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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第二十二幕【滅せよ科学】

【アカシータ貿易港・波止場】


リューセイ、ダルクスの二人は波止場で事件の調査に来ていた。


「船が…なくなってる…」


その一環で昨日、リューセイとダルクスが乗り込んだエクス・ベンゾラム教団の船も見回りに来たのだが、居なくなってしまっていた。


「まぁ、そらそうだよな。あんなに暴れちまったら」


ダルクスはタバコをふかしながら余裕そうに言う。


「逃しちゃって良いんですか!?この事件の犯人かもしれないのに!!」


「ま、犯人の可能性もあるよなぁ…。奴らは明らかにシュヴァルツと関係があるだろうし」


「え、そうなんですか!?」


「昨日乗り込んだ船、明らかに鉄と火薬の匂いが漂ってた。殺害現場があの船の横の桟橋だったらしいし…間違いない。入港禁止のハズの夜に密かに港に着けてシュヴァルツを密輸かなんかしてたんじゃないか。んで、その現場を見てしまった町長の息子は…てな感じだろ」


「そこまで分かってるのになんで野放しにしたんですか!」


「しょうがねぇだろ!お前は捕まってたし、信者達がシュヴァルツを持っててもおかしくなかった。俺もシュヴァルツ相手の集団じゃ分が悪い。それに…」


ダルさんは一拍置いて続ける。


「俺が探したいのは犯人じゃねぇ。それを"手引してる奴"だ」


「手引?」


「この街に居るハズだ。"ベンゾ"と結託してシュヴァルツの密輸を手伝って儲けてる奴がな…」


「それって一体…」


リューセイが聞きかけた所で、聞き馴染みある声がそれを遮った。


「リューセイさん!ダルクスおじ様!森に向かいますよ!」


それはイズミルの声だった。




〜〜〜〜〜




【アカシータ貿易港・外れの森】


「つまり、犯人を見つけないと協力してもらえないって?…チッ面倒くせぇな」


ダルクスはブツブツと森の中を進む。

イズミルもキョロキョロと見渡しながら口を開く。


「その容疑者の一人と考えられる人がこの森に住んでると聞いてますが…」


暫く森の中を進んでいるが、そんな痕跡は一切見当たらなかった。

そんな時、ユーリルが姿を現した。


「今、どういう状況ですか?」


「ユーリル!お前大丈夫なのか?昨日だいぶ酔ってたみたいだけど」


「え?そうなんですか?全然覚えてないですね」


「お前なぁ…」


「おい、待て!」


ダルクスが急に立ち止まり皆を静止させる。


「ポニョが何か見つけたらしい」


ダルクスの肩に乗っていたポニョはぴょんと地面に着地して飛び跳ねている。


「ポニョー!ポニョー!」


「向こうに何かあるみたいだ。行こう!」


ダルクスはポニョの案内する方角を進み始める。


「はぇ〜そいつ、そんな役に立つ事あるんですね〜。最近あまり登場なくて陰薄いから忘れてましたよ」


リューセイがボソッとそう言うと、ポニョはギロッとリューセイを睨み付けた。

ゾクゾクッと悪寒が走ったが直ぐに治まった。


「…ポニョ…お前今何かした?」


「チッ!」


「何!?今舌打ちした!?コイツ舌打ちしましたよね!?」


「【キルト】を唱えてハズしたんだ。駄目だろポニョ。人に向かって撃っちゃあ」


ダルクスはポニョをなだめている。


「おい待て!【キルト】って、50%の確率で相手を戦闘不能にさせる呪文ですよね!?ねぇ!?」


「良かったな。ハズれて」


「良かないですよ!!なんでそんな呪文覚えてんですかソイツ!!!」


「ミミックだからなぁ。子供とは言え」


「答えになってない!!」


「ほら、そんな事言ってる間に…家があったぞ」


森の中にポツンと…これまたファンタジーの世界には不釣り合いなメカメカしい近未来風の一軒家が建っていた。その不釣り合いさはまさに異様としか言いようが無かった。


「な、なんですかコレは…」


リーサも口を抑えて驚いている。


「怪しさ満点だな。調査のしがいがあるじゃねぇか」


ダルクスはズカズカと家に近付く。


「うぅん…文明を発展させるのはこの世界では禁止されています…場合によっては立ち退きと取り壊しに応じて貰う事に…」


イズミルもブツブツと言っている。


「お邪魔しまーす!」


ダルクスは返事も待たず中に入ろうと入口の扉に手を掛ける…が、勿論鍵は閉まってある。


ガチャガチャ!ガチャガチャ!


「いや、ダルさん、閉まってるから。まずはノックを…」


しかしダルクスは間髪入れずに爆発呪文をかけ、ドアをぶっ飛ばした。


ドゴーーーン!!!

玄関扉は屋内に吹っ飛んでいった。


「いやもう、やってる事が強盗より酷いよ!!」


リューセイが言うのも無視してズカズカと家屋に入っていく。その中も中で異様な光景だった。

まさに"サイエンス・ラボ"と言ったような、ファンタジーの世界に似つかわしくない内装…


「こりゃあ完全にクロだな」


ダルクスが呟く。


「うーん、これは見過ごせませんね…剣と魔法の世界観を明らかに逸脱してます…!」


イズミルもプンプンと頬を膨らませている。


「なんじゃいお前ら!人の家に勝手に!!」


部屋の奥から急にそんな声が聞こえてくる。すると、白髪のモジャモジャ頭の…まさしく"博士"と言った姿の男が現れた。


「不法侵入じゃぞ!出ていけ!」


激昂する博士にダルクスは物怖じせず向き直る。


「そうも行かないのよじいさん。あんたは今、色々な容疑を疑われてんのよ?」


「容疑〜?ワシが何したっちゅうんじゃ!」


言い合っている二人を尻目に、リューセイ、イズミル、リーサ、ユーリルはまるで博物館を周るように部屋を物色していた。ファンタジーの世界では見たことがない様々な形をした武器のようなものが至る所に飾られていたのだ。


「これは…なんだろ」


リューセイは一つ気になったものを手にとって見た。

卒業証書を入れる筒みたいな…これは武器なのだろうか?

確認していると、何かボタンを見つけ押してみると…


ヴォン!!!


「うわ!!!」


ボタンを押した瞬間、筒の先端から光の帯が伸び、顔を掠めた。


「おい!!勝手に触るな!!」


ズカズカとリューセイの前に来た博士はその物体を引ったくり元の場所に戻す。


「危ないじゃろが!もう少しで頭が焼き切れる所だったぞ!!」


「いや、なんでそんなもんがあるんだよ!!あんた、宇宙戦争でも始める気か!?」


ダルクスはそんな博士に近付いていき、ズイッと近付き睨む。


「単刀直入に聞こう。まさかとは思うがじいさん、あんた"科学"を結集させて武器を造ってるんじゃないだろうな?」


続けてイズミルも口を開く。


「剣と魔法の世界を守る為、この世界では"科学"で文明を発展させる事は固く禁じられているハズ。おじさま、もしそれを破っているなら重罪。場合に寄っては面前での公開処刑も辞さないですよ!」


「待て待て!!ワシがいつ科学を使ったって!?勝手な事ぬかすな!」


「ガキんちょ」


ダルクスはイズミルに合図を送る。

イズミルはコクリと頷きディアゴを発動させる!


【103ページ・亀甲呪縛の章】!!


「ギョホォォォォォ!!!」


博士は縛り付けられる。


「吐け!ジジイ!じゃああの光の剣はなんだ!?」


「ここにある武器は全て試作品の【魔法武器】ばかりじゃい!!その"ヒカルくん1号"も、持ち主の魔力を吸収して光の刃を作り出しておるだけじゃい!!決して科学で動いている訳ではない!!魔力の消費が激しく、持って直ぐに使えなくなるのでまだ実用には至ってないしな!!」


「ダルクスさん!これ!」


リーサが何かを見つけたのか声をあげる。

ダルクスがそちらに目をやると、リーサの前の壁には"銃"の形をした武器が大量に飾ってあった。


「あれはなんだジジイ…まさかシュヴァルツじゃねぇのか!?」


「シュヴァルツだと!?違わい!!あれも魔法武器じゃい!!!魔力を弾として撃ち出す装置…決して鉛の弾を飛ばしたりなどせん!!」


「ほんとだろうな?」


「ほんまじゃほんま!」


「リーサさん!そこの武器を一つ取って下さい!」


「はい!」


リーサは壁にかかった銃を一つ取って、急いでダルクスの元に向かう。

リーサから銃を預かったダルクスはカチャリと銃を構える。


「わ、わ、待て待て!ここで撃つな!」


ダルクスは博士の静止を無視して引き金を引いた。


バギョォォォン!!!


光の弾が射出され、先にあった壁をバゴーン!!とふっ飛ばし、大きな穴を作る。しかし、その一発で銃は粉々に砕けてしまった。


「ほぉ、威力は中々…」


「お、お前らぁ!!人ん家の壁をよくもぉ!!!」


「ダルクスおじ様?どうでした?」


「あぁ…。確かに、魔力を消費して撃ち出す武器…ってのは間違いないな。しかし、たった一発で壊れるとはな…」


「だからゆっとるじゃろがい!!ここにある武器は全て試作品!実用化にはまだ程遠いものばかりじゃし、全て魔力を使って動くモノ!!ワシは何も違法な事はしておらんわ!!」


「う~ん…」


ダルクスは顎に手を当てて考え込む。


「なんだなんだ?じゃあこの博士はシロなの?」


リューセイが言うと、イズミルも続ける。


「う〜ん…シロというか…グレーに近い感じもしますが…確かに今の所は違法性はないですね…」


「そうじゃろが!!なら早く縄を解け!!何かに目覚めたらどうする!!」


「いや待て」


縄を解こうとするイズミルをダルクスが静止する。


「ほんとーに、何もやましい事はないのか?」


「な、なんじゃい改まって…」


「何か隠し事…してるだろ?」


「し、しとらんし!!何度も言っとるじゃろ!!」


「今、動揺したな?ガキんちょ」


「は、はい!」


ダルクスの合図でイズミルは再びディアゴの呪文をかける!

【102ページ・三角木馬の章】!!

博士は縛り付けらた状態で、なおかつ床から湧き出た三角木馬に強制的に跨がる形になってしまった。


「おごおおおぉぉぉぉぉ!!?」


「なんで基本SMチックなんだイズミルの呪文は…」


「さぁ…?」


呆気に取られているリューセイとユーリルを尻目に、ダルクスは博士を責め立てる。


「言えジジイ!何を隠してる!!」


「イギギギ…な、なにも隠しとらんわいぃぃぃ!!!」


「ガキんちょ!」


「はい!わっしょいわっしょい!」


イズミルの掛け声と手拍子に乗せて、三角木馬がぴょんぴょんと飛び跳ねだす!!


「バッ!!ちょぉぉぉ!!避けるっっっ!!色々裂けるっっっ!!!真っ二つになるぅぅぅ!!!」


俺達は一体何を見せられてるんだ…


リューセイとユーリル、リーサはただただその光景を冷ややかに見ることしか出来なかった…




続く…

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