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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第四十二幕【接触!魔王軍!】

【バクベドーア大陸・オボロックル地方】

【アカシータ貿易港へと続く街道沿い】


貿易港が近い為か人々がちらほらと通る街道を少し外れた茂みの中で、ドッドッドッと音を響かせながら停まっている鉄の塊。


【センチャリオット】だ。


魔界で製造された最新鋭の兵器は"ネザーゲート"を通って人間界にやって来ていた。


それを操る【チャリオット隊・アプリコットチーム】の一人。

センチャリオットの上部のハッチから上半身だけを出して望遠鏡で街道を監視する紫色の人型スライム【ゲルトニー】。


「今のところ、勇者らしい人物は通ってないっペ」


ゲルトニーはスパナを持ってセンチャリオットをメンテナンスしている頭が青い炎で包まれたスケルトンの【スパイロズ】に話しかける。


「姫様も無茶言いなさるよ。【取り敢えず勇者っぽいのが居たら倒して来い】って…。人相が分からなきゃ見つけようにも見つけられないだろ…」


スパイロズはネジを締めながらボヤいている。


「勇者が勇者っぽい姿してるとも限らないっペ…もしかしたら、もう見逃してる可能性だってあるっぺ…」


「そんときゃ他の場所で張ってる仲間が見つけてくれるのを願うしかねぇな」


「もう手当たり次第攻撃して良いんじゃないっぺ?」


「無益な殺しは無しだ。姫様にそう言われただろ?姫様は何も人間達を根絶やしにするのが真意じゃない。彼らを統治下におくつもりなんだ。勇者以外はな…」


「姫様は何処っぺ?」


「まだ魔界に残られてるが、その後は人間界で"3強"と言われてる軍事国家【デルフィンガル】【ソウルベルガ】【バルチェノーツ】を攻め込まれるらしい」


「…いよいよ人間に宣戦布告っぺか…!」


「あぁ…」


「……………!?ちょっと待つっぺ…!アレはなんだっぺ!」


急にゲルトニーが空を指差して言う。

スパイロズもその方向を見る。


「なんだアレ…"気球"…?」



〜〜〜〜〜




上空からフワフワと、大きく膨れた【風船ガエル】という魔物を気球の代わりにした宝箱配置人の荷車が降りてくる。

その荷車に必死にしがみつく宝箱配置人一行。


花の街モクレーンでの一件の後、モクレーン神殿にて黄金のハープを納めた宝箱配置人一行は再びアカシータ貿易港入口まで戻って来たのだった。


「到着〜♪」


気球と化した荷車はトスッと地面に着地する。

イズミルは乗っていた荷車からピョンと飛び降りてスチャ!っとポーズを決める。


「ニシシ!どうでした?【イズミル遊覧飛行船】の乗り心地は!」


しかしイズミル以外は戦々恐々といった感じで、荷車からズリ落ちた。


「どアホ!!最悪な乗り心地だ!!」


ダルクスはブルブルと震えながら叫ぶ。


「生きてる…俺…生きてる…」


リューセイもガチガチと歯を鳴らして腰を抜かしていた。


「えぇ〜!?この前の反省を活かして、今回は気球でゆったりと空の旅にしたのに!!」


「だーから、問題はそこじゃねぇの!!俺達はただ荷車にしがみついてるだけなの!!己の握力に命を左右されてたの!!」


ダルクスはカタカタと震える指をイズミルに指しながら怒鳴る。


「ゆったりと空の旅が長くなった分余計怖かったわ!!」


リューセイも半泣きでイズミルに叫ぶ。


「またまた大不評!?」


またもやイズミルの誤算だったようだ。


「リーサ…リーサは大丈夫か…?」


また棺桶になってるんじゃないかと、リューセイは荷車の後ろに周ってリーサを確認する。


「良かった。今回は棺桶になっていない…が…」


「こ"わ"か"っ"た"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"〜〜〜う"わ"〜ん"!!」


トラウマは確定したようだ。


「チッ…とにかく次はもっと安全な乗り物で…」


ダルクスが言い終わる前にガラガラガラと何かの駆動音が近付いてくる。


「何だ!?」


リューセイは音のした方を向く。

そこには大きな鉄の塊…それには見覚えがあった。


「…戦車!?なんでファンタジー世界にあんなもんが!?」


戦車と言っても、赤い触手が絡まって一部には大きな目玉が付いていて、まるで生き物のようだ。


「あれは…乗り物…?」


リーサも口を抑えて驚いている。

イズミルはピョンピョンと跳ねて何故かテンションが上がっている。


「凄いですね!あれはなんですか!?私も初めて見ました!」


「あれは…この世界にあって良いものなのか…?ほらシュヴァルツはダメだったろ?戦車って言えば砲弾を撃てる乗り物で…」


「そうですね…良く考えたモノです。この世界には"大砲"という武器は認められてて…船に積まれたりはしてますから…それが陸上を動いていると考えると…問題はないのかな…?」


「マジか!?ファンタジーの世界をブチ壊しそうなもんだが…」


「いえ、要検証ですね…色々グレーな気がします…。この世界の秩序を乱すようならほっとく訳には行きませんね…!」


そんな事を言っていると、その上部のハッチがパカッと開き、中からプルプルの人型のスライムのような魔物が上半身だけを出してきた…。メガホンのようなものを構えてリューセイ達に話し掛けてくる。


「あーあー!そこの旅人!お前らは何者だっぺ!」


「俺達は宝箱配置人…ってか、そっちが先に名乗れよ!!なんなんだお前らは?」


「オラは【魔王軍・チャリオット隊・アプリコットチーム一番機・ゲルトニー】だっぺ!!もう一人は操縦席の【スパイロズ】!」


ダルクスがそれを聞くと、ピクリと身体を震わせ呟いた。


「魔王…軍…?」


持っていたメガホンには集声の機能もあるのか、その呟きも聞こえたらしい。ゲルトニーは口を開く。


「そうっぺ!136代目の魔王に襲名された【センチュレイドーラ】様率いる天下無敵の軍隊だっぺ!!」


「136代目…」


ダルクスは何やら考え込んでいる。


「魔王軍…【センチュレイドーラ】…それが俺達の敵…人類の敵か…!!」


リューセイは思わず声を上げた。

なんとなく実感が無かった魔王という存在がリューセイ達の側まで近付いている事に驚いたのだ。


「単刀直入に聞くっぺ!オラ達は人を探してるっぺ…」


そうゲルトニーが言いかけた矢先、光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)から間が悪い事にユーリルが声をかけてくる。


「勇者様…?一体何があったんですか?」


そんなユーリルの発言を聞き逃す訳が無かった。


「勇者…!!今、勇者って言ったっぺか!!やっぱりだっぺ!!スパイロズ!!」


「あぁ。聞こえた。間違いねぇ。ヤツが"勇者"だ!!」


「いや、ち、違う!!俺は勇者じゃ…!!」


しかし、そんな声は彼らに届くはずもなく。

ゲルトニーが戦車内から何か"筒"を取り出して火を付ける。


ヒュ〜…パンパン!


白煙が空に破裂した。


「ぺっぺっぺっ…コレで近くの【アプリコットチーム】が集まってくるっぺ!」


「おいおい、なんか勘違いで大変な事になってるぞ!?どうするんですか!?」


リューセイはダルクスに視線を送る。


「チッ…面倒くせぇ…」


ダルクスはそう呟いて、戦車に向かって大きく声を上げる。


「おい!!お前ら!!確かにここに居るのが勇者で間違いねぇ!!まとめてかかってこい!!!」


「ダルさん!!?」


驚くリューセイに、ダルクスは耳打ちをしてきた。


(いいから。ここはお前が勇者って事にしとけ。奴らが本当の勇者一行に出会ったら面倒くせぇ事になる)


(だ、だけど…!)


言い掛けるリューセイを無視して、ダルクスは魔王軍の方に向き直り指を差し…


「行くぞ勇者!あの魔王軍を壊滅させてやろう!!」


ダルクスはお構い無しにそう叫び、魔王軍を煽った。


「だぁ〜!もう、分かったよ!やれば良いんでしょ!やれば!!」


リューセイは光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)を構えた。


「おっ?ヤル気だっぺ!スパイロズ!操縦は任せたっぺ!オラは主砲を!」


「おう!!」


ゲルトニーは戦車の中に入った。主砲がコチラに向く。


「みんな!気を付けろ!!あっちは鉄の塊の兵器だ!こっちの攻撃が弾かれる可能性があるぞ!」


リューセイがそう叫ぶが、イズミルは…


「それよりも…あの兵器はともかく、魔物達が肩にかけていたシュヴァルツの方が問題です!」


「そっち!?そっちなのか!?戦車はほんとに大丈夫なのか!?」


なにやら色々腑に落ちないリューセイだったが…

魔王軍vs宝箱配置人の戦いの火蓋が切って落とされたのだった…!!




続く…

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