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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第二十一幕【疑心】

【アカシータ貿易港・町長の家】


この街で一際大きな邸宅の執務室。

早朝から一人の太った男が書きものをしている。この男こそ、このアカシータ貿易港の町長を務める男【ガフマン】だ。


そんな執務室に白髪の男が入ってくる。


「小さいお子様がご主人様に用があるとお見えになっておりますが…ご案内しても?」


長年ガフマンの執事をやっている男【セシル】は問いかけた。


「今は子供と遊んでいる暇はないんだがな」


「しかし…宝箱配置人だと名乗っておりますが」


「なに、宝箱配置人…?……………通せ」


セシルは一礼して部屋を出ていく。

暫くすると一人の女の子が通される。

大きな本を背負った学者風の女の子。


「宝箱配置人はこんな小さな子を雇わないといけないくらいに人手が足りてないのか?」


「いえ、その件については…まぁ、色々ありまして!私は【宝箱配置人書記担当イズミル】と言います。まだ未熟者ですが…書記担当として精一杯頑張らせて頂いてます!」


イズミルは大きく頭を下げる。


「座りなさい」


ガフマンはイズミルに自分の対面の椅子に座るよう手を指す。イズミルはコクリと頷いてから言われた通り椅子に腰掛けた。


「…して、何用かなイズミル殿。…とは言っても宝箱配置人がこの街にくる理由など決まっているか」


「はい!勇者様の船を工面して頂こうと思いまして…本当は昨日お伺いしたかったのですが、その、色々コチラもあったようなので…」


そう言ってイズミルはキョロキョロと辺りを見渡す。少し疑問を持ちガフマンに再び問い掛ける。


「昨日は喪に服した雰囲気でお伺いするのを躊躇いましたが…今日はその…普段通りと言いますか…何事もなかったかのような…」


「いつまでも喪に服してはいられなくてな。私はとても忙しいんだ」


「………息子さんが亡くなられたんですよね?それも殺人で…」


「だからなんだ?」


「いえ、悲しくはないのかと…」


「それは悲しいさ。妻を亡くし、男手一つで育てあげた一人息子…次期は町長になるはずだった男。死んで悲しくない訳がない。しかし、悲しむ時間も惜しいくらいに私は忙しいのだ」


「ふむ…」


「さて、無駄話をしにきた訳ではないだろう?船の事か。確かに私は船を何隻も所有しているが、勇者の為とはいえそうやすやすとは大事な船を貸す事は出来んな」


「勿論、タダでとは言いません。必要な分お金なら国から支給が…」


「あいにく、お金には困ってないのだよ…。そうだな…」


ガフマンは少し考えて…


「この事件を解決してくれ。そうすれば勇者に協力してやっても良い」


「事件を…ですか…。そうですね。シュヴァルツが使われたとあっては宝箱配置人としても放っておく事も出来ないので…事件はいつ起きましたか?」


「発覚したのは3日前の深夜。子供達が港でこっそり遊んでいる時、シュヴァルツの発射音が聞こえたので向かうと、桟橋の上で血を流して倒れている息子を発見した。心臓を撃ち抜かれていたよ」


「なるほど…まずはその子達に話を聞いてみるべきかもですね…」


イズミルはスクッと立ち上がりガフマンに一礼する。


「あとはお任せ下さい。必ず事件を解決してみせますよ!シムラおじいちゃんの名にかけて!」


そう言って胸をトンと叩くイズミル。


「………君は探偵かなんかか?」


「いえ!私はただの宝箱配置人書記担当です!」


そう言って執務室を出ようとするイズミル。


「お外までご案内しましょう」


セシルが執務室の扉を開けてくれる。部屋を出ようとして足を止めるイズミル。再度ガフマンに向き直る。


「そうだ、一つ質問があるのですが」


「なんだね?」


「この街の近くの森に武器を製造してる男が居る…と噂を聞いたのですが…町長さんは何かご存知ですか?」


それを聞いたガフマンは少しハッとした表情を見せたのをイズミルは見逃さなかった。


「………知らんな。ただの噂だろう」


「そうですか…」


「さぁイズミルお嬢様。お外に向いましょう」


セシルに促されるまま、イズミルは執務室を後にした。




〜〜〜〜〜




町長の邸宅を出た所でイズミルはセシルに向き、問い掛ける。


「執事さんは誰が怪しいと思いますか?」


「……………」


「何か些細な事でも…気になった事とかないですか?」


「……………私は…ご主人様に忠誠を誓った者。何があろうと私はご主人様の為に動き、裏切る事は出来ません……………しかし、それはご子息に対しても同じでした」


少し間を置いてセシルは小声でイズミルに伝える。


「………なのでこれはご子息を想っての私の独り言だと思って下さい」


イズミルはコクリと頷く。


「ご主人様は何かを隠されています…。イズミルお嬢様も先程聞いていた噂の森に住む人物…その方と…何か繋がりがあるように思います」


「…!」


「何か、表には出せない秘密…それをご子息は知ってしまったのではないでしょうか…それで…その………」


「…秘密…」


「…コホン。独り言が過ぎましたな。私が言えるのはここまでです。どうかイズミルお嬢様。事件の解決をよろしくお願い致します」


そう言ってセシルは足早に屋敷に戻って行ってしまった。


「う〜ん…」


イズミルは顎に手を当て考える。


(町長が隠す秘密…?息子はそれを知ってしまった…?森の人物との関係…)


果たしてこれらは今回の事件に関係があるのか。

イズミルは思いを巡らせながら屋敷を後にするのだった…




〜〜〜〜〜




「そこのボク達〜」


リーサは街の噴水広場で遊んでいた三人組の男の子達に声をかけた。


リーサは例の"森に住む男"の情報を収集する為に色んな人に声をかけていたのだが有力な情報は何も得られず途方に暮れていた所で子供達を発見。ダメ元で声をかけたところだった。


「ボク達は"森に住む男"の人について何か知ってるかな?」


「知ってるよ!」


「そうだよね…知ってる訳………え!?」


思いもよらない返答にリーサは驚く。


「な、な、何を知ってるの!?」


「その男って、この前の事件の犯人だよ!絶対!」


「な、何でそう思うの?」


「ボク達がこの前ほんとは夜の港は入っちゃダメなのにコッソリ集まって遊んでたんだ。そしたら近くで"バァーン"ってスッゲェ音がして…花火だと思って音のした方に行ったら…死体を見つけたんだ!で、友達が一人大人を呼びに言って、集まった大人達が言ってたんだ。『普通の殺され方じゃない』って。『変な武器で殺されてる』って」


(まさか声をかけた子供達が今回の事件の第一発見者だったなんて…!)


「でね!でね!ボク思い出したんだよ!ずっと前ボク達が大人に黙って近くの森に遊びに行こうって話をしてたら町長さんにそれを聞かれてて…」


「うんうん」


リーサは食い入る様にその話を聞いている。


「そしたら町長さん『あの森には怖い武器をいっぱい持ってるおじさんが住んでるから近付いちゃイケないよ』って。町長さん怖い顔で言うから怖くなって行くのヤメたんだ」


「怖い武器…」


「だから多分そいつが街に来て町長さんの息子さんを殺したんだよ!そうに違いないって!」


「そうなんだ…。ねぇ、その倒れた人を見つけるまでに、誰か怪しい人を見たりしなかった?」


「見たよ!」


「まぁそう簡単に…えぇ!?見たの!?」


再び予想外の返答。


「お、教えて!どんな人だった!?」


「うーん…そうだなぁ〜…」


男の子の一人はそう言って少し黙るとリーサの事をジッと見つめる。

そしてニヤリと笑うと…みんなを集めて何かコソコソと話し…


「教えてあげても良いけどその代わり、お姉ちゃんのおっぱい触らせてよ」


「…お!?」


またまた予想外の返答。


「服の上からで良いからさぁ!」


そう言いながら子供達はワキワキと"何かを揉む仕草"をしながら近付いて来る…


「ヒィィいやそういう問題じゃ…」


「じゃあ何も教えない」


男の子はプイとリーサから離れて行く。


「ま、待った!分かりましたよぉ!その、一瞬だけですよ!」


「わぁ~い!お姉ちゃんありがとぉ!」


そう言って男の子達はパンパン!とお互いの手の平をハイタッチする。


「それじゃ、失礼しまーす」


子供達の手がワキワキと近付いて来る…

リーサは目を瞑った。


(あぁ…誰にも触らせた事がない胸をこんな形で…しかもこんな小さい子供達に…!!)


ジャキン!!!!!


「ふぇ?」


そんな金属音が聞こえ薄っすらとリーサが目を開けると…


目の前にはギロチン台に取り付けられるようなデカい刃物が地面に突き刺さっていた。


「ヒィィィ!!!」


子供達は腰を抜かしている。


「なーにをやってるんですかリーサ様…」


その声の方を見ると…ジト目のイズミルが立っていた。

ギロチンはイズミルのディアゴによる【15ページ・ギロチンの章】によるものだった。


「イズミルちゃん違うの!この子達が何か知ってるみたいだったから聞こうと思ってた一環の…!」


「なるほど…」


それだけで察したのか、イズミルは子供達に向き直り…


「知ってる事を話して貰いましょうか。ボク達!」


言ってイズミルはニコニコと子供達に近付いた。


「だ、だから、おっぱい触らせてくれたら教えるって…!!」


男の子が言い終わる前に、イズミルがパチッと指を鳴らすとその子の目の前に再びギロチンが落ちた。


「ギャアアア!!!」


「ほら、知ってる事を話さないと…今度はどっか削げちゃうかもですよ〜?」


「ヒィィィ…!!わ、分かったよ!!ボクらが見たのは黒ずくめのローブを着た奴だよ!!」


「黒ずくめのローブ?」


「ボクらがパーンって音を聞いて向かってたら死体の居た所から走っていく黒ずくめの後ろ姿を見たんだよ!」


ジャキン!!!


またも容赦なくギロチンが落とされた。


「なんでぇ!!言ったのに!!」


「知ってるのはそれだけですか?」


「それだけだって!!」


「本 当 に ?」


「本当だよぉぉぉ!!」


イズミルが再びパチッと指を鳴らすとギロチンは消えた。男の子達は半泣きだ。


「う〜ん、これだけだと大したヒントにはならないですねぇ…。もう行っていいよキミ達」


フラフラと恐怖で足をもつらせながら離れていく男の子達にイズミルが再び声をかけます。


「あ、それと!今度女性に対してハレンチな事をしようとしたら…」


イズミルはディアゴの【16ページ・大鋏の章】で出した巨大なハサミをジャキンジャキンと鳴らす。


「チンチン切り落としちゃいますからね!」


「うわぁあああああ!!!」


男の子達は下を抑えながら走って逃げていくのだった…


「な、何もそこまでしなくても…」


「あんな小さいウチにスケベな子はロクな大人にならないですからね!厳しく"去勢"しとかないと!それより…」


イズミルはスッとリーサに向き直る。


「リーサ様の言ってた森に住む男…やはり怪しいです。ダルクスおじ様達を探しましょう!次に向かうはその男の元へ!です!」




続く…

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