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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第五幕【ただの書記担当です!】

私の名前は【イズミル】です。かの伝説の宝箱配置人・書記担当シムラの孫娘です。

まだ9歳で見た目は小さい子供ですが、知識量はおじいちゃん譲りなのです。そんなおじいちゃんの意思を引き継ぎ、今回の宝箱配置人・書記担当を任されました。


「おじいちゃん、それじゃ…行ってきます!」


「待ちなさいイズミル」


出発の直前、おじいちゃんに引き留められました。


「良いかイズミル。宝箱配置人・書記担当は配置担当を影から支える存在。決して目立つ仕事ではないが、とても重要なポストなのじゃ。それを忘れるなよ。一緒になる仲間達をお前の頭脳とその本でサポートしてやるのじゃ」


「分かってますおじいちゃん!」


「うむ。気を付けて行ってくるのじゃぞ…あぁ、後な…配置担当のダルクスじゃがの、アイツはちと子供嫌いが過ぎるもんでの。お前に強く当たるかもしれんが…」


「平気です!ね、ディアゴ!」


ディアゴは私が背負っているこの本の名前です。ドラゴンの鱗で造られた表紙にはドラゴンの一つ目も埋め込まれており、瞬きをしていることから分かる通り生きた書物なんです。おじいちゃんの先、先、先祖から受け継がれてきた呪術書です。


「ディアゴも私との冒険を楽しみにしてるみたいです!どんな困難もこの子となら乗り越えられる!それに、なんたって私はおじいちゃんの孫娘、ですからね!それじゃ、行ってきます!」




〜〜〜〜〜




家を出てしばらく経ちました。果てなく続く平原には一本の街道だけが続き、人工物は建てられた看板や橋くらいなもので…その街道に沿って、私は歩き続けていました。宝箱配置人・配置担当のダルクスおじ様がお待ちのエンエンラ王国まではまだまだ先は長そうです。


「子供嫌いって言ってたけど…大丈夫!ディアゴで少し驚かせば何も言わなくなるよね!ニシシ!」


そんな事を言っていると、目の前に2匹の魔物が立ち塞がりました。


「キヒャヒャ コドモ ウマソウ クウ!」


【ゴブリン】

広く分布し群れで行動する。どこにでも居る低級魔物。人間の子供が好物。彼らを纏めるボスゴブリンも居る。




子供が一人で歩いてれば狙わない手はない…ですか!


低級魔物…ゴブリン2匹…弱点は…炎…!


頭の中でそう念じ、ゴブリン達に背を向けます。

直後、ディアゴはバラララ!とめくれ、【27ページ・獄炎の章】。獄炎が噴き出します!


ゴオオオオオォォォォォ!!!


「「ギャアアアアア!!!」」


瞬時に黒焦げになったゴブリン達。私はジリジリと後ろ向きで近付いていきます。


「オ…オマエ…タダノ コドモジャ…」


「ただの子供ではないですよ!でも、ただの宝箱配置人・書記担当です!」


ゴオオオオオォォォォォ!!!


「「ギャアアアアア!!!」」


「タダノ ショキ タントウォォォ!?ウソダ ソンナノ!!」


「ディアゴ!もういっちょ!」


「ヒョ!? モ、モウ ワカッタッテ コウサ…」


ゴオオオオオ、ゴオォ、ゴォォォォォ!!ゴゴオオオォォォ!!


プスプス…


【ゴブリン2匹を倒した!】


パラパラパッパッパー♪


【ディアゴはLv82に上がった!】


「お、やったねディアゴ!レベルが上がったみたいだね!じゃ、引き続きエンエンラを目指そう!」


そうして私は再び歩き始めました。


ーーーーー


一方、その近くの木陰に隠れていた3匹目のゴブリンはその光景を見て田舎に帰る事を決意した。後に彼はその光景が目に焼き付き、数週間は夜も眠れなかったという…




〜〜〜〜〜





何度かゴブリンとの戦闘がありディアゴのおかげで難なく切り抜けながら進んでいる内に日は沈み、辺りはとっくに暗くなっていました。【3ページ・光輪の章】で私の頭の上に光の輪を出現させ、周りを照らしながら進みます。


「そろそろ野宿する場所を決めよう」


そう言って野宿するのに丁度良い場所を探していると…真っ暗な草原の向こうにボウッと赤く光る場所が…


「あ!人の居る所かな?あそこに行けば野宿しなくて済みそうだねディアゴ!」


私は駆け足でその光の方に向かいました。近付いていくと、その光がただ事ではない事が分かりました。


「この熱気と焦げた臭いは…まさか!」


光の正体は炎。村が一つ燃えていたのです。そしてそこの村人達は必死に消火活動をする者、傷つき倒れて動かない者…と様々でした。


「大変な事が起きたみたい…」


その光景を見て立ち尽くしていると村人の男の人が話しかけてきました。


「子供がなんでこんな所に!?おいお嬢ちゃん!そんな所に居たら危ないぞ!早く隠れるんだ!」


「一体何があったんですか?私は旅の者です。今ここに来た所なんですが…」


「旅の者?お嬢ちゃん一人でかい?…いや、そんな事より。子供がこの村にいちゃいけない。早くここを出来るだけ離れるか、どこかに隠れるんだ」


「子供だと…なにかマズいんですか?」


「…近くの山の麓にゴブリン共の巣があってな…そこからいきなりゴブリンの大群が押し寄せてきて"子供を出せ"って暴れまわったんだ。子供達は秘密の地下室で匿っていてまだバレてないが…次に来るまでに子供を用意しないと…」


ゴブリン…人間の子供が好物の魔物。やたらゴブリンが多かったのは近くに巣があったからなのか…それにしても…これはやり過ぎです。魔王が現れてから、低級の魔物もやりたい放題になってしまっています。


「ほっとけないよね…ホントは勇者が解決すべき案件…ただの書記担当が介入しちゃダメなんだけど…このままだと勇者が訪れる前に村が崩壊する可能性が…ディアゴ、少し寄り道になるけど良いよね!」


「ダメだお嬢ちゃん!!君のような子に出来る事なんてなにも…」


男の人が言い終わる前に、私は【26ページ・豪水の章】を呼び出しました。ディアゴから勢いよく渦を描くように水が噴出します。

燃えていた一軒の家は直ぐに鎮火しました。


「す…凄い…!お嬢ちゃん…一体何者…?」


「さぁ、教えて下さい。ゴブリンの巣への詳しい道順を!」




〜〜〜〜〜




ここは【ゴブリンの洞窟】。


広いドーム場の空間でゴブリン達が集まる中、そのゴブリン達を纏めるボスゴブリンは玉座の上でヘラヘラと不気味に笑っていました。


「ガハハ! アシタ フタタビ アノムラニ オモムキ コドモガ イナケレバ アノムラハ カイメツ サセテヤル」


そのボスの言葉に同調し、ケラケラと笑うしたっぱゴブリン達。


「ひゃ〜、随分大勢のゴブリンが居るね」


そんな私の声を聞いてボスが気付きます。


「ダレダ!!」


「子供です!あなたたちが求めてたね!だからこっちから来てあげました!」


「ホウ…オマエ コドモノクセニ オレタチガ コワクナイノカ」


「全く!むしろ、あなた達が怖い思いをするでしょうね!」


ニヤリと微笑む私に周りのしたっぱゴブリンが四方八方から一斉に飛びかかってきました!


「飛翔!」


バサッ!!


ディアゴの30ページ【飛翔の章】からは半透明な白い翼が生え、バサリ!と一羽ばたきで私を宙に舞い上げます!飛びかかったゴブリン達はいきなり私が目の前からいなくなりそのまま折り重なって一つの山になりました。


「火焔旋風!」


滞空中にすかさずその山に向かい56ページ【火焔旋風の章】を呼び出します。ディアゴから火焔の竜巻が飛び出し、洞窟内をかきまわします!


そのまま地上に落下する私は地面にぶつかる直前に31ページ【スプリングの章】で地面にバネを設置してポヨーンと飛び跳ね…


ボスゴブリンの目の前に着地!スチャッ!と決めポーズを取ります。


後方にはあれだけ居たゴブリン達が全員倒れて動かなくなっています。後はこの、ボスゴブリンだけです。


「ナンナンダ… ナンナンダ オマエハ…!!」


「ただ悪い事をする魔物は許せない子供です!」


クルッとボスゴブリンに背中を向け…


「ヤ…ヤメテ…ユルシテ…!!」


「ディアゴ!103ページ!!」


「ナンデモ アリカァァァァァ!!!」


そして、暗転。




〜〜〜〜〜




先程の村に帰ってきました。その頃には朝日が登りだし、辺りは明るくなりつつありました。私を見つけた村長が驚きなが近付いてきます。


「いやはや、驚いた。こんな小さい子が一人でゴブリンの巣に向かって戻ってくるとは」


「ニシシ!約束通り、この村はもう安全です!ほら、この通り!」


そう言って彼らの前にディアゴの103ページ【亀甲呪縛の章】で縛り上げられたボスゴブリンを差し出します。


「もう彼らは悪さをしないはずです。コテンパンにしておきましたので!子供達を外に出して…遊ばせて…あげて…下…さい…」


そう言うと私は意識を失うようにバタッと倒れ眠ってしまいました。思えばほぼ一日中起きていた訳で、体力が限界だったみたいです。


私は村人に抱えられ、村長の家のベッドに寝かされました。


「村長、この子は一体…」


「ううむ…あどけない少女だが…一人でゴブリンの巣を壊滅させる力を持つとは…」


「ボスゴブリンから話を聞く限り…彼女は自覚はないでしょうが…その…」


「無垢であるがゆえにサディスティック…"無垢なドS"だ」


「無垢なドS…お…恐ろしい…」


ーーーーー


私は昼前辺りまでグッスリ眠ってしまっていました。途中で目を覚まし飛び起きました。いけない!私はここでのんびりしている訳には行かないのです!早くダルクスおじさまと合流して勇者が魔王を倒せるように世界を周らないといけないのです。


「お?目が覚めたのかいお嬢ちゃん」


「あ、村長さん。寝かせてくれてありがとうございます。急で申し訳ないですが、こう見えても急ぎの身ですので…これにて失礼します!」


「なんとも急じゃな!村を助けて貰ってワシたちはまだ何もおもてなしが出来て…」


「そんな、お構いなく!お世話になりました!」


私は足早に村長の家を後にします。


村を出ようとすると、村人達が出迎えてくれました。


「お嬢ちゃん、ありがとう!」


「あなたのおかげで助かったわ!」


「またいつでも来てくれよ!」


皆さんの感謝の言葉がくすぐったくてかなり照れくさかったですが…心はかなり満たされました。さて、そろそろ行きますか。


「ディアゴ、行こう!」


「待ってくれ!」


最後に村長に引き留められました。


「最後に一つだけ、お嬢ちゃんは一体何者なんじゃ?ただの娘さんではないじゃろ?」


「ただの娘ではないです。でも、ただの宝箱配置人・書記担当イズミルです!それでは!」


そう言って、村を後にしたのでした。






続く…

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