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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第五章【魔王討伐(勇者より早く)編】
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第百八十一幕【荒野で始まり荒野で終わる】

現れた地下へと続く階段。

取って付けたようなガタガタの石階段。

壁や天井は掘った後の土のままで狭く真っ暗。


イズミルが光輪の章で照らしながら先頭を行く。

舞う砂埃にケホケホと咳をしながら…

その後をリューセイ、ユーリルも付いて行く。


「あれ?千賀蘭丹ちゃんは…」


暫く階段を下った所でユーリルが後ろを振り向いて気付く。


「あれ、一緒に来なかったのかな?」


振り向き首を軽く傾げるリューセイ。


「リューセイさん!」


そんなリューセイを呼ぶイズミルの声。

パッと前を向くと、イズミルの前には継ぎ接ぎの木の板で作りられた簡素な扉が現れた。


リューセイに目を合わせながらドアノブに手をかけるイズミル。

リューセイは背中の光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)に手をかけながらコクリと頷く。


カチャ…


恐る恐る扉を開く。


しかし、目の前に広がった風景は肩透かしなものだった。

小さな部屋。本棚が壁を埋めるように立ち並び真ん中に書記机。

書斎といった雰囲気の場所だ。


「………なんだ。地下迷宮でも広がってると思ったんだけどな」


リューセイは肩の力を落とした。

そんな中、イズミルの背中が小刻みにブルブルと震え始める。


「こ…これは…!!りゅ、りゅ、リューセイさん!!これは、歴史的大発見ですよ…!!」


「そ、そうなのか?」


リューセイの返事を待たず、イズミルは近くの本棚に駆け寄りおもむろに目の前の本を手に取る。


手に取った瞬間、本に積もっていた砂埃が舞う。


「こほこほっ…!これは…間違いなく数千年前の書物です!!読み解けば…当時の事が何か分かるかも…!!」


興奮気味に本をめくるイズミル。しかし、ページはめくる傍からボロボロと崩れ去ってしまう。


「あぁ…!!朽ちてボロボロになっちゃってます…!! 貴重な書物があああ」


そんなイズミルを横目にリューセイは壁に掛けられた燭台にマッチで火を灯していく。


「落ち着けってイズミル。とりあえず手分けして何か変わった物がないか探してみよう」


そんな広くない部屋。リューセイとユーリルも探索を始める。


「いっぱい本があるけど…こほっ…タイトルもよく分からない程ボロボロになってるな」


「無理もないですよ。数千年も前のものなら…」


リューセイとユーリルが本棚を流し見しながら気になる本がないか探しながら言う。


「ユーリルは本棚を、俺はこの真ん中の机を調べてみるよ」


机の上には特に何もない。砂埃が多く積もっているだけ。

リューセイは机に付いた何個かの引き出しの方を開けてみる。


ガララッガララッ


次々に開けていくが気になるものは何もない。


ガララッ


「あっ」


最後に開けた引き出しにはその底を埋めるような大きな一枚の羊皮紙があった。

リューセイはその羊皮紙を引き出してみる。


「これは…。おい、みんな見てみろよ!」


その声を聞いてイズミルとユーリルが集まる。

リューセイが広げる羊皮紙には一人の人物の全身像が描かれていた。


「これは…誰でしょうか…?」


イズミルは顎に手を当て考えている。

綺麗な顔立ちの若い男。王族が来るような綺麗なコートを羽織っている。


「………見るからに………王様?王子様?って感じだな」


「もしかして………"亡国"の………?」


「名前とか書いてないですか?ほら、裏面とかに!」


ユーリルがそう言い、リューセイは羊皮紙をひっくり返してみる。


「……………あ、ほんとだ!何か書いてあるぞ!?」


それを聞いてイズミルが間に入ってメガネをクイッと上げながら凝視する。


「なになに………【シュヴァルツァー・ダルクルーゲン】って書いてますね………」


「【シュヴァルツァー】!!………まさか【シュヴァルツ】の名前の元になった人じゃ!」


「その可能性が高いですよ。亡国の王族の人で…そこで開発された武器に彼の名前から取ってシュヴァルツと名付けられた…辻褄が合いますね!」


「私はそれより、【ダルクルーゲン】の方が気になりますけど!ダルクルーゲン…ダルクル…ダルクス!!ダルクスさん!!はぁぁぁぁ!!」


ユーリルが言って大変な事に気付いてしまったように大きくリアクションする。


「いや、それは関係無いだろ。数千年前の絵にダルさんが描かれてる訳が無いし。じゃあ今何歳だよって話だ。そもそも描かれてる人はダルさんとは似ても似つかないじゃないか………」


「そうですね!ダルクスおじ様にしてはカッコよ過ぎます!」


イズミルはダルクスが居ない事を良い事にニヤリと笑って言う。


「ほら、ここに描かれてる人の子孫だったり?亡国の血縁の方だったのかもしれませんよ!ダルクス様色々謎も多いし」


「「ないない」」


リューセイとイズミルは重ねて言う。


「まぁ、それもそうですね」


自分で言ってみたものの、そんな訳無いかと納得するユーリルは肩を落とした。


「ま、一応聞いてみれば良いさ。それより、他にも何か情報は無いか?ほら、亡国の名前とか知りたくね?」


「はいそうですね!こっちの本棚は比較的綺麗な装丁のまま残ってるみたいで…何か手がかりがあるかも」


イズミルはまた本棚に向かって次々と本を取ってはパラパラとめくっていく。


「当時の文字………かなり独特の達筆で解読に時間がかかりますね。うーん、虫に食われたりして読みにくいのもあって………これは中々、情報を読み取るのは難しいかも…」


暫く3人は他に手がかりを探すも、机にあった一枚の絵以外には特に見つかるモノはなく、後は本棚の本の中に何か情報がある事に賭けるしかなさそうだ。


「イズミル、何か分かりそうか?」


「うーーーん………ちょっと難しいですね。文字が今使われてるモノと似てはいるんですけど………今とは違った文法方法で構成されてるみたいで………」


「お前ら何やってんだ!!」


急にそんな声が響いた。

部屋の入り口にはいつの間にかダルクスが立っていた。


「ダルさん!!見て下さいよ!!こんな秘密の部屋を見つけたんです!!」


リューセイはダルクスに駆け寄り持っていた絵を開いて見せる。


「ほら、この荒野で滅亡した"亡国"の秘密がもしかしたら何か分かるかもしれませんよ!」


しかし、ダルクスはその絵をバッと奪い取ってクルクルと筒状に丸めた。


「勝手に触るな!イズミル、お前も本を棚に戻せ!」


「え?な、なんでですか?」


「まずは…まぁ、良くここを見つけてくれたな。ここは貴重な情報源だ。闇に葬られた時代の歴史が紐解ける可能性がある。ここは徹底的に調査されるだろう。宝箱配置人協会の権限でな。だから保全の為に無闇に触るんじゃねぇ」


パシッと丸めた棒状になった羊皮紙でイズミルの頭をはたくダルクス。


「わ、私も調査に参加したいです!!」


「ダメだ。俺達は宝箱配置人・宝箱配置担当だ。勇者のルートを開拓して宝箱を配置するのが仕事だ!ここは協会の調査員に連絡して調査依頼を出す。良いからサッサと出ろ!」


急かされリューセイとユーリルは渋々と階段を登っていく。

イズミルだけは名残惜しそうに本棚を眺めている。


「ほら、ガキんちょ!!お前も行った行った!」


「私達が最初に見つけたのに!!」


「やかましい!ほら、サッサとリューセイ達に付いて行け!」


手の平でパッパッと払う素振りをするダルクス。

イズミルは眉間に皺を寄せながら言う通りに階段に向かう。ダルクスにすれ違いざまにべーッと舌を出してそのまま階段を登っていった。


「ったく………それにしても………」


誰も居なくなった部屋を見渡し、ダルクスは腰に手を当てる。


「まだこんな場所が残ってたなんてな…」


そう呟いて一息溜息をつくダルクスだった。


ーーーーー


階段を登りきり地上に戻った3人。

それを迎えるようにリーサが階段前で立っていた。


「あ!皆さん!心配したんですよ〜?急に皆さん居なくなって探してたらこんな地下への階段が見つかったので…もしやと思いましたが………下には何が?」


「うぅ〜…!!私だって調査したいのにぃ〜…」


イズミルはプク〜と頬を膨らませている。


「あ、それと、千賀蘭丹さんはソウルベルガに向かうと言って一人で行ってしまいました。大丈夫でしょうか?」


「大丈夫かな一人で。あの娘、俺より年下っぽいのに」


「大丈夫ですよ!勇者様よりしっかりしてそうだし!」


リューセイに続いてユーリルがそう言い、リューセイはジト目でユーリルを睨む。


そんな事をしているともう空は夕闇に染まり初めていた。

まだまだ先は長い。

荒野のど真ん中で野宿をする為にテントを張り焚き火を起こすリューセイ達。

手分けして手慣れた手付きで設営をしている最中、それは唐突に現れた。


最初に気付いたのはリーサだった。


「あの………あれ………」


リーサは遠くを見て指差している。


「あ?………どうした?」


薪を持ったリューセイがリーサに近付きその方向に目をやる。


沈む夕暮れをバックに何者かの人影が一つ。


「………誰か居る?千賀蘭丹かな?」


リューセイは目を細めその人影を凝視する。


バラバラ!


途端に、リューセイは手に持っていた薪を地面に落とす。

目に入った人物が誰かを認識した時、思わず手を離してしまった。


「アイツ……………!!【センチュレイドーラ】じゃないか………!!!」



続く…

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