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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第四章【衝突、すれ違い、解放戦線…編】
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第百七十幕【デスティネーション】

バゴーーーン!!!


ドゴーーーン!!!!!


大聖堂から鳴り響く轟音。


フラップジャックとコンペキの戦闘が激化していた。


「ちょこまかと…逃げてばかりじゃ僕は倒せないよ…ッ!!」


コンペキが腕を降ると無数の剣が出現しジャックに向かい飛んでいく。

天井に張り付きながら、飛んできた剣を避けつつ…タコ足で掴んで投げ返すジャック。


投げ返された剣を指を鳴らして消すコンペキ。

その表情には少し焦りが見えた。


(そもそも…本来、地下牢でスコピールを人質にした状態でクレナイと力を合わせて殺す予定だった…そうでもしないと倒せる勝ち筋が無いと言われた女だ…僕一人じゃこの硬直状態からは抜け出せない…。クレナイめ…ほんと君は"出来そこない"だったよ…)


ジャックの方も、表情は変わらないが内心焦りが出ていた。


(……………クレナイと同じなら……………この男にも……………弱点があるはず……………でも……………それを探している体力も……………皆を待たせるし……………時間も余り無い……………)


シュシュシュッ!!


死角から急に飛んでくる剣。

ジャックは咄嗟に天井を蹴って離れ、近くの大柱にタコ足でしがみつく。

コンペキは彼女を休ませないよう、そこに向けて更に剣を飛ばす。


大柱を蹴ってその場を離れるジャック。

蹴った大柱はベキッ!と凹む。


飛んで追いかけて来る剣は、ジャックが避けるとそのまま壁や床に突き刺さるも、直ぐに抜けてクルリと切っ先をジャックに向けてしつこく追いかける。


(隙を見て……………ブラック達と……………合流……………)


攻撃を避けきりながら大聖堂から脱出する隙を伺うジャック。


ーーーーー


(やれやれ…流石に、指示を出さずに任せてしまうとこの有り様………所詮は私が創り出した人形に過ぎない…ですか)


ブラックが半分吹き飛ばした大聖堂の外…雷鳴が轟く雨の中に佇むクルブシの姿。


外からも見えるコンペキとフラップジャックの熾烈な争い。クルブシはそこに近付いていく。


(やれやれ…流石に、私の類稀なる"勘の良さ"までは…人形には宿す事は出来ないか)


先程まで外に配置されシュヴァルツで応戦していたがブラックによって倒された信者の亡骸のまえで立ち止まるクルブシ。


カチャリ…


その亡骸が手に持っていたシュヴァルツを手に取る。


(コンペキさん…"キッカケ"を作ってあげますよ。…それでダメなら…貴方も"出来そこない"だ)


クルブシは外からシュヴァルツを構えた。

ただ腕を伸ばし、微笑みだけを浮かべた表情は狙うものを捉えず明後日の方向を見ている。


パンッ!パンッ!パンッ!


何も見ずに適当な方向に3発発砲するクルブシ。


バチュ!バチュ!バチュ!


「……………ッ!!!」


それは大聖堂内でコンペキの攻撃を縦横無尽に避けきっていたジャックにまるで移動先を全て完璧に予測していかの様にお腹、胸、肩に3発とも命中。


ドタッ!


最後、天井から張り付いていたジャックは床に落ちた。

そこに目掛けてさっきまで追い掛けて来ていた無数の切っ先が方向転換してジャックを貫こうと…


しかし、ジャックは直ぐに身体を翻し飛んできた剣をタコ足で絡め取りコンペキに向けて投げ飛ばす。


カカカッ!


直ぐに飛び退きその場から離れるコンペキ。

さっき自分が居た場所に剣が無数に突き刺さる。


(今のは…!?)


コンペキは一瞬だけ、シュヴァルツの弾が飛んできた方向を見る。そこには既にクルブシの姿は無かった。


(クルブシさん………。クソ………手をわずらわせてしまったみたいだね…ハハ…後でお説教かな?)


腹を抑えながらジャックはフラつき立ち上がる。


「……………」


抑える腕から黒ぐろとした炭のように真っ黒な血が床にポタポタと落ちている。


「さぁ、フラップジャック。もう終わりにしようじゃないか。そこまで手負いだと…もう僕には勝てないんじゃないか?」


コンペキが腕を広げてニコリと笑う。


「……………ッく……………」


ジャックは姿勢を屈め…コンペキに向かって飛んでいこうと体勢を取る。

コンペキもすかさず迎え討とうと剣を化現させる。


しかし、ジャックはそのままターンすると、大聖堂出口に向かって走っていく!


「…おっと」


コンペキは逃さまいと剣を構えその後を追い掛ける。


ブラック達が出て行った後、開いたままだった大聖堂の大扉をくぐる直前ジャックは近くにあった天井を支える大きな柱を引き倒していく。


バゴンッ!!!

メキメキメキ…グシャァ!!!


コンペキは大きな音に思わず天井を見上げる。


「…またかよ…!!」


すると、大聖堂の天井が目の前まで迫って来ており、そのまま天井の下敷きになる。


大聖堂は完全に崩れ、ジャックが出た後を追い掛けるように土埃が吹き上がる。

そこに見向きもせず…ジャックは古城の玄関ホールまで走っていった。


ーーーーー


バギュンバギュンバギュン!!


玄関ホールでは、ブラック、バッカルが次々に現れる信者達との攻防戦を繰り広げていた。


「コイツら…!!倒しても倒しても、ワラワラと湧いて来るなッ!!」


信者達の返り血、そして掠めていったシュヴァルツの弾による傷でボロボロになっているバッカル。

蔓状に伸びた腕を信者に巻き付けると、開いた後頭部の大きな口へと放り投げ…噛み砕いて別の信者に投げぶつける。


「無茶するなバッカル!!スコピール姫を救うことだけを考えるんだ!!」


バキュンバキュン!


背後にスコピールを匿いながらセンチュレイバーEXで次々と来る信者達を撃っていくブラック。


最後の一人の頭にセンチュレイバーEXを撃ち込み倒す。


「…よし、これで最後だ!」


「まだ来るハズだよ!!…ジャックちゃん早くしないと置いてっちゃうよ…!!」


タタタ…


また玄関ホールに向かい何者かが走ってくる足音。

その方向の廊下に警戒する。


「……………皆……………おまたせ……………」


廊下から飛び出してきたのはフラフラとおぼつかない様子のジャックだった。

構えていたセンチュレイバーEXを降ろすブラック。

ボロボロになったジャックの姿を見て、ブラックは声を詰まらせる。


「ジャックちゃん…!!大丈夫なの!?血が凄いよ!?」


「……………心配無い……………それよりも早く……………」


ジャックが言いかけた所でそれぞれ伸びる複数の廊下奥から大勢が向かってくる足音がする。


「…また来たぞ…」


スコピールがポソッと呟く。


「……………」


「ブラック?大丈夫か?」


言葉を詰まらせていたブラックにバッカルが話し掛ける。


「あ………あぁ…急いで脱出しよう…」


ジャックの様子を見てから何かを考えるように明らかに態度がおかしいブラックを不審に思いながらもバッカル、ジャック、スコピールは玄関ホールの外へと出て行く。


外は雨が振り雷がなっている。

その雷鳴の光で暗闇が照らされやっと見える程度。


「ドーラちゃんに報告して…戦力を整えて…今度こそコイツらは皆殺しだ…!!」


バッカルはそう声を上げながら古城前の階段を降りる。

そしてふと、後ろを振り返る。


「ブラック…!?何やってるんだよ!!」


ジャックとスコピールも振り返る。


ブラックは玄関の開いた大扉前で立ち止まっていた。


「………ここは私に任せろ………!!私も含め…全員フラフラだ。誰かが残って囮になる必要がある!!」


「何言ってるんだよ!!だからこそ早く逃げないと!!ブラック、フラフラなお前一人で時間稼ぎにもならないだろ!!」


バッカルが声を上げる。


「フフ………ヒーローはどんな窮地でも決して諦めないのだ!!………バッカルよ。強くなれ。そして、正義のヒーローとなって…世界の子供達を守るんだぞ!!お前に…俺の意思を預けるからな!!」


「それはお前の仕事だろ!!ほら、早くしないと奴らが…!!」


「楽しかったぞ。記憶を無くした私だったが…それからの思い出はそれはそれは濃厚なものだった。…ありがとう」


「ブラック…お前…!!」


バッカルがブラックに駆け寄ろうとするがジャックがそれを腕を伸ばして止める。


「ジャックちゃん…!!離してよッ…!!」


「ジャック…。悪いな、損な役回りをさせて…。必ず生き延びてくれ…!!」


ブラックはニヤリと微笑むと古城の中へ入り大扉を閉めてしまう。


バタン!


「ブラック!!ダメだよ!!ブラックーーー!!!」


ジャックは暴れるバッカルを強引に引き摺り古城を離れる。


ーーーーー


「バッカル………。お前は強くなれる………。私の意思を………引き継いでくれよ………」


カチャカチャカチャ!!


玄関ホールに既に集まった信者達が一斉にブラックにシュヴァルツを向ける。


「さぁ、最後に大きな花火を打ち上げてやる!!ハァァァァァッッッ!!!」


ブラックは腰のベルトのバックルに力を込める。


キュイィィィィィィンとバックルは高速で回り始める。


「アルティメットォォォォォスーパーミラクルハイテンションブラックデスティネーショォォォォォン!!!!!」


バババババン!!!


一斉に発砲されるシュヴァルツ。

しかし、弾はブラックに到達する前に空中でゆっくりになりそのまま静止する。


キュイィィィィィィン!!!


更に更に、高速で回転するバックルはバチバチ!と電気を帯びていき…


「ウワッハッハッハッハッ!!!」


高笑いし仁王立ちするブラックを中心に…


キュイン…

チュドオオオオオォォォォォーーーーーン!!!!!


古城諸共吹き飛ばしたのだった。


ーーーーー


その爆発で全てを察する。


「ブラック!!ブラックーーーーー!!!そんな、そんな、嫌だ!!!」


「……………バッカル……………」


腕の中で暴れるバッカルに、ジャックは胸を締め付けられる想いだ。


「うぅ、戻らないと…!!ブラックを助けないと…!!ヒグッ…!」


泣きながらジタバタとジャックから抜け出そうとするバッカル。しかし、その前にスコピールが立ちバチン!と頬に平手打ちをする。


「あやつがそれを望むと思うのかッ!!聞いておらんかったのか!!お主に強くなれと、想いを託すと言っておったのだぞ!!今のお前を…あやつに見せられるのか!!」


「………クッ………!!」


「このチャンスを無駄にするでないバッカルよ!あやつが…命を賭して作ってくれたチャンスを!!」


「………うぅ………」


スコピールに言われ、大人しくなるバッカル。

涙を袖で拭きながら顔を伏せている。


「……………行こう……………」


バッカルを腕から降ろし、手を差し出すジャック。


「グスッ…分かったよ………ズズッ…」


その手を取り、魔王軍野営地へと…走る。


バシャバシャバシャ…

雨でグズグズになった足元を踏みしめながら…




続く…

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