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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第五十三幕【北西の鉄塔】

すっかり夜も更け、月明かりに照らされる大海原を【北西の鉄塔】に向けて進む【ラグジュアリー号】。


「こんな事…おっと…してる暇はねぇんだよっと…早くしねぇと勇者一行に追い付かれちまう…おっ!!5000点!!!どうだガキンちょ、俺が本気出せばなぁ…」


そう言って甲板に置かれた樽に腰掛けたダルクスはスマホの例の芋虫ゲーの画面を近くに立っていたイズミルに見せつける。


「何ですかそんな点で!私の最高得点は8000点ですぅ〜!!」


イズミルはヤレヤレと首を振っている。


「何ぃ〜!?チッ…そんなの直ぐに追い抜いてみせるわ!!」


「ちょっと!!次は私ですよ!!」


「うるせぇ!!お前充分やっただろ!!しばらく貸せ!!お子ちゃまは寝る時間だ!!」


「うわぁ〜大人げない!!子供から取り上げて!!うわぁ〜ん!!」


イズミルが両手で顔を覆って泣き出した。


「ハハッ、ガキンちょ。テメェそれで泣くタマじゃねぇだろうが。嘘泣きしやがって」


「………チッ…ダメか…」


そんなやり取りをしながらスマホを取り合っている二人の前に船員の1人がやってくる。


「あの〜…すみません」


スマホをお互い引っ張り合いながら船員に目を向けるダルクスとイズミル。


「なんだ?」


「いえ、そろそろ北西の鉄塔に着くんですがね…少し気になる事が」


「あ?」


「航路の先に島が見えるんですが…地図にはそんな島描かれてないんですよね」


「地図にない島?」


そう言ってイズミルは直ぐ船首の方に走っていった。ダルクスもその後に続いて歩いていく。


船首に来ると、確かに前方に月明かりで薄っすらと黒い島の影が見える。


「最近出来た島だろ。海底火山の影響で島が新しく出来る事は珍しい事じゃない」


ダルクスはそう言ってタバコに火を付けた。


「ですね。勇者の寄り道の為に宝箱配置しておきましょうか!」


「そーだな…船乗りさん、いっちょそこの島に着けてくれ」


「はい!」


そうしてダルクスの指示の下、ラグジュアリー号はその島に近付き横に着いた。余り近付き過ぎると座礁してしまうので島から少し離れた所で停まる。


船内に居たリューセイ、ユーリル、リーサが出て来た。


「え?もう着いたんですか?」


「新しい島を発見してな。リューセイ、お前あそこまで行って島の調査と宝箱配置してきてくれ」


「え"っ"!!なんで俺が!!」


「その間に俺達は北西の鉄塔見てくっから。後で迎えに来るよ」


そう言ってダルさんは甲板に設置された陸に向かう為の小舟に荷車の宝箱やアイテムを最小限詰め込み、リューセイに乗るよう促す。


「私もお供しますよ?」


リーサが手を挙げる。リーサの僧侶帽には伝書鳩が止まっているが本人は気付いていなようだった。

そんなリーサに向けてダルクスが言った。


「リーサさんは鉄塔に来てもらいます。リーサさんの力が必要になるかもしれないので」


「はぁ」


「俺1人かよ!!」


リューセイは不満そうな顔をする。


「大丈夫ですよ!私が付いてます!」


そう言ってユーリルがポン!と胸を叩く。


「………ハァ…」


「何ですか!!これみよがしに溜息なんか付いて!!失礼な!!」


ユーリルはプンプンと頬を膨らませた。


「分かりましたよ行ってきます。忘れず迎えに来て下さいね?」


そう言ってリューセイは渋々と小舟に乗り込んだ。


「んじゃ、下ろすぞ」


そうして小舟は海に下ろされ、リューセイはオールで島に向けて漕ぎ出した。ユーリルの発光を頼りに島に近付いて発着する。


それを見届けたラグジュアリー号は鉄塔に向けて進み始めた。


「お、見える見える。アレが例の鉄塔かな?」


島に上陸したリューセイはラグジュアリー号が進む先に目をやる。

確かに小さく海上に頭を出している塔の影が見える。


「勇者様?島の調査をしろって言われても…この島なんにもないですね」


ユーリルがそう言うので改めて島を見渡す。


木々や草花が一切生えてない、小さな岩だけのゴツゴツした島だ。


「調査のしようがないな。適当に宝箱置いてダルさん達を待とう」




〜〜〜〜〜




ダルクス達は北西の鉄塔に辿り付いた。

そこには、予想だにしない光景があった。


海上からそびえ立っているハズの鉄塔が半分凄まじい力を加えられたように捻じ折れている。


「な、なんだこりゃ!?」


ダルクスは思わず大きな声を出した。


「何がこのような事を…」


リーサも驚いた様子で言う。


「チッ…どうせ機構の魔力が切れただけだと思ってたが…それならリーサさんに魔力を付与して貰って解決だったんだがな…そう簡単な話しじゃねぇみたいだ。俺達にはどうしようもない。【宝箱配置人・修繕担当】でも呼ばないと…伝書鳩で本部に連絡しよう」


ダルクスがそう言って手紙を書く為の封筒を探そうと甲板に停めてある荷車に向かおうとしたところ…イズミルが何かを思い立ったようにダルクスを止めてきた。


「待って下さいダルクスおじ様!船乗りさん、そこの鉄塔ギリギリまで船を付けれますか?」


話を振られた船員は少し驚いた後に返事をする。


「は、はい。出来る限り近付けてみます」


そう言って持ち場に戻っていった。


「どうするつもりだよガキンちょ?俺達に出来る事なんて何も…」


「イズミルちゃんを舐めないで下さい!私に考えがあります!」


船は少しづつ鉄塔のギリギリまで近付き、身を乗り出して手を伸ばせばギリギリ手が届くか届かないかの所まで来た。

そしてイズミルは船の手すりに登り出した。


「あ、危ないですよイズミルちゃん!!」


リーサが思わず止めに入るが、イズミルはお構い無しだ。


「オッケーです!それではダルクスおじ様!リーサ様!私の身体をガッチリと掴んで支えて下さい!私が海に落ちないように!」


ダルクスとリーサは顔を見合わせ、言われた通りイズミルの身体をその場に固定するように支える。


「うひゃー!!ダルクスおじ様どこ触ってるんですか!変態!!」


「ハッ!?お前が掴めっつったんだろが!!」


「ニシシ!冗談です冗談」


「このガキ…!!」


「あーあー、そんな事より行きますよ!ディアゴ!【からくりハンドの章】!!」


イズミルは背中を鉄塔の方に向ける。ディアゴがバララと捲れ止まったページからからくり仕掛けの腕がニョーンと飛び出した。


からくりハンドは鉄塔の折れ曲がった部分を掴んだ。


「んじゃ、行きますよ〜…!!」


イズミルは足に力を入れ踏ん張り、身体を力強く前に倒した。そんなイズミルが手すりから落ちない様に必死に抑えるダルクスとリーサ。


「どっ根性ーーーーー!!!!!」


グイッ…メキメキ…


イズミルの掛け声と共に鉄塔を掴んだからくりハンドによって捻じ曲がった部分が引っ張られ、徐々に直立に戻っていく。


「み、皆さん!!私を思いっきり引っ張って下さい!!」


言われるがまま、ダルクスとリーサはイズミルをその場から思いっきり引っ張る。


「こ、こ、根性ぉぉぉぉぉ!!!!!」


メキメキミシッ…ピシ!


引っ張られた鉄塔は本来の姿に戻った。

からくりハンドがいきなり解除され、ダルクス達はそのまま勢いよくドタタッ!と甲板に倒れ込んだ。


「ゼェ…ゼェ…ど、どうですか!!イズミルちゃんの考えは…!!ハァ…ハァ…」


「思いのほか脳筋な考えで驚いたよ…」


ダルクスは腰を擦りながら答えた。


「コレで鉄塔に聖なる魔力を付与すれば機能は回復するハズですよね!」


イズミルはフフン!と腰に手を当てて満足そうにドヤっている。


「いけすかねぇガキ…」


ダルクスがボソッと呟くと、イズミルはニコッとこっちに振り返る。


「なんか言いました?」


「なんにも」


ダルクスは目を逸らした。

その目線の先に倒れたリーサは何やら考え込んでいる。


「どうしたんですかリーサさん?」


「いえ、それにしても…あの鉄塔は何故曲がってたのかと思って…。並大抵の力じゃあんな曲がり方しないと思うんですけど…」


「リーサさん…それは考えないようにしましょう。口に出しちゃうとフラグが立っちゃうので」


これ以上、面倒事に巻き込まれるのはゴメンだ。

考えないように…考えないように…と、ダルクスは手をヒラヒラさせながら言う。


その後、鉄塔を復活させたダルクス達はリューセイを迎えに船を発進させたのだった。




続く…

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