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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第四章【衝突、すれ違い、解放戦線…編】
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第百六十九幕【ヒーローは死なない】

ブラックがクレナイと戦っているであろう大聖堂に向かうフラップジャック達。


大聖堂への扉をジャックが頭のタコ足で押し開ける。その直後!


「ぐあぁぁぁ!!!」


そんな声と共にジャックの目の前にブラックが転がってくる。


「ブラック!!………ボロボロじゃないかッ!!」


バッカルが思わず声を上げる。

ブラックは生きていた。

しかし、激戦を繰り広げたのか黒いヒーロスーツもマントもボロボロで頭に被ったヒーローヘルメットも半分が欠けて素顔が見えてしまっている。

人間の男の顔だ。


ブラックはよろめきながら立ち上がるも直ぐに胸を抑えながら膝をついてしまう。


「クッ…!!見るな…バッカル…!!………子供は…ヒーローの素の姿を見るべきでは無いッ…!!」


「言ってる場合かよ!!」


そんなブラックの前にジャックが出る。

おぶっていたスコピールを降ろし皆に下がるよう促す。


「……………後は任せて……………」


「いや、しかしッ!!」


「……………ブラック、いいからスコピール達を見てて……………」


表情の変わらないジャックだがブラックは威圧を感じコクリと頷き大聖堂の隅に下がる。


クレナイを見やるジャック。

クレナイは少し戸惑った表情を見せている。


「………チッ………。早くコンペキと合流して………本来はテメェを地下牢で既にぶっ殺してた算段だったんだがなぁ…あの仮面男がここまでタフだとは思わなかったぜ………」


「……………」


「………良いさ。テメェらまとめてここでぶっ殺してやるッ!!」


ドドドドゴォッ!!!!!


ジャックに向かってマグマを噴き出す火柱が床を貫きながら近付いていく。


ジャックは咄嗟に上空に飛び上がり、天井にタコ足を付けて張り付く。

しかしそれを見切ったようにクレナイはそこに右手を伸ばし溶岩の火球を無数に飛ばす!


ドドドドドッ!!


しかしジャックも更にそれを読んでいたように直ぐ様その場から離れ、天井をタコ足を使って縦横無尽に動き回る。


「チッ…!!」


鬱陶しそうに舌打ちをするクレナイ。


ガシャン!


ジャックは天井から吊り下がった大きなシャンデリアに飛び乗る。

シャンデリアはその衝撃で大きく揺れる。

そこにすかさずクレナイの火球が飛んできて天井と繋がった根元の繋ぎ目が破壊される。


シャンデリアと共に落ちて来るジャック。

しかし、ジャックは空中でそのシャンデリアをタコ足で掴んで丸ごとクレナイに向かって振り下ろした!


「…ッ!!!」


ガシャーーーーーン!!!!!


飛び散るガラス片。

大聖堂に轟く地響き!


クレナイは寸でのところで身体をドロリと溶岩のように溶かし、シャンデリアが叩き付けられた場所から離れた場所で再生する。


しかし再生した直後、四肢を直ぐ様ジャックの頭から伸びたタコ足がそれぞれ四本巻き付き拘束する。


「離せぇぇぇぇぇッッッ!!!!!」


ボォッ!!!


身体を発火させるクレナイ。


ジューーーーー!!


巻き付いたタコ足から白い蒸気が立ち上る。

しかしジャックはそのまま自分の身体を一瞬引くと、そのまま…まるでスリングショット (パチンコ)の様にクレナイに向かって身体を発射し、クレナイの顔面に勢い良くドロップキックをぶちかました!


「グッッッ!!!」


そのままジャックと共に放物線を描き…地面にそのまま仰向けに叩き付けられるクレナイ。

その上にジャックは馬乗りになり顔面にタコ足で猛打を浴びせる。


バゴンバゴンバゴンッ!!


タコ足で殴る度にそこを中心に床がめり込んでいく。


「ぶっ…!がっ…!」


何かを喋ろうとするクレナイに容赦なく攻撃を叩き込むジャック。


そんなジャックをブラック、バッカル、スコピールはただただ見ている事しか出来ない。


「………ジャックちゃん………ほんとに凄いよ………」


バッカルが圧倒されながらポソリと呟く。


「あぁ。俺達が束になっても彼女には太刀打ち出来ないだろう…本当に強い娘だ。センチュレイドーラ様の為なら…例え火の中水の中…まさに体現しているではないか…」


「しかし無駄じゃ。いくら攻撃を浴びせても…あ奴は魔力で動かされたただの人形。急所を突かない限り倒す事は出来ぬ」


そんなスコピールの言葉にブラック、バッカルは振り向く。


「…アイツが人間じゃないって分かるの?」


「当然じゃ。妾が使う身代りの術と似た方法であ奴は動かされておる。………あの身体の何処かに…あの身体を形成する為の魔力の元となる依り代が埋まっとるハズなんじゃ。そこを見極めなければ…」


「しかし、奴は木っ端微塵にしてもそこから再生していたぞ…?」


「………木っ端微塵………」


スコピールはそれを聞き少し考え込み…

ハッと顔を上げブラックに目を向ける。


「あ奴が再生する姿を見ていたのか!?」


「あぁ…そうだ」


「木っ端微塵になり…奴は何処から再生を始めていた!?」


ブラックはそう聞かれ思い出そうとする。


バラバラになったクレナイの身体。


その"一部"を残し他は溶けてしまった。


残った一部はブクブクと断面を泡立たせ再生を始める。


そこから身体が徐々に出来上がって…


「……………そうかッ!!」


ブラックは立ち上がりジャックに向かって声を上げる。


「フラップジャックよ!!!奴は"右太腿"から再生を始めていた…。右太腿だ!!!そこが急所だっ!!!」


ジャックはそれを聞いて直ぐに飛び退き、タコ足をクレナイの右太腿に巻き付ける。


「………なっ…!!!ま、待て!!!」


ズボッ!!!


右太腿を締め付け引き千切らんと大きく引っ張ると、中から"木で出来た小さい人形"が出て来た。

ジャックは直ぐ様それを地面に叩き付ける。


バキンッ!


木の人形を破壊した途端、クレナイはドロリと身体を保てなくなったように溶岩となって溶けて広がっていく。


「……………勝った……………ありがとう……………ブラック……………」


「ジャックちゃん!!流石だよッ!!」


「いや、お手柄なのはスコピール。君だ。ありがとう」


ブラックがスコピールに向かい頭を下げる。


「………わ、妾は別に………お主らを助けるつもりで………」


ザクザクザクッ!!!


そんな音が響く。

ブラックの身体に無数に貫き刺さる"青白く揺らく剣"。


「こ…これ………は………ッ………ブフッ…」


血を吐くブラック。


ザシュッ!


剣は引き抜かれそのまま空中で煙の様に消えていく。


バタッ


ブラックはうつ伏せに倒れる。

その後ろにはコンペキが立っていた。


「ブラック!!!」


バッカルが叫び、直ぐ様コンペキを睨み付ける。


「………お前ぇぇぇ!!!」


バッカルが頭の口をグパァッと開きコンペキに飛び掛かろうとしたその時!


パン!


乾いた破裂音が鳴り、バッカルの足元に小さな銃痕と煙が上がる。


「おっと、やめた方が良いね。ほら」


バッカルにシュヴァルツを向けたまま、コンペキは周りを見ろとジェスチャーする。


カチャカチャッ!


エクスベンゾラムの信者達が大聖堂入口から、窓から、崩れた壁から、大勢が一斉に銃口を向けている。


「余計な動きをすれば…誰に弾が当たるか分からないよ」


「クソ野郎………!!!」


ピキピキ…とバッカルの顔に血管が浮き出ていく。倒れたブラックにチラッと視線を送る。

床に徐々に血が広がっていく。


「ブラック………ッ!!!」


バッカルは歯をギリ…と噛み締める。


ドンッ!!!


そんな音が響いたかと思うと、上空に高くジャンプしたジャックがコンペキに向かって頭のタコ足を大きく振りかぶり落ちて行く。

着地の間際、タコ足を振り降ろし叩き付けるもコンペキは咄嗟に避ける。


ババババババン!!!


それを皮切りにジャックに向かって一斉にシュヴァルツが発砲される!

しかし、ジャックは頭のタコ足を振り回して飛んでくる銃弾を次々に受け止めていく。


バチュバチュバチュバチュ!!


身体に残るように威力を敢えて下げられたシュヴァルツの弾はその足に全て飲み込まれていく。


コンペキに大しても執拗に叩き潰そうとタコ足が迫るが、コンペキはそれを次々に剣で斬り伏せていく。

切られたそばから再生しながら伸びるタコ足。


ジャックが全ての攻撃を請け負っているのを確認して、バッカルはブラックに駆け寄り屈んだ。


「おい!!ブラック………!!まさかあんなので死んだなんて言わないよなっ!?………ヒーローが子供を守らないで死ぬなんて………ヒーローとしてお笑い草だぞ!!」


柄にもなく、バッカルの目は潤み今にも涙が零れ落ちそうになる。

スコピールも近くでどうしたら良いか分からないといった表情で立ち尽くしている。


ジャックの攻撃を執拗に受けていながらもコンペキはバッカル達を見やる。


「…ッ!!」


ブラックの元に集まっているバッカルとスコピールを見て、蘇生を施しているのだと思いそちらに手を向ける。


「させないよッ!!」


シュシュシュッ!!


発現した3本の青白い剣がバッカル達に向かって放たれる!


「ダメッ……………!!」


ジャックが向かおうとするも、コンペキはジャックにも剣を3本解き放つ。

ジャックはその場から飛び退くも、剣は方向転換してジャックをしつこく追いかける。

更には信者達のシュヴァルツによる銃弾の雨。ジャックは回避と防御で精一杯でバッカル達に近付けないでいた。


「………どけッ………!!!」


そう言われ、バッカルはドンッと押される。


バギュンバギュンバギュン!!


カキンカキンカキンッ!


飛んできた剣が撃ち落とされた。

顔を上げ腕を伸ばしセンチュレイバーEXを発砲したブラックによるものだ。


「ブラック…!!!」


バッカルの顔が驚きと安堵の入り混じった顔になる。


「………私はランドルトブラック………!!子供達を守り抜くまでは………死にはせんぞッ!!!」


よろめきながらゆっくりと立ち上がり…

センチュレイバーEXでブラックも応戦する!


バギュンバギュンバギュン!


信者達を狙い一人一人、数を減らしていく!


「ブラック……………!!……………良かった…………」


その一連を確認し、ジャックも安堵する。


「まだ安心するのは早いよッ!!!」


コンペキは更にジャックを狙う剣を増やす。

シュヴァルツの雨はブラックのお陰で止まった。

後はコンペキにだけ専念すれば良い。


しつこく追いかけてくる剣を壁へ、天井へと縦横無尽に避けきってみせるジャック。


「周りの蠅達は黙らせたぞッ!!フラップジャックよ!!お前も隙を見て…」


ブラックがそう声を掛ける。


「……………分かった……………!」


天井に張り付きながらそう言って頷くジャック。

ブラックもそれに頷き返しスコピールとバッカルの手を引く。


「な、なんだよブラック!!」


「ここから出るんだ!!ジャックも直ぐに追い付く!!」


そう言って3人は大聖堂を出て行くのだった。


「……………さぁ……………二人きりだよ……………」


「粘ってくれるねッ!!俄然楽しくなってきたよッ!!」




…続く。

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