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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第四章【衝突、すれ違い、解放戦線…編】
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第百五十二幕【サラアラウス王家と鳥籠の塔】

【独立国家サラアラウス】


「上陸出来ちまった…」


そう呟いて桟橋にポツンと立ち尽くすダルクス。


「世界を股にかけたダルさんでも、この国は初めてなんですか?」


リューセイが後ろから声をかける。


「あぁ…俺でも初めてだ…だが何故だ?あれだけ誰も寄せ付けないと一点張りだったサラアラウスが海賊を入港させちまうなんて…」


「う〜ん、てゆうかそもそも…」


リューセイは頭を掻きながら辺りを見渡す。

暫くキョロキョロした後ダルクスに振り向き口を開く。


「酷く荒れてないすか?桟橋もガタガタ…壁もヒビや穴ぼこだらけで…てか、国の人の出迎えも無いですし、ほんとにここ人が居るんですか?」


そんな疑問を投げ掛けていると、トリンコマリー号からトリンコロックも降りて来た。


「ね?大丈夫だったでしょ?…でも残念だったね。エンドラーズもアンタ達の船も、ここには来てないみたいだね。停まってる船を見る限り」


「それより、これはどういう事だよ?なんでこんな荒れ放題になってんだ?」


ダルクスがトリンコロックに問い掛ける。

トリンコロックはフフンと微笑むと…


「この国はね…とっくの昔に滅びてるのさ…」


そう言って歩みを進める。


「滅びた!?」


ダルクスはギョッと目を丸くしながらその後を追う。


「今やこの国はかつての繁栄の面影は無い…世界中から行き場を無くしたゴロツキやお尋ね者が集まる無法国家なのさ」


「ハァ!?…全然知らなかった…いつの間にそんな事に…」


「知らなくても無理もないだろうね。独立国家だったから、入出国は一切してなかったし。こんなコトになってるなんて外は知る由もなかったでしょうね」


「じゃあお前はなんでそんな事知ってるんだ?」


「……………」


トリンコロックは何も言わず、とある建物の前で歩みを止め、リューセイとダルクスに振り返る。


「無法国家サラアラウス(いち)の酒場だよ!取り敢えず立ち話もなんだし、飲みながら話そうじゃないか」


そう言ってトリンコロックはボロボロの酒場に入っていった。リューセイとダルクスは顔を見合わせ…その後に付いていく。


中は、外の荒廃した雰囲気とは打って変わり、多くの荒くれ者共で賑わっていた。


「おおう!!トリコ船長じゃねぇか!!今日もべっぴんさんだねぇ!!」


「引き連れてる男はなんだぁ?新しい獲物かぁ?」


「トリコ船長〜!一緒にコッチで飲もうぜ〜!!」


トリンコロックは話しかけてくる男達に軽く手を上げながらバーカウンターでグラスを拭くマスターに話し掛けた。


「ねぇ、今日はエンドラーズの連中は来た?」


「いや?今日はまだ来てないなぁ…って、おいおいトリコちゃん。この前みたいにこの店で争うのだけは勘弁してくれよ…後片付けが大変だったんだから…」


「だってアイツらから喧嘩を吹っ掛けてくるから…」


「取り敢えず、ここで待ってれば遅かれ早かれエンドラーズの連中も飲みに来るだろ」


そう言われ、トリンコロックは頷くと近くの空いていたテーブル席に腰掛けた。


「あ、それとマスター!いつものね!3人分!」


「はいよ!」


カウンターにそう注文してトリンコロックはリューセイとダルクスに振り返る。


「何してるの?座りなよ」


戸惑いつつも、リューセイとダルクスは大人しく椅子に腰掛けた。


暫くしてすぐ、ドでかい樽のジョッキに入ったビールとお通しの料理がテーブルに置かれる。

トリンコロックは樽ジョッキをグイッと傾け一気にビールを流し込む。

手を付けない二人を見て、トリンコロックはジョッキを置いた。


「どうしたの?飲まないの?」


促されてダルクスはフッと一息付いてビールを飲み始める。


「いや…俺未成年だし!まだ酒飲めないから遠慮しとく」


「そんなのちゃんと気にするんだ?」


首を傾げて珍しそうに言うトリンコロック。


「なぁ、そろそろ…アンタは何者なのか…ここで何があったか教えてくれないか?」


ダルクスに言われ、トリンコロックは一口クイッとビールを飲むとテーブルに置き、ダルクスとリューセイに向き直る。


「この国はとある王族が治めてたの。完全鎖国状態で繁栄出来てたのはその王族の力に寄るものだった。ただ、ある日を境に王族はその力を失ってしまう。力の源だったこの国の姫が失踪してからね…」


「姫が失踪…」


ダルクスは言ってビールを一口飲む。

リューセイはお通しの枝豆をパクパクつまみながら黙って聞いている。


「それから徐々に王族は力を失い衰退していって…そんな王族に業を煮やした国民達の反乱もあってこの国は完全に崩壊した。人々は路頭に迷う事になった。そこで立ち上がったのが【ベイルランド】って男が新結成した【エンドラーズ】なんだ」


「なんでそこで海賊が出てくるんだ!?」


「この国は永きに渡り鎖国状態。情勢がどうなってるかなんて外は誰も知らない。そこを逆手に取ったんだ。ベイルランドは自分達が海賊になり…世界中のならず者やお尋ね者を引き入れて交流し【ゴロツキの秘密の楽園】とする事で国を乗っ取った」


「外の国は鎖国状態で近付く者は否応なく攻撃されると思ってるから容易に近付けない…ゴロツキ共に取っては最高の隠れ家って訳か」


「そういうコト。露頭に迷った国民達を引き入れて大きな海賊団を結成した。まぁ奴ら、女は海賊には向かないって引き入れてくれなかったから、それに反抗してウチらは女だけの海賊団を…」


「ちょっと待て!!じゃあエンドラーズもひまわり団も元はこの国の住人だったってのか!?」


「そ。海賊になるしか無かった。今まで鎖国状態だったウチらを引き受けてくれる国なんてどこにも無かったし…」


「納得…」


ダルクスは椅子に深くもたれ掛かり、ビールを飲む。


そして、暫くした後続けて口を開く。


「…前の仲間にな…"ガウラベル"って女が居た。そいつはここサラアラウスが出身だったんだが…まぁ鎖国状態で外の世界に出られない状態に嫌気が差して、両親とその他自由を求める仲間達と15歳の時にこの国の脱国を図った。兵士達に賄賂を渡したりして監視を緩めた中、真夜中に船で脱出を図ったんだが…結局は海上の門を抜けた所で兵士に裏切られたか、賄賂を受け取ってない兵士達に見つかったのか、船は砲撃に合い沈められ…ガウラベルだけが奇跡的に海岸に流れ着いて助かったんだ。両親含め、他の仲間は助からなかったらしい」


「あの、ガウラベルさんにそんな過去が…」


リューセイが驚く表情を見せる。


「ガウラベルが15の時…つまり今から13年前か。その時はまだこの国は崩壊して無かったんただよな?」


「そうだね。この国が崩壊したのが…5年前の事だもん」


「割と最近か…じゃあガウラベルは知らない訳だ…」


ダルクスは顎に手を当てながらボソリと呟く。

リューセイがそこで口を開く。


「それにしても、姫が居なくなっちゃっただけで国が崩壊するなんて…そもそもギリギリだったんじゃないの?」


「気になる?このサラアラウスがどんな力でこの国だけで繁栄してたか」


トリンコロックがニヤリと笑みを浮かべ言った。

リューセイはコクコクと頷く。


「んじゃ、ちょっと外に出ようか。サラアラウスの案内がてら、面白いものを見せてやるよ」


ーーーーー


荒廃し崩れた建物ばかりの城下町…整備されず草が生い茂った大通りを進んで行く。


「見てみな。あれがサラアラウス王家が住んでいた城」


トリンコロックが指を指す先には小国のお城といった具合の小さなお城がある。


「ま、中はとっくに荒らされて何も無いけどね。見所はその隣に一際高く作られた塔…」


そこを指差すトリンコロック。

リューセイ達はそちらに目をやるとその異様な光景に目を瞬かせた。


塔の上部が巨大な鉄柵で囲われており…まるで"鳥籠が乗っかっている"ような見た目だった。


「あそこが姫様の部屋だったんだ」


「あんな所が!?まるで牢屋じゃないか…」


リューセイは声を上げる。

トリンコロックはその後に続いた。


「それには意味があるんだよ。………サラアラウスの王家はね代々、娘や息子にある特殊体質が受け継がれて来たんだ。"不幸を寄せ付ける"って呪われた体質がね」


「不幸を…寄せ付ける…」


リューセイが呟く。

トリンコロックはコクリと頷き更に続けた。


「その体質を受け継いだ姫は直ぐにあの塔に閉じ込められた。じゃないと近くに居る者まで不幸に巻き込まれちまう」


「だからあんな高い所に…」


「それだけじゃないよ。姫さんが目立つ場所に監禁されたおかげで"不幸"は一手に姫様に集まる。その下に住む者に降り掛かる事がなく平和に暮らせる。そんな考えでね。実際そのおかげか、鎖国状態で何処の国とも交流をせずに繁栄出来てたんだ。飛んできた渡り鳥が様々な農作物の種を落としてくれたし、天気に恵まれるから農作物もよく育つ。漁獲も一定して良く捕れて船は嵐に見舞われる事も無かった。こんな海のど真ん中にある小さな島国がだよ?」


「それにしたってあんな所に閉じ込めるなんて…」


「それがこのサラアラウスに代々受け継がれてきた習わしであり決まりなんだよ。あの鳥籠だって、外的不幸から一応姫様を守る為の物で…」


「…で、その姫さんが居なくなっちまった。どーやってあんな所から消えちまうんだよ?」


ダルクスが聞くもトリンコロックは手を広げ「さぁ?」とジェスチャーする。


「ま、分かる事は姫様が居なくなってから今まで上手く行き過ぎてたのが嘘みたいにこの国は没落していったって事さ」


「ふ〜〜〜ん…それにしても…"不幸を寄せ付ける"なんて、うちのリーサと似てますね!」


リューセイがふとそう言うと、トリンコロックは目を丸くして驚いた風に目を向ける。


「なんでアンタ…その名前を…!?」


「…え?」


「居なくなった姫様の名前…【アイリア・サラアラウス・アドリーサ】…【リーサ姫】の名前を…!」


リューセイとダルクスはポカンと口を開ける。


「「いやいやまさか…!アハハ」」


二人はお互い笑い合い肩を叩き合う。


「ちょっと来てみなよ」


トリンコロックは言って城に向かう。


とある崩れた城の壁まで近付くと、その崩れた壁を指差すトリンコロック。


「崩れた壁から城内が見えるだろ?そこに掛かってる絵画を見てみなよ」


言われた通りその絵画に目を向ける。

サラアラウスの王族の一人だろうか、気品溢れる男の肖像画だ。


「だ、ダルさん!あの目…!!」


リューセイが声を上げる。

その肖像画の男の目はピンク色に白十字が入った瞳…。リーサの特徴的な瞳の模様と一致していた。


「あの瞳は王族の血筋である証拠だよ。じゃあ…アンタ達と一緒に居る"リーサ"って本当に…!」


トリンコロックは口を抑えて驚く。


「「うそーーーーーん!!?」」


それ以上にダルクスとリューセイも声を上げて驚くのだった。




続く…

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