第百八十四幕【デカくなったら弱くなるを払拭したい】
バタァーーーーーン!!!
そんな大きな音と共に、土埃を上げて地面に落ちたドーラ。
その音を聞いて、バリア魔法を展開するリーサを切り落とそうとするスコピールは思わずそちらに目を向けてしまう。
「ドーラよ!!大丈夫かッ!?」
土埃が舞っている為、安否を確認出来ない。
リーサのバリアを挟んだ手を離し、ドーラの安否を確認しようと向かおうとする…が
「あ、い、行かせませんっ!!」
バリアを解いたリーサは直ぐ様、別の呪文を唱える。
「ブリザースト!!!」
バキバキバキ!!
スコピールが踏みしめた地面が音を立てて凍り始め、その地面に付いた脚までもバキバキッと氷が張ってしまう。
まるで氷のスケートブーツを履いてしまったように、スコピールはツルリと脚を滑らせ大の字になって転倒してしまう。
「く…小賢しいッ!!」
足を踏みしめて張った氷を叩き割って起き上がろうとするも、すかさずリーサが魔法をかけ直し再び氷が張ってツルリと脚を滑らせるスコピール。
「このっ…!!」
スコピールはサソリの尻尾の先をリーサに刺し向ける。
ズガァァァーーーーン!!!
「ほわあぁぁッ!!!」
咄嗟にその場からピョーンと飛び退くリーサ。
先程まで自分が居た場所に毒針が突き立てられた。
「スコピール!私に構うな!貴方は自分の事だけを気にしてなさい!」
土埃の中からぐぐぐ………と上体を起こしながら第三形態のドーラが言った。
ドーラはとぐろを巻いたかと思うと、まるでバネの様に飛び上がる。
空から光伝力放射砲を振り被って落ちて来るリューセイを迎え打つ為だ。
「うわっ!?」
舞う土埃の中から突如飛び上がって来るドーラに驚くリューセイ。
ジャキン!!
通りすがりに毒牙で挟もうとするドーラの攻撃を光伝力放射砲で弾く。
しかし、直ぐにしなったドーラの尻尾がリューセイの死角から襲い、その尻尾にリューセイは叩き落とされてしまう。
バシッ!
ドゴーーーーーン!!!!!
一気に地面に叩きつけられるリューセイ。
地面に大きくクレーターが出来る。しかしリューセイに痛がる暇もなく
今度は空中で身体を翻し丸まり始めるドーラ。
無数の脚が生えた方を外側に、背中を側を内側にするように丸まって…
棘付きの車輪と化したドーラは高速回転しながら地面に落ちたリューセイに向かって落ちる!
ギュルルルル!!!
「うわ、ちょ、まっ!!」
起き上がる間もなく、地面に寝そべった状態で咄嗟に光伝力放射砲でガードする。
高速回転する巨大棘付きの車輪を武器一つで魔力を込めて迎え打つ。
ギャリギャリギャリ!!!
火花が散る中、リューセイを巻き込もうとその場で高速回転するドーラ。
「一度世界を救った………勇者を舐めるなよ………ッ!!!」
リューセイは、力を込めて自分を圧し潰そうとするドーラを押し返す!
ガキィィィン!!!
巨大なボールを打ち返すように、ドーラをかっ飛ばした。
大きく放物線を描いて飛んでいくドーラ。
その隙に立ち上がるリューセイ。
棘付きの車輪と化したドーラは飛んで行った先で地面に付くや否や、そのまま地面を抉りながら地面に潜っていく。そして、地面に潜ったまま土埃を上げながら次第にリューセイに向かって来る。
次に来る攻撃を警戒しながら光伝力放射砲を構える。
ドン
そんなリューセイの背中に何かがぶつかる。
それは後ずさってきたリーサの背中だった。
「リーサ!?」
「あ、あの…私なんでまだ…生きてるんですか…」
「ここは危ないぞ!ドーラが向かって来てるんだ!」
「こ、こっちからもサソリさんが…」
リーサの見る方向からは、スコピールがハサミをジャキジャキと鳴らしながらにじり寄って来ている。
「ば、万事休すですっ!」
「いや、この状況も利用してやれば良いんだ」
リューセイはヒソヒソとリーサに耳打ちする。
コクリと頷いたリーサはスコピールに両手杖を向ける。
「フリスト!」
リーサが呪文を唱えると、両手杖から大きな氷塊がスコピールに向かって飛んでいく。
一瞬、脚を止めたスコピールは巨大なサソリのハサミでそれを振り払う。
「そのような低級魔法で妾の足止めが出来ると思うのか」
余裕そうに近づいて来るスコピール。
しかし、リーサも負けじとしつこく氷塊の雨をスコピールに向け浴びせていく。
全く効かない魔法を受け次第に苛立ってくる。
「遊び相手はここまでじゃ!」
スコピールは脚を曲げて地面蹴る。巨体は空高く飛び上がり、二人に向かって押し潰さんと降ってくる。
それを見計らっていたようにリーサを抱き寄せるとリューセイはその場から大きく飛び退いた!
その直後!
先ほどまでリューセイ達か立っていた場所から地中を掘り進み反対側から迫って来ていたドーラが飛び出した!
ガツーーーーーン!!!
飛び出したドーラ、上から降ってきたスコピールが見事に空中で衝突する。
そして二人…というより二匹の巨蟲は仰向けに荒野に仰向けに落ちる。
ドスーーーーーン!!!!!
「やりましたよリューセイさん!思惑通りですね!……………リューセイさん?」
リーサが興奮気味に言うが、リューセイはリーサに抱きついたまま無言だ。
「リューセイさん!?もう大丈夫ですよ!?」
「…………………………よし」
少しの間の後、そう言ってリューセイは立ち上がる。
「今………サラッとドラゴンの呪いを………」
「なんのこと?」
リューセイは白々しくポカンとした表情を見せる。
「スコピール!!何してるのっ!!ここは任せて貴方は大人しくしてなさい!!」
「お主こそ、妾の邪魔をするでない!!こ奴らは妾が…」
「貴方って人は…!!」
「お主だって…!!」
巨大な蟲同士が言い争いをしている。
「なんだなんだ?アイツら仲間じゃないのかよ?」
「言い争ってますね…。仲が悪いんでしょうか?」
リューセイとリーサが呆気に取られてた。
それを横目に見たドーラはムカデの尻尾を振り上げる。
「良いからスコピール!私の邪魔をしないで!!」
そう言って振り上げた尻尾をリューセイ達に叩き付ける!
バゴォォォーーーン!!!
「どわっとお!!」「きゃあ!」
寸での所でリューセイとリーサはその場から飛び退いき回避する。
しかし、追い打ちをかける様にドーラはリューセイに向かって頭を伸ばし毒牙を刺し向ける!
「油断するなリューセイ!!貴方は絶対に私が…!!」
ガキンッ!!!
毒牙を光伝力放射砲で弾き、その場から離れながらドーラを誘導するリューセイ。
「こっちだ!ドーラ!」
パンパンと手を鳴らし走るリューセイ。
「それで私を挑発してるつもりか?」
無理に追い掛けず、ドーラは鉤爪状の尻尾をリューセイに向ける。
キュイィィィィイン…と尻尾の先に光が集束し…
ビイィィィィイイイ!!!
一気に解き放たれた光は一筋のビームとなってリューセイを襲う!
「うわっとと」
当たりそうになる度に回避をする。
しかし、避けた内からビームはリューセイを追い掛ける様に何度も付いてくる。
「リューセイさん!大丈夫ですか…ッ」
リーサが応戦しようとするが、それをさせまいとスコピールのサソリの爪が背後から迫る!
「お主の相手はこっちだ…!!」
振り上げたハサミをリーサに振り下ろすが、咄嗟に防御魔法を張ってその攻撃を防ぐリーサ。
ガキン!!
「もう…!!私の相手になりませんって…!!」
「なに…?余程自信があるようじゃのぉ………だったら…お主の力見せて貰おうか…ッ!!」
「え!?いや、ちが、そう言う意味じゃ無くってぇ!!」
ズン!!
スコピールは大きく脚を踏ん張ると、ハサミを振って呪文を唱えた!
「お主も魔法の使い手か…それなら妾も負けてはおれんぞ…!"魔法軍事国家ソウルベルガ"の力を思い知らせてくれる!」
「ソウル…ベルガ…?」
「食らえっ!」
スコピールがハサミを振ると、大きな火球がリーサに向かって飛んでいく。
「うきゃあ!!」
火球はリーサの目の前でピカッと光ると…
ボガァァァーーーーーン!!!
大爆発を起こすのだった。
続く…




