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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第ニ十八幕【鳥肌の立つ一日】


「待って下さいよー!」


早朝。

リューセイはアカシータ貿易港の外で待っていたダルクス、イズミル、リーサに追い付く。


「おはようございます!リューセイさん」


「おはよリーサ。生き返ってたんだな!限界突破はしなかったのか?」


「限界突破?なんですかソレ?」


「したよ!したした!限界突破」


そう言いながら荷車の影からボロボロのダルクスが出て来て察するリューセイ。


「てか、おいおい、なんだそのでっかいヤツ」


ダルクスがリューセイが肩に背負っている超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)を指差す。


「グフマン博士から頂いた新しい武器です。ちなみに、中にユーリルが入ってます」


「入ってま〜す」


中からユーリルの声が響く。

昨日からずっと中に居るが、特に不満は無いようだ。


(『中は快適』とか言ってたけど…呑気なヤツだ)


「なんのこっちゃ。兎に角、お前が眠ってた3日間の分、急いで周るぞ。早くしなきゃほんとに勇者達に追い付かれちまうからな」


そう言ってダルクスは荷車を引き始める。


「ちょちょちょ…待って下さい!」


リューセイは思わず引き留める。


「あ?」


「いや、船は?次は船で大海原に漕ぎ出すんじゃ…」


「誰がそんな事言ったよ。俺はただ、『勇者の船を工面する為』って、そう言ったんだ」


「だから…その船は工面出来たんだし、今度はこの大陸を出て新天地に向かうんじゃ…」


「バカ。船旅するにはまだまだ早いだろうが。海に出るにはせいぜい20Lvは欲しいところだ。ここまでの勇者はせいぜいLv12くらいだろ?」


ダルクスが言い終わると、今度はイズミルが口を開く。


「勇者様達は船を手に入れる為にアカシータ貿易港を訪れます。しかし、ガフマン様から『船が欲しければ私の依頼を聞いてくれ』と頼まれます。その依頼って言うのは『黄金のハープ』を手に入れて来る事…」


そう言ってイズミルはサッと何処から出したのか黄金のハープを取り出し、ポロロン♪と弾いてみせる。


「当たり前の様に持ってるんだな…。つまり、次はその"黄金のハープ"をどこかに配置する訳ね…。で、何処に?」


リューセイが問い掛けると、イズミルはビシッと方角を指差す。


「エンエンラ王国の南です!!」


バーン!


…と聞こえてきそうな決めポーズ。


「エンエンラ王国の南って…まさか、来た道を戻るんですか!?」


「そゆこと」


ダルクスはあっけらかんと答える。

リューセイは思わず愚痴を漏らした。


「二度手間〜…。ワープ魔法とかないんですか?」


「ワープ魔法は勇者職しか使えない。俺達はいつでも地道なのさ」


「ニシシシ!まぁまぁ、いつもならそうでしょうけど…イズミルちゃんが居ればそんなことは解決です!安心して下さいリューセイ様。戻るのは楽ですよ〜!ほら、皆様、荷車に捕まるか乗って下さい!」


イズミルはそう言ってリューセイをズイズイと荷車の方に押し付ける。


「ガキんちょ!何考えてんだ?お前の遊びに付き合ってる場合じゃ…」


「いいからダルクスおじ様も乗るなり捕まるなりして下さい!」


リューセイ達は言われるがまま、荷物が積み上がった荷車に強引に乗り込む。

イズミルは荷車の後ろ側に乗り込む。そして、おもむろにディアゴの【27ページ・獄炎の章】を開く。


「イズミル…お前、まさか…!!」


「しゅっぱーつ!!!」


その掛け声と共に、ディアゴから勢いよく獄炎が吹き出す!!

その勢いを推進力に、荷車は一気に加速を始めトップスピードで平原を駆け抜ける!!!


「うわぁぁぁぁぁ!!!!!落ちるぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


振り落とされそうになるのを必死に耐えるリューセイ。


「キャアァァァァァ!!!!!」


リーサも吹き飛ばされそうになりながら必死に荷物に捕まっている。


「馬鹿野郎ぉぉぉぉぉ!!!!!どうするつもりだガキんちょぉぉぉぉぉ!!!」


「舌噛みますよ!!!ディアゴ!!8ページ!!!」


【8ページ・からくりハンドの章】により現れた巨大なアームは地面をガリガリと引っ掻き、速度をそのままに荷車はドリフトをかまして進行方向を変える。すぐさまイズミルは獄炎の章にページを戻し、そのまま正面の山の坂を物凄い勢いで駆け上る!!!


「「「ギャァァァァァァァァァ!!!!!」」」


リューセイ、ダルクス、リーサは恐怖の余り半泣きになるもお構いなしのイズミル。


「飛びますよーーー!!!」


「「「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」」」


悪い予感は的中。

山の斜面をジャンプ台にして、リューセイ達を乗せた荷車は天高く舞い上がる…いや、もはや山の斜面をレールに"射出された"と言った方が妥当か。


「「「ギャァァァァァァ!!!!!」」」


「計算完璧ー!!エンエンラ王国の方角でーす!!!」


あんなに遠かったはずのエンエンラ王国がみるみる近付いてくる。


「「「ぶつかるぅぅぅぅぅ!!!!!」」」


(終わった…俺の人生…!!)


死を覚悟して目を瞑るリューセイ。


「ディアゴ!」


イズミルは今度は【40ページ・無重力の章】を開き、無重力の層を荷車に纏わせる。


無重力を纏った荷車は急速にスピードを落とし、エンエンラ王国の城門前の地面にストンと着地をしたのだった。


リューセイ、ダルクス、リーサ…の棺桶はそのままズルリと荷車から地面に落ちた。


「さぁ!エンエンラ王国に着きましたよ!どうです!楽しかったでしょ?………あれ?」


イズミルはニコニコと荷車から降りてみんなの様子を伺う。


「あ、あ、あ、アホかぁぁぁぁぁ!!!し、し、死ぬかと思ったんだぞ!!!生き返ったばっかなのに…!!!」


リューセイは腰が抜けて立てない状態でプルプルと震えていた。


「どうしてくれんだ…ガキんちょ…良い歳して…下着代えなきゃいけなくなっちまったじゃねぇか…」


ダルクスはプルプルと恐怖で震える手で煙草に火を付けている。


「あれ?大不評!?」


イズミルは思いも寄らなかったとみんなの反応に驚いている。


「ね〜どうしたんですかぁ?何があったんですかぁ?」


そんな中、ユーリルの呑気な声だけが響くのだった。




〜〜〜〜〜




【エンエンラ王国・城下町】

【酒場】




ゴチン!


「いたっ!!」


ダルクスはイズミルにゲンコツをかました。


「ったく!急ぐのも分かるが、もっと節度をもった急ぎ方ってもんがあるだろうが!」


「う〜」


ぷく〜と膨れるイズミル。

言い返さない分、少しやり過ぎたと反省してるようだ。


「さて、次はこっから南の【モクレーン】って街に向かう訳だが…そこの街の宝箱配置をした後はもっと南にある【モクレーン神殿】に向かい、黄金のハープを納めてくるって手筈だ…おい、聞いてるか?」


ダルクスは俯いていたリューセイに話し掛ける。


「…え?あぁ…大丈夫です。聞いてますよ」


「なんだ?まださっきの恐怖を引き摺ってんのか?お前もだいぶビビりだなぁ」


「よく言いますよ。自分なんか漏らしてた癖に…」


「断じて漏らしてねぇ!!ちょっとチビッただけだ…」


「それを漏らしたと言う!世間は!」


「いいから、話し続けるぞ…神殿に黄金のハープを納めた後は…」


「スミマセン…ちょっと待って下さい…」


リューセイはダルクスの会話を止める。


(何やら身体の調子がおかしい。動悸が激しく、息も荒くなってくる。MP切れ…?いや、まだ余裕はあるはずだ…)


「おい、どうした?気分悪いのか?」


「…はい、なんか…調子が……………うっ!!」


リューセイは胸に急な痛みを覚え、椅子からズリ落ちてうずくまる。


「グッ…!!カハッ…!!」


「リューセイさん!?大丈夫ですか!?」


イズミルが心配そうに駆け寄ってくる。


「…ッ寄るな!!イズミルッ!!」


リューセイはイズミルを静止する。


「おいおい、まさか…」


ダルクスは何かを察したようだった。

…が、リューセイはそれどころでは無かった。


「ダメだッ…!!うわあぁぁぁぁぁ!!!」


そう叫んで、テーブルに立て掛けていた超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)におもむろに抱き付いた。


いきなりのリューセイの行動にダルクス、イズミル、リーサ…は棺桶だから除外するとしても、酒場に居たお客もポカンと呆気に取られる。


「え?なに?何かあったんですか?」


超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)からユーリルの困惑の声が響く。


「ダメだ…これじゃッ…!!」


リューセイはそう言って、今度は側に置いてあったリーサの棺桶に抱き着く。


「何やってるんですか…?リューセイ様…」


イズミルがジト目でリューセイを見る。


「ダメだ…ダメだ…イズミル…ッ!」


リューセイは踵を返し、今度はイズミルに飛び掛かる!!


「うわぁ!!!キモいぃぃ!!!」


咄嗟にダルクスの後ろに隠れるイズミル。リューセイはそのままダルクスに抱きついた。


「おわぁぁぁ!!!気色悪い!!!何すんだテメェ!!!」


ダルクスは無理矢理リューセイを引き剥がそうとする。


「うわぁぁぁぁぁ!!!スミマセン!!!もう少しぃぃぃ!!!」


意地でも張り付くリューセイ。


「うわぁ…」


イズミルはその光景に引いている。

しばらくして、リューセイは自らダルクスから離れる。


「どぅわ!!!きもっちわる!!!」


離れてリューセイはパッパッと制服を払う。

ダルクスも身震いさせている。


「こっちのセリフだ!!気色悪い!!自分から抱きついておいて、なんなんだ!!?」


「す、スミマセン…急に胸が苦しくなって…"誰かに抱きつかずにはいられなく"なってしまって…」


「なるほど…ソレがリューセイさんの"ドラゴンの呪い"ですか…」


イズミルが言う。


(ドラゴンの呪い…確かそんな話をしてたっけ。

まさかほんとに呪われていたなんて…)


「抱きつかずにはいられない…ってのは…お前の中の子供ドラゴンは母親の愛情?温もり?甘えたい欲ってのが大きかったんだろうな…」


ダルクスが考察をする。

続けてイズミルが口を開く。


「じゃあリューセイさんは定期的にこう、誰かに甘えないと呪いで死んでしまう訳ですか…うわ〜…大変ですねリューセイさん…MP切れにも気を付けないといけないし…」


「マジかよ…そのたんびにダルさんに抱きつかないといけないの!?」


「なんでだよ!!俺じゃなくて良いだろ!!もうあんな気色悪いのはゴメンだ!ガキんちょ、お前が抱きつかれ担当だ」


イズミルはディアゴの【大鋏の章】出し、ジャキン!とハサミを鳴らす。


「そもそも、ドラゴンの心臓での蘇生術を提案したのはダルクスおじ様じゃないですか!ダルクスおじ様が責任を持つべきです!」


「それしか蘇生の方法は無かっただろうが!それを提案した時点で俺は評価されるべきだろ!後の事は知らん!」


そう言って二人は抱きつかせるのはどっちにするかを押し付けあっている。


「あんたら…死んだら恨みますからね…」




続く…

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