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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第十八幕【剣と魔法と…】

【冒険の途中に出会った忍び猫の"にぼシィ"を仲間にしたささミィ。そんな彼に新たな苦難が訪れる。母猫さらミィの形見である魔法の猫じゃらしが謎のデブ猫"カッツオ"に折られてしまう。父猫を殺した悪猫がカッツオだと睨んだささミィは彼を追うと共に、魔法の猫じゃらしを修復する為に伝説の鍛冶職猫"マァグロ"の元へと向かう】


【スタコラささミィ〜】

【第5話『謎のデブ猫現る』より抜粋】




〜〜〜〜〜




「おもっっっ!!!なんですかコレ!!!内容重過ぎないですかコレ!!!何処が子供向け絵本なんですか!?」


イズミルは【すたこらささミィ〜】の絵本を歩きながら読んでいる。リーサが持ち歩いていた物を貸してもらったようだ。


「フフフ!今、子供達問わず大人達にも人気の絵本なんですよ?これを知らなかったなんてビックリですよ~」


そう言いながらニコニコと説明するリーサ。


「ほら、ここの見開きページなんて圧巻で…丸々2ページを使って戦争を描写してて…ここ、小さくポツポツと倒れてるのは全て兵士猫ですよ…!描き込みが凄いですよね…!」


「うげぇ…私もう良いです…」


イズミルは青ざめながら本を閉じる。


「えぇ〜!ここからが面白いのに!」


リーサは残念そうだ。

しかしユーリルは…


「リーサ様…!続きは!?続きはどうなるのですか!?」


思いきりハマっていた。


「すみません…手元には3巻までしか持ってなくて…」


「えぇ〜!?物凄く気になるのに〜!!」


そんな女三人組とは対照的に、ダルクスは黙々と荷車を引き、リューセイも静かに荷車を後ろから押していた。


ムジナ村を後にした宝箱配置人一行は、次の目的地【アカシータ貿易港】を目指していた。


「ダルさん。次の街はどういった所なんですか?」


「アカシータは他の国との交易の架け橋となってるデッカイ港町だ。多くの商業船や旅人の船が行き交ってる」


「…!という事はつまり…」


「勇者の船出の旅が始まる場所にはうってつけだな!」


船!


リューセイも前の冒険では自分の船を手に入れて冒険していた。


(って、船も宝箱配置人が用意すんのかよ!?)




〜〜〜〜〜




しばらくすると大きな街が見えてきた。

遠目の海岸線に何隻か停泊した帆船も見える。

飛んでいるカモメといい、心地良い潮風といい、ザ・港の町といった具合だ。


【バクベドーア大陸・オボロックル地方】

【アカシータ貿易港】


その街に入るための門前に兵士が立ち塞がっており、何名かの旅人、商人が足止めをくらっていた。


「どうしたんでしょう?ただ事じゃなさそうですね?」


イズミルは首を傾げている。

ダルクスは無視して街に入ろうとするが…


「ちょっと待ちなさい」


案の定、兵士に引き止められてしまった。


「今、厳戒態勢を敷いてるんだ。少し調べさせてもらうよ!」


そう言って兵士は近くに仮設された詰所に合図を送る。すると、詰所から数名の兵士が出てきて荷車を物色し始めた。


「なんだなんだ??俺達は宝箱配置人だぞ。宝箱配置人は何処でも通り抜けられる権限があったハズだぞ?」


ダルクスが訝しげに兵士に問う。


「いや、すいませんね〜。これも仕事なもんで…」


兵士は申し訳無さそうに、一人一人の身体検査も始める。


「一体何があったのですか…?」


リーサが問い掛けると兵士が答える。


「いやね?最近この街で殺人事件があってだね…」


「殺人事件…!?また穏やかじゃないですね…」


リューセイは思わず驚いた。


(ファンタジー世界には似つかわしくない言葉だ…)


「しかしこれがただの殺人事件じゃないんです。おかしいのは殺され方で、見つかったご遺体は…その…死因が魔法でもなければ剣でも…弓矢でもなく…外傷は小さい"穴"。そしてその穴は反対側に貫通していた。我々はこれを…」


「"シュヴァルツ"ですね…!!」


イズミルが口を挟む。兵士は続ける。


「えぇ。"シュヴァルツ"だとみて調査してるところなんです」


「"シュヴァルツ"ってなんだ?」


リューセイは手を上げて質問すると、ユーリルが間に入る


「説明しましょう!シュヴァルツとは…!」


「お前が知ってるのか?」


「腐ってもファンタジー世界監視役の女神ですからね!!それくらいは知ってます!!」


「…で、なんなんだよその"シュヴァルツ"って」


「簡単に言えば勇者様の世界で言う"銃"の事です!ガン!鉄砲!はじき!チャカ!ピストル!」


「銃!?まさか、剣と魔法のファンタジー世界でそんなもの…」


「あってはならないのです」


イズミルが深刻そうに言う。


「シュヴァルツは"誰でも簡単に"命を奪いやす過ぎるんです。下手したら子供でも扱えてしまう。そんなものがこの世界にあると、この世界の均衡は保てなくなる」


ダルクスがそれに続いて口を開く。


「シュヴァルツがあれば魔物に怯えないで済む、より良い世界になると言ってたヤツが居た。違うな。魔物が脅威でなくなった時、次には人同士が簡単に争う世界になっちまう。強い武器をひけらかして、武器を多く持ったものが牛耳る世界にな」


「うわー、物凄く身に覚えのある世界だなーそれは(棒)」


リューセイが遠くを見つめながら言った。


「シュヴァルツがあると人は経験を詰まなくなります。レベルアップもする必要がないですし、剣や魔法の技術も廃れるでしょう。魔物の素材も簡単に調達出来るようになり、生き物は乱獲されるでしょうね。生態系の崩壊も目に見えます」


「…兎に角だ。シュヴァルツは百害あって一利なし!便利過ぎる武器は破滅しか生み出さないのさ。だからシュヴァルツは世界的に製造が禁止されていたんだが…」


「宝箱配置人として放ってはおけませんね…」


ダルクスとイズミルが交互に言った。


「おいおい待て待て。まさかその犯人探しをするつもりか?」


リューセイは慌てて問い掛ける。

それにイズミルはビシッと答える。


「もちろんです!そんなものが勇者の手に渡ってしまったらどうするんですか!そもそも、そんなものがこの世界にあると勇者の冒険に間接的にも支障があるはずです!!」


「そうかな?」


そんな事を言っていると兵士は荷車の確認と身体検査を終えたようだ。


「すいません引き止めてしまって。問題なかったです!どうぞお通り下さい!」


「んじゃ、取り敢えず街に入ろう。宝箱配置と並行して街の人に聞き込み。怪しい人物探しだ!!」


そうダルクスは言って荷車を引き始めた。


新しい街。そこで巻き起こった殺人事件。

今回はミステリーの香り…?


そしてこの事件はリューセイにとって、重大な分岐点となる事を知る由もなかった。




続く…

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