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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百二十八幕【終結!アイドルコンテスト】

アイドルコンテスト会場の特設ステージから、大きな歓声が巻き起こっている。


〜♪


ステージではサヤカの演目が行われていた。

前回の優勝者は伊達ではなく、観客達の心を歌と踊りで完全に掴んでいた。


「流石だな…やっぱり、3日で稽古した程度のリーサとユーリルじゃ太刀打ち出来なかったんだ…」


舞台袖から眺めるリューセイはそう思い知らされる。


「みんなぁ!ありがとぉー!!」


プロの笑顔で観客に手を振った後、ステージ裏に戻って来るサヤカ。


「どう?アイドルの世界は甘くないでしょ?」


息を切らしながらニコッと笑うサヤカ。

思わずハートを射止められそうになるリューセイ。


「サヤカさぁん…うちのリーサに免じて…そのぉ…優勝賞品の船を頂くって事は〜…」


「リーサのおかげでチャンスを貰えた…。確かにそうだけど、悪いわね。ここはアイドルで勝負するところ。正々堂々、アイドル勝負で勝敗を決めましょうよ」


「だってもう絶対無理だもーん!うちのぽんぽこ女神はさっぱり使えなかったし!!」


そういうリューセイをユーリルはキッと睨み、リューセイの手の平に噛み付いた。


ガジッ!!


「ギャアアアアア!!!何すんだお前ッ!!!いった!!!痛いってェ!!!」


「それにまだ…私が優勝すると決まった訳じゃない…」


そう言ってサヤカは、ハグレに目をやる。

簡単に設置された机に突っ伏して寝ているハグレ。


「ハグレさん!次は貴女の番です!」


スタッフの声にやっとゆっくり頭を起こすハグレ。

フランクな…ボーイッシュな格好そのままで舞台に上がろうとする。


「ハグレ、衣装は!?そのままで出るの!?」


「問題ない」


あっけらかんとサヤカに一言そう言って…ハグレは舞台に出た。


おおよそアイドルとは思えない見た目で舞台に上がった彼女を見て、観客もザワついている。


三日前に急にやってきて…一度も練習する事無く本番に挑むハグレ。

舞台裏にも緊張が走る。


パチン!


…とハグレが指を鳴らすと、バックグラウンドからハイテンポでクールなミュージックがかかった。


〜♪


それに合わせて、ハグレは目にも止まらない速さで完璧なブレイクダンスを披露する。

そんな激しいダンスをしているにも関わらず、ハグレは一切息を切らせる事無く、変わらぬ口調で歌唱も難なくこなす。


「な、なんなのよ…アイツ…」


サヤカもそのパフォーマンスを目を丸くして見ている。額からは一筋の汗が流れる。


ワアアアアアァァァァァ!!!


観客の盛り上がりも最高潮に達する。


「アワワワ………もうダメだぁ………勝ち目ねぇよぉぉぉ…ハグレさんもプロ中のプロだったんだ………ッ!!」


リューセイは頭を抱えて悶えている。


「まだ分からないですって!結果発表を見るまでは…」


ユーリルは焦り顔ながらも…フンス!と見栄を張るが…


「お前の優勝はねぇよ!!パフォーマンスどうのじゃなく見えて無いんだよ誰にもっ!!!誰かサングラスかけた人物が居る事を願うんだなっ!!」


「もうっ!!そんな言い草ないじゃないですかっ!!!」


ガブッ!!

ユーリルは再びリューセイの手に噛み付く。


「いてぇぇぇ!!!噛むなっ!!!お前はピラニアか!!?」


リューセイの振り回す手に齧り付くユーリルだった。




〜〜〜〜〜




大通りに野次馬による人集りが出来ていた。

元シスターのウェイトレスが呼んだ衛兵がミクリに縄をかけて拘束する。


そんな最中、ミクリはリーサに振り向く。


「どうして私だと分かったの…?」


問いかけにリーサは答える。


「リストと…元アイドルだった方の話を照らし合わせて…もしやと思ったんです」


「元アイドルの方って…それ、私!私!」


ウェイトレスは自分を指して言った。

しかしリーサは気付かず話を続ける。


「最初に集まったメンバー内で最初に罠を仕掛けられた被害者ってドルメシアさん…貴女なのですよね?確か、差し入れのお饅頭に画鋲が入れられてたって。誰かが皆を陥れようとしてるんだ!っておっしゃってたみたいですね?それを皮切りに、皆さんがお互いを疑心暗鬼する様になって…お互いで蹴落とし合い始めて棄権者が続出したって」


「その蹴落とし合いを裏で手助けだってしたハズよ!時にはスタッフに変装までしてね!そうやって皆を陽動してライバルを減らしていったのね!」


ウェイトレスがミクリを指さして言った。

構わずリーサは続ける。


「"ドルメシアさん"として内部を引っ掻き回して…頃合いを見て自分も退場して…"ミクリさん"として急に現れる…全ては少しでも優勝に近付く為に…」


ミクリはフッと微笑む。


「"ドルメシア"としてのお嬢様演技…中々のものだったでしょ?スタッフに変装してる時も…同じスタッフでも、誰も私のことを疑わなかった。ハァ…まさか応募者リストを確認されるなんて思わなかったわ…」


「ミクリさん…貴女程の演技力があれば…そんな卑劣な方法を取らなくても…皆さんと張り合えたのでは?なんでこんな事を…!」


「言ったでしょ?"承認欲求は身も心も満たしてくれる"って。…私は注目されたかった…だから、私より目立とうとするヤツが許せなくて…フフフ…優勝はどうでも良かった…とにかく…邪魔する者が少なくなればね…フフフ…!!」


「うっわ…完全にヤバいヤツじゃん…」


ウェイトレスは口元を抑えてドン引きしている。


「ほら!行くぞ!続きは牢屋で聞いてやる!」


衛兵にロープを引っ張られ、ミクリは連れて行かれてしまった。

リーサはその背中を悲しそうに眺めながら口を開く。


「コレで…一旦は問題解決…?ですかね…」


「ヤバッ!私仕事中なんだった!!戻るから!!じゃーね僧侶さん!」


ウェイトレスはそう言って駆け足で去っていった。


「………私も戻ろう…。コンテストを棄権しちゃった事…謝らないといけませんし…」


リーサも早歩きでその場を後にするのだった。




〜〜〜〜〜




「それでは、いよいよ投票の時間です!!今回のコンテストを制する次世代のアイドルは一体誰なのかぁ〜!?」


ユーリル、サヤカ、ハグレの演目が終わり…3人は舞台に並んで立つ。

例によって、観客に良かったアイドルの前に移動してもらうスタイルでの投票を行う手筈だ。


アイドルコンテスト、ヤング部門。

果たして優勝は誰なのか…!!


(大丈夫大丈夫…私は女神なんですよ…女神のアイドルが弱い訳ないじゃないですか…)


ユーリルは神頼みするように手を擦り合わせている。本来は神頼みされる側の存在なのだが。


サヤカは取り留めて落ち着いた様子だ。

結果がどうあれ気にしない…。演目をやり遂げた達成感に満ちた顔をしている。


ハグレは変わらず疲れを一切見せない。

あんなに激しい演目を終えた後とは思えない程、汗一つかかずにあっけらかんとしていた。


(奇跡起きろ!奇跡起きろ!奇跡起きろ!)


舞台袖でリューセイも両手を握り合わせ強く願う。


「では観客の皆様!気に入ったアイドルの前にご移動をお願いいたします!!」


緊張の瞬間。

観客は一斉移動を始め………暫くすると動きが止まった。


「……………集計結果が出ました!それでは結果発表です!!投票の結果、第二回アイドルコンテストの優勝を勝ち取ったのは〜…!!


ユーリル 3  !!!


サヤカ 141 !!!


ハグレ 165 !!!


優勝はハグレちゃんです!!!!!」


ワァッ!


盛り上がる観客。


ユーリルはヘナヘナ…と床に手を付いた。


優勝を逃してしまったサヤカだったが、悔しがるどころか、フッ…と微笑みハグレに向き直る。


「おめでとう。正直…負けて悔しいと思わないくらい完璧な踊りだったわ。アレを見せられたら…貴女の優勝を確信せざるを得ないわ」


「あんがと。……………だいぶ丸くなったな。最初の印象より…」


「………人の為に自分の犠牲も顧みない人を間近で見ちゃったからかしらね…」


サヤカは言って一拍置いて…ハグレに手を差し伸べて続ける。


「貴女と競えて良かったわ。次のコンテストがあったら…その時は負けないから!貴女も絶対参加しなさいよね!」


「行けたらね…」


ハグレは言いながらサヤカの手を握り握手する。


ーーーーー


「うわ~ん!酷いよ酷いよ!私は女神なのにぃ〜!!」


駄々をこねるユーリルの元にリューセイがやって来る。


「もういいから。さっさとずらかるぞ…」


「こんなのおかしいですってぇ!不正です!不正があったんです!」


「やかましい!!3人も票が入ってただけ凄いよ!!見ろ!3人共サングラスをかけてる!!」


「ちょ、ちょっと待って下さいよ!?3人の中に…ダルクス様が居ない!?」


ユーリルが見回すと…

ダルクスはサヤカの列に並んでいた。


「裏切り者ぉぉぉぉぉ!!!」


ユーリルはすかさずダルクスの元に飛んでいき、ポカポカと肩を叩く。


「忖度しても意味ないでしょーが!!」


ーーーーー


こうして宝箱配置人一行の…なんの意味もないアイドルコンテストが幕を閉じたのだった。


魔王軍四天王一行もアイドルコンテストを終え、酒場に集まり、イクリプスとバッカルは椅子に背中を預け…ぐで~っと座っていた。

ランドルトブラックだけは背筋良く椅子に腕を組んで座っている。

バッカルが優勝で勝ち取った大きな船の模型が机の上に置いている。


「……………ただいま」


そんな男達の元に紅一点、フラップジャックがお土産を抱え休暇から戻って来た。


「……………どうしたの?」


元気のない男達を見て…ジャックは首を傾げる。

バッカルが少し頭を上げてジャックを見て口を開く。


「ジャックちゃんが居てくれたら…どれ程良かったかと思うよ…」


「?」


意味が分からず、再び首を傾げる。


「ねぇ……………次の作戦は……………?何か決まった……………?」


バン!と急に立ち上がったのはイクリプス。


「私も休暇に入らせて頂きます!」


そう言ってイクリプスはその場を後にした。

それに合わせてバッカルも、机の上の模型を抱えてイクリプスに付いて行く。


「ボクも休暇に入らせて貰うよ〜」


そう言ってバッカルもその場を後にした。


「……………何があったの……………?」


ジャックが問い掛けると、ランドルトブラックは微動だにせずに続けた。


「彼らは強くなったのだ…立ち塞がる苦難を乗り越えたのだ…今は…ゆっくりと休ませてあげよう…」


「……………?」


やっぱり良く分からないジャックだった。




〜〜〜〜〜




とある狭い路地裏。

そこに一人の人物が入って来る。


アイドルコンテスト、優勝を勝ち取ったハグレ。


「ふぅ…」


一息ついたハグレは周りに誰も居ない事を確認して…


ボワン!


と白い煙に包まれる。


「ポニョン」


なんと、彼女はポニョが変身した姿だったのだ。

優勝賞品の"ミリオン高速船"を勝ち取り…ポニョはダルクスの元へとホクホクと戻るのだった。





【アイドルコンテスト編・完】


続く…

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