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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第五章【魔王討伐(勇者より早く)編】
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第百七十五幕【豪遊!そして散財!時々、犬のフン】

ガウラベル達と別れ、ゴルドリーグの夜の繁華街を目的もなく進む熊猫辣(シオンマオラ)


カジノ街を抜けると次第に綺麗なドレスに身を包んだ女性や呼び込みをするキャッチ、フラフラと千鳥足の酔っぱらが多くなってくる。

どうやら飲み屋街に入ったようだった。


物珍しそうにキョロキョロと進んで行く熊猫辣(シオンマオラ)に呼び込みをしていた一人の顎髭を蓄えた男が気付いて近寄ってくる。


「おっとっと…お嬢ちゃん、どちらへ?」


「どちらって事も無いぞ。ただ初めて来た街を見学してるだけだ」


「ほうほう…」


男は顎髭を触りながら熊猫辣(シオンマオラ)を舐めるように眺める。しばらくして…男は口を開く。


「…うん!良いッ!!良いよキミ!!!」


「何の事だ?」


「キミのような人材を私は探してたんだ!!頼むよキミ、少し私の頼みを聞いてくれ!!」


そう言って男は手を握ってくる。


「…いや、僕で役に立てる事なんて…」


「なぁに、ちょっと店の手伝いをして貰いたいだけなんだ!」


「クエストか?クエストとなら勇者を通してだな…」


「そんなものどうでも良いよ!とにかく、そこのお店に付いて来てよ!」


そう言って男に背中を押される形で、熊猫辣(シオンマオラ)を自分の店へと誘おうとする。

その店の外観を見る限りちょっと大人の雰囲気のオシャレなバーといった感じだ。店先の看板には"未成年の来店はお断り"と書かれている。


「ま、待て!僕はまだ16さ…」


「あーーー!!あーーー!!聞いてない聞いてないよ!!私はまだ年齢は聞いていない!!ほらほら、報酬は弾むからさぁ!」


男はそう言いながら、半ば強引に熊猫辣(シオンマオラ)を店の中に連れ込むのだった…


ーーーーー


王都・ヤオヤラグーンが経営する国営のカジノ。

そこにやってきたガウラベルとクサカベ。


「遊ぶにはまず、カジノ用のコインを買わなきゃね!」


そう言ってカウンターに向かうガウラベル。


「大人の遊び場・国営カジノ【リオ・グランデ】へようこそ!!こちらはコイン引換………ッ!!」


カウンターの男はガウラベルに気付くと目を見開き口を引き攣らせる。


「ガッ…!!ガウラベルッ…!!!」


「よぉ〜!サカマタ〜元気にしてた〜?」


ガウラベルはニコニコとカウンターに肘をつく。


「元気な訳ねぇだろッ!!お前のせいで未だに腰痛の通院してるわ!!」


(あの人もガウラ姐さんの"元カレ"なのか…)


クサカベは苦笑気味に後ろから眺めている。


「ね〜サカマタ?ものは相談なんだけど…今日はここのカジノで一晩遊びたいなと思ってて〜…」


「買えよ!!だったら!!」


「だってぇ〜…アンタとアタイの持ちつ持たれつの関係じゃないか〜?」


「どこがだよッ!!こっちが持ってもお前に持たれた事なんて…」


バン!


カウンターに片足を思い切り乗せ、ガウラベルはニコニコと口を開く。


「そういやアンタの腰痛、もう一回蹴り上げたら治るかもしれないよ?」


「こ、こ、こ、この野郎…」


サカマタは震える手で、カジノのコインが詰まった袋をガウラベルに手渡す。


「持ってけ泥棒!!ほんとに泥棒ッ!!」


「センキュ〜サカマタ♪」


ホクホク顔でクサカベの元に戻って来るガウラベル。

クサカベは顔を赤くして恥ずかしそうにしている。


「もう…やり方が(やから)ですよ…ガウラ姐さん…」


「当時、右も左も分からない幼気(いたいけ)な少女がこの街で生きて行く為に身に付けた方法さ!」


「いたいけ…」


「ほら!遊ぶよクサカベ!!今だけは旅の事はパーッと忘れて思う存分遊ぼう!!」


そしてクサカベはガウラベルに遊び方を教わりながら…ルーレット…スロット…ブラックジャックにポーカー…あらゆるゲームを遊んでいく。


「これにはね、必勝法があるんだよ!見てな!」


ガウラベルに言われるがまま、最初は困惑しながらルールを覚えるのがやっとであったクサカベも…次第にゲームの面白さに気付き始める。


そして、カジノ巡りは夜明けまで続き……………


二人の持ちコインは……………ゼロッ!!!

散財に次ぐ散財ッーーーーー!!!


ヒュ〜〜〜〜〜………


肌寒い風が吹く中、呆然とカジノの前で立ち尽くすガウラベルと装備を引っ剥がされシャツとパンツだけのクサカベ。


「……………ギャンブルってのは辞め時が肝心なんだよ。それを見誤るからこういう羽目になるんだ…」


ガウラベルがボソッと呟く。


「良く言いますね…。『ここで張らないと男が廃るよ!』とか『今ツキが回ってきてるから!』とか言って止めようとした僕を引き止めたのガウラ姐さんじゃないですか…」


クサカベがジト目でガウラベルを見る。

ガウラベルは口笛を吹きながらそっぽを向いた。


「ハァ…途中までは順調にコインを増やせてたのに………」


「ビギナーズラックってヤツだね!いやぁ、ほんとにあるんだね〜」


「僕達、旅の疲れを発散する為に…あまつさえ、貴重なアイテムや装備を引き換える為に遊んでたんですよね!?ドッと疲れたし…有り金も身包みも全部剥がされて…風邪引きそうなんですが!?」


「お、男がギャンブルで負けたくらいでウジウジするんじゃないよ!」


ガウラベルが言うとクサカベが食い気味に口を開く。


「ガウラ姐さんが負けた分のシワ寄せまで僕が被ってるんですよ!?そんな事言うならガウラ姐さんの装備を…」


「アタイに脱げって言うの!?」


ガウラベルはバッと自分を抱いてクサカベにガラにもなく憂いげな表情を見せる。


「ハァ………もう良いですよ………とにかく、このままじゃ僕、風邪引いちゃいます!」


そう言ってクサカベはキョロキョロと辺りを見渡す。

近くにあったツボへ駆け寄り、手を突っ込んで物色し始める。


「なにか…装備出来そうなアイテム…!!」


べちょ…


「………………べちょ?」


嫌な感触を感じたが恐る恐るクサカベがそれを持ち上げると…


「くわぁせふじこぉぉぉぉぉ!!!!!?????」


【クサカベは犬のフンを手に入れた!】


「オエッ…!!な、なんでツボの中に犬のフンがぁぁぁぁぁ!!??」


(ダルクス………負けたんだね………)


ヤレヤレと首を振るガウラベル。


「僕…下着姿で犬のフン手に付けて………馬鹿みたいじゃないですか…」


「馬鹿みたいだよほんと」


ガウラベルがなんと無しに言った事にギロリと睨むクサカベ。


「じょ、冗談だっての!………だからツボや樽は割って確かめた方が良いって言ってるのに」


「犬のフンなんか入ってるなんて思わないじゃないですか!!」


「犬のフンだってちゃんとしたアイテムなんだよ!?錬金や調合の素材になったり…畑の肥料になったり…まぁ…アタイらは錬金も調合も畑仕事もしないから関係ないけど。1Gで売るぐらしか使い道がない」


「じゃあダメじゃんッ!!!!!」


ガクッと項垂れるクサカベ。

そんな時、ジャランジャランと音をたてて誰かが近付いてくる。


「ガウラちゃ〜ん!クサカベく〜………ん!?どうしたのその格好?」


それはパンパンに何かが詰まった小さな麻袋を持ったアンカーベルトだった。


「アンカーベルトか。………どうしたのその荷物………」


「え〜とね、賞金」


「賞金!?」


「アハハ、近くの闘技場で魔物同士を戦わせてどっちが勝つか当てるっていう賭け事があってね。それがもう、魔物使いの僕からすると、どっちが勝つかなんて魔物の表情、コンディション、毛並みのツヤや質感を見ると手に取る様に分かってさぁ!」


「す、凄いじゃないか!!……………で、それっぽっちしか稼がなかったの!?」


「出禁になっちゃった…」


「出禁!?」


「当て過ぎだって言われて、これっぽっち貰って追い出されちゃった」


ジャラリ…と麻袋を前に出して見せる。

ガクッと肩を落とすガウラベル。


「馬鹿………。そういうのはバレないようにたまには負けたりして調整するもんだよ………!」


「あはは、次はそうするよ」


そんなアンカーベルトに近くにあった蛇口の流水で軽く手を洗ったクサカベが近寄る。


「アンカーベルトさんなら、そうやって賭け事で戦わせてる魔物が可哀想だって言って、問題起こしそうなもんですけどね」


「アッハハ!違いないね!」


クサカベが言った事にガウラベルが吹き出して笑う。


「いやいや、それは大丈夫。参加してる魔物達、楽しそうにしてたから。好きでバトルを楽しんでいる闘争心に燃えた子たちだったよ」


「ま、ここで問題起こして目立たれたら困るからね!………アンカーベルト。その賞金でクサカベに装備買い直してやってよ………」


「良いよ!それくらいのお金はあるだろうし!」


「スミマセン…アンカーベルトさん…」


「これに懲りたらもう…ギャンブルに手を出すんじゃないよ!」


ガウラベルがポン!とクサカベの肩に手を乗せる。


「いや、ギャンブルの啓発っぽくするのヤメて下さい!ガウラ姐さんにそそのかされたんですから!」




続く…

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