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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第二十五幕【ドラゴンの心臓】


「うぅん…」


リューセイはゆっくりと目を覚ました。


どこかのベッドで寝かされていた。

上半身は裸で、その上から包帯をグルグルと巻かれている。


「…なんだ…どうなったんだ俺…」


良く辺りを見渡すと、ユーリルがベッドの横に座り頭だけ預けて眠っていた。


「ユーリル…おい…」


寝ているユーリルを揺さぶる。


「んん…」


ユーリルは身をよじり、ゆっくり目を開ける。

ぼんやりした視界から起き上がっているリューセイを認識した瞬間、カッと目を見開く。


「ゆ、ゆ、ゆ…」


ユーリルはフルフルと身体を震わせて


「勇"者"様"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」


大粒の涙を流しながらリューセイに抱きついてきた。


「いだっ!?オイ、怪我してるから!!怪我!!!」


「よ"か"っ"た"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!ふ"わ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ひ"や"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」


「相変わらずその泣き声なんだな…」


ユーリルのギャン泣きを聞き付けて、他の皆も続々と部屋の中に入ってきた。


「リューセイさん!!」


そう言ってイズミルは目をうるうるとさせ、腕でゴシゴシと涙を拭き取る。


「全く、しぶとい奴だよお前は。物語の主人公かよ」


ダルクスはそう軽口をついているが、どこかホッとしているようだ。

そしてリーサは…リーサは…


棺桶になっていた。


「死んでる!!?」


「お前が撃たれた時、ショックで棺桶になった」


ダルクスがそう言った。


「ようやく目が覚めたか」


そう言ってもう一人部屋に入って来たのは…


「グフマン博士…」


「身体はなんともないか?」


「…はい。少し痛みますけど…何てこと無いです。それで、その、一体何がどうなったんですか?」


リューセイが質問をするとグフマン博士が答えた。


「お前が撃たれた後、直ぐにセシルは取り押さえられたわ。撃たれたお前は倒れて動かなくなり、治療の為にここ…町長の家の一室を借りたという訳じゃ。3日ぐらい眠っておったんじゃぞ?」


「3日も…!セシルはどうなったんですか?」


「処刑されました!」


イズミルが間髪入れずに答えた。


「しょ、処刑!!?」


「嘘です」


「なんだよその嘘は」


「兵士に引き渡して拘留させました…あ、兵士はエクス・ベンゾラムが扮したのとは違う、本物の兵士ですよ!変装してた奴らも漏れなく捕まえました!」


続けてダルクスが口を開く。


「その後ポニョがシュヴァルツの製造工房を見つけてな。セシルは全部淡々と自白したよ。町長の…いや、博士の息子を殺したのも自分だってな」


「兎に角…問題は解決したって事ですね!良かった。これで勇者の船を工面出来ますね」


「いやいや、それよりお前がほんとに大丈夫なのかが心配だよ」


ダルクスが指して言う。


「は?」


「非常に言い難いんじゃが…」


グフマン博士は一拍起き


「お前は心臓を一発、撃ち抜かれておった事は気付いておるか?」


「……………え?」


「お前は"死んどった"んじゃ。そこの僧侶の"死にかけ"の状態…"瀕死"とは訳が違う。紛うことなき"死"だ」


「は…!?いや、生きてるだろ!ほら!」


リューセイは身振り手振りで身体を動かす。


「それは、ワシらがどうにか蘇生させたからじゃ。…とは言っても、本当に偶然だったが、先日ワシの家の近くにドラゴンの子供の死体が転がっておってな?」


グフマン博士がそう言ったところで、イズミルが補足を入れる。


「山の頂上で戦った三匹の子ドラゴン覚えてます?その一匹の死体だと思われます。ほら、私がふっ飛ばした…」


「魔法武器の製作に丁度良いと、ワシが保存していたんだ。だからその…ドラゴンの心臓をお前に移植してだな…」


「は…!?」


リューセイは胸に手を当てる…が、よく分からない。ここにはドラゴンの心臓が…?


「そうでもしないとお前の蘇生は絶望的じゃった。完全に死んでいる人間は本来、蘇生魔法でも生き返す事は出来ん」


「あんた、外科手術の免許でも持ってんの?」


ダルクスがタバコに火を付けながら聞く。


「いや?ただ、魔法武器を作るのに魔物の解剖をよくしとったから…」


「こっわ!」


リューセイは顔から血の気を引かせた。


「手術…とは言っても、魔法で無理矢理くっつけているだけじゃ。君…リューセイ君の魔力を吸いながら動いておるから魔力が尽きれば…」


「し、死ぬ…?」


リューセイが呟くとグフマン博士は頷く。

未だに抱きついていたユーリルがグズりながら続ける。


「グズッ…簡単に言うと…勇者様はHPとは別に、常に減り続けるMPが尽きても死んでしまうという事です…」


「分かりやすく説明ありがとう。んで、いつまで抱きついてるんだ。早く離れろ」


「問題は他にもありますよ!」


イズミルが会話に割り込む。


「ドラゴンの呪いが無いか、それが問題です」


「な、なんだよ…ドラゴンの呪いって…」


リューセイは恐る恐る尋ねる。


「"呪いの装備"ってありますよね?装備した者は呪われて様々な障害が出るっていう…。生き物を素材にした装備は必ず、聖職者による呪いの浄化が必要なんですけど…それを怠ると呪いが付く事があります」


イズミルが言うと、グフマン博士が続ける。


「一刻を争う事態だったもんで、ドラゴンの心臓の呪いの浄化を特にしてないんじゃ。近くに居た聖職者も…死んどったしな」


「リーサぁ…」


言ってガクッと頭を落とすリューセイ。

それを聞いてダルクスも口を開く。


「呪いがあるかどうかは今の時点では分からんが、お前は今まで以上に自己管理が必要になるって訳だ」


「そ、そんな…!」


「勇者様、安心して下さい!」


ユーリルはリューセイから離れて窓際に移動し、外を見ながら答える。


「魔王を倒しましょう。そうすれば現実の世界に戻れますし、身体は元の勇者様に戻れます。」


「ほんとか!?」


ダルクスがそこで割って入る。


「おいおい、お前らに倒されちゃ困るんだって。本当の勇者が倒してくれなきゃ」


「あぁ…では、そっちの勇者が見事魔王を討ち取ってくれるよう、宝箱配置人として頑張りましょう!勇者様がこの世界を脱出するには兎に角魔王が"討伐"される事にあるので!」


「こうしちゃ居られない!」


リューセイはベッドから出る。


「先を急ぎましょうダルさん!早くしないと勇者一行に追いつかれます!」


「お前、死んでたにしてはやけに元気だな」


「あー…死に慣れてんですかね?ほら、実質3回は死んでるし」


そのうち2回はユーリルのトラックなのは言うまでもない。


「分かった分かった。でも今日はもう遅い。明日の早朝から出発だ。ガキんちょ!次の目的地までのルートを頼むぞ」


「はい!」


イズミルはビシッと敬礼ポーズをする。

ダルクスはアクビをかきながら部屋を後にする。

それにイズミルも続き、リューセイ、ユーリルも部屋から出ようとすると…


「ちょっと待て二人」


グフマン博士がリューセイとユーリルを引き留める。


「世話になったぞ宝箱配置人。お前達が居なきゃ、息子殺しの罪で捕まる所じゃった…それで…お前達に贈り物がある」


そう言ってグフマン博士は部屋の隅に立て掛けていた巨大な筒状の何かをズルズルと引き摺って持ってきた。


「な、何ですかコレ…!」


ユーリルが驚嘆の声を上げる。


「【超光伝力放射砲(ちょうこうでんりょくほうしゃほう)】と書いて【ルミネーションキャノン】ちゃんじゃ!!」


「科学…!!」


リューセイがジト目で見る。


「違う!!これも魔法武器じゃ!!…とは言え、リューセイ。お前に魔力を使わせる武器を渡す訳にはいかんからな。少し改造を施した」


グフマン博士はその筒状のバズーカの側面を指差す。


「みろ、ここにメーターがあるじゃろ。これがMAXになると一発だけ、光属性の巨大なビームが撃てるのじゃ!」


「び、ビーム!?」


「威力は絶大じゃぞ!!ただし一度しか撃てんから、考えて使うんじゃぞ。一度撃ったら光属性を吸収させてすぐに充電するのじゃ」


「光属性って?」


「あんたじゃ。女神さん」


「わ、私!?」


「あんたが近くにいればその光を吸収して充電出来る。半日あれば充電はMAXになるじゃろ。太陽の光でも充電は出来るが…それだと数週間は充電にかかるからの。試しにほら、少し充電してみろ」


「わ、分かりました!」


ユーリルは【超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)】に手をかざす。そして、お得意の発光をしだす。除々にワット数を上げていくユーリル。


メーターは除々にピッピッと、上がり始める。

ユーリルがそのまま武器に手を付く。


「キャッ!?」


すると、ユーリルは吸い込まれる様に武器の中へと入っていってしまった。


「え!?お、おい!!ユーリル!!大丈夫か!?」


「なんと…光属性を吸収する機構を取り付けたが、まさか女神様を丸ごと吸い込むとは…」


「キャハハ!この中、意外に快適ですね!内部から少し発光してみますね!!」


超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)の隙間から光が漏れ、充電はまたたく間にMAXになってしまった。


「なんと!!」


「凄い…これなら連発出来そうですね!?」


「いや、そんな連発すると辺りがまっさらになってしまうからな?とんでもない威力なんだ。普段は振り回して打撃武器として使ってくれ。ビームはここぞという時、あと、周りに何も無いところで撃つんじゃぞ?」


「あの〜…」


そんな会話を遮るように、弱々しいユーリルの声が超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)の中から響く。


「これ、どうやって外に出るんですかね?」


「え?出られなくなったのか?」


「はい…」


「何してんだよ!?博士、これは…」


「あ〜…多分、発射しない事には…」


「は、は、発射!?ちょ、ちょっと!そんな事したら私はどうなるんですか!!?」


ユーリルは狼狽えている。


「だ、大丈夫じゃ。その中に吸い込まれたと言う事は身体は粒子化されているハズじゃから…」


「分かった、取り敢えず発射ですね?」


リューセイは超光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)に手を掛ける。


「うわぁ!!馬鹿!!ここで撃つな!!!家が木っ端微塵に吹き飛ぶぞ!!撃つ時は本当に細心の注意を払ってくれ!!」


「そ、そっか…。ユーリル、しょうがない。しばらくはその中に居てくれよ」


「そ、そんなぁ〜!!」




これがこの【アカシータ貿易港】で起こった一連の事件だった。


ファンタジーの世界観をぶち壊しそうな新しい武器を手に入れ、ドラゴンの心臓を持ったリューセイ。呪いを受けているとは今の所思えないけど…果たしてどうなるのだろうか?




続く…

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