込んじゃったんですね…!!」


イズミルは考察した後、ダルクスの方に振り向く。


「リューセイさんを助けないと!!早く向かいましょう!!」


イズミルは言いながらダルクスの上着の裾を引っ張ってくる。


「ちょ、ちょっと待て!!…船員さん!!」


「は、はい!」


「全速力であの影から逃げてくれ」


「ズコー!!」


イズミルはなんとも古臭いズッコケをかました。


「ダルクスおじ様ってば!!」


地団駄を踏むイズミル。


「しょうがねぇだろ!!あんなんに近付いたら船ごと沈められておしまいだろうが!!リューセイには悪いがアイツはもう死んだも同然だな…ナムナム…」


ダルクスは手を合わせて拝む。

すると、イズミルはすかさずディアゴから【ハリセンの章】を開き、巨大なハリセンを召喚した。


シバーン!!!


ハリセンはダルクスの頭に思いっきり振り下ろされ、ダルクスはグシャッと床に突っ伏した。


「アホですか!?アレを放っといたら次来る勇者だって危険なんですよ!?」


「んじゃどうするってんだよ!!」


そんな言い合いをしているとアッコロカムイがブン!と触手を振ったかと思うと、何かがコチラに向かって吹っ飛んできた。


ソレはラグジュアリー号の帆にボフッ!と当たると甲板にドスッと落ちてきた。


「グェッ!!!」


潰れたカエルのような声を出して落ちてきたのはリューセイだった。


「リューセイさん!!」


リーサはリューセイに駆け付けて回復魔法をかける。


「た…た…タコ…!!でっかいタコ…!!」


リューセイはうわ言のように呟いている。


「強運なヤツだなぁ」


ダルクスは思わずリューセイのタフさに感心した。


「感心してる場合ですか!!アッコロカムイをどうするか考えないと!!」


「どうするって、あんなデカいと手も足も出ないだろ…ましてや船の上だぞ…船ごと叩き潰されちまうよ…」


「そうですね…船で近付けないとなると…ディアゴの術も届かないし…」


「リューセイさん、ユーリルさんは?」


リーサがリューセイに聞く。


「アイツはいつも通りソッコーで姿を消したよ!おかげで光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)で反撃も出来なかった。夜だとこの武器使えないみたいで…!!」


「なら、尚更あのタコをどうにか出来る方法はない訳だ。逃げるぞ!」


そう言ってダルクスは船員に指示を出そうとしたその時。


「あ!見て下さい!アレ!!」


今度イズミルが指した方角から、空に光を射しながらコチラに向かってくる無数の影…


「今度はなんだ!?」


これ以上ややこしくするなとダルクスは頭を抱える。


コチラに向かってくる無数の影…

それは、ラグジュアリー号の大きさを遥かに越える大きな黒塗りの帆船の集団だった。


「海軍です!!」


イズミルが言った。


「そうか、そう言えばこの近くには三強の一つ、海軍の強さに定評のある軍事国家"バルチェノーツ"があったんだった」


ダルクスも思い出した。


【バルチェノーツ海軍】の船団から光を照らされるラグジュアリー号。


『そこの金ピカの下品な船!そこをどけろ!ここはバルチェノーツ海軍が引き継ぐ!この海域から今すぐ離脱しろ!』


海軍からそう声が響く。


「バルチェノーツ海軍が居るなら安心ですね!お言葉に甘えて、後は彼らに任せましょう!」


イズミルが言った。


ラグジュアリー号はそれに従って航路をサンシタ入江港に向けて引き返し始めたのだった。




〜〜〜〜〜




バルチェノーツ海軍の船団の一つ、その先頭を行く一際大きな船。

その船の船首から望遠鏡でアッコロカムイを眺める一人の男、名は【バルチェノーツ海軍大佐・ペンドルトン】。


「大佐…なんですか?あの船は…」


そんなペンドルトンに近付き話し掛けるのは【バルチェノーツ海軍中佐・ベートン】。


「宝箱配置人だろ。何だってあんな下品な船に乗ってるのかは知らんが、取り敢えずここは奴らの出る幕ではない」


「どうします?」


「勿論、あのタコに向かって集中砲火だ。デカいタコ焼きにしてやれ」


「ハッ!」


ベートンは直ぐ様、乗組員に指示を仰ぎ始める。


「バルチェノーツ近海の海域に来たこと後悔させてやる」


フッと笑みを浮かべるペンドルトン。


しばらくして、バルチェノーツ海軍の船団からの激しい砲弾の雨と共にアッコロカムイとの間で激しい交戦が始まるのだった。




続く…

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