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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百二十七幕【アイドルチェイス(物理)】

「それではとうとう始まります!アイドルコンテスト・ヤング部門!!多くのアイドル候補が棄権していく中、最後まで残った数少ない正真正銘のアイドル達…!!面構えから違うようです…!!さぁ、では早速、最初のアイドルにご登場頂きましょう!!」


司会の進行が進む中、舞台袖でスタンバイするユーリル。

くじ引きによって結局最初になった出番だが、ユーリルは特に問題無さそうだった。


「行けそうかユーリル?」


心配そうに声を掛けるリューセイ。


「余裕のよっちゃんは年子の子!」


フン!と鼻息を漏らすユーリル。


「ほんと、なんでそんなに自信アリなんだよ…」


「ユーリルさーん!ステージにお願いしま〜す!」


スタッフの声がかかり、ユーリルは自分のほっぺをパチンと叩く。


「おっしゃあーーー!!!ナンバーワンアイドル!!目指しちゃるぞー!!」


言ってユーリルはズンズンとステージ上に向かっていった。


「いけ!ユーリル!!お前の稽古の成果を見せてやれっ!!」


リューセイも元気よくユーリルを送り出した。


ステージの真ん中に立ち、観客に向き合うユーリル。

………だったが………


「あ………」


一言声を漏らし…明らかにカチン!とユーリルの身体が固まっているのが見えた。

舞台袖から確認するリューセイ。


(ユーリル!ほら!お前の合図で音楽が鳴り出すぞ!)


リューセイは囁き声でユーリルに身振り手振りで伝えようとするが…ユーリルは一切動かない。


観客席も様子がおかしいユーリルに戸惑う。

そこから見ているダルクスも気が気じゃない。


(オイオイ…大丈夫かあの女神さん…)


リューセイは痺れを切らしてスタッフに合図を送った。

すると、バックグラウンドからアニメソングが流れ始める。


その音でハッと我に帰るも、ユーリルはまるでロボットのようにガクガクと動き…顔を真っ赤にして歌い出す。まるで壊れかけのラジオみたいに。


「いやアイツ、あんだけ大口叩いてて本番にクソよわよわかよっ!!!」


言って頭を抱えてフラッとめまいを覚えるリューセイ。


「げ、げ、激光っーーーーー!!!!!」


それではいけない思ったのか自分を奮い立たせる為にそう叫んだかと思うと、ユーリルは目をグルグルさせながら必死に稽古通りの踊りを見せる。


凄まじい光で発光させながら…


「ユーリル!!!ワット数!!!ワット数を下げろ!!!」


しかしそんなリューセイの声も虚しくユーリルは恥ずかしさからくる発光を続け…眩しさで誰の目にも留まる事なく…かけた曲は終わってしまった…


次第にワット数を下げ…ペコリとお辞儀したユーリルはギクシャクとロボットの様にステージを後にした。


「何やってんだぁぁぁ!!?」


咥えていたタバコを落とし頭を掻きむしって声を上げるダルクス。


「だ、大丈夫だ大丈夫………まだリーサさんがいるじゃないか………。リーサさんならやってくれる………フフ………」


引き攣った顔で言って、ダルクスは震える手でマッチでタバコに火を付けるのだった。


舞台袖では、頭を抱えるリューセイの前に達成感に満ちた顔のユーリルが立つ。


「どーでしたか!?出だしはちょっとテンパりましたけど…最後まで踊りきりましたよっ!!」


「いやアホかっっっっっ!!!誰も何も見えなかったよ!!!あんなの直視したら目潰れるわっっっ!!!」


「えぇ!!?」


「えぇ!!?じゃないのよ………どーすんだよ〜…こうなったらもうジュニア部門のイズミルに賭けるしか…」


※イズミルも優勝を逃しています


「いや、まだだ…!リーサを探すんだ!!アイツが出てくれればワンチャン…!!!」


「リーサは来ない………彼女は………私に全部預けたから…」


次の番になるサヤカが神妙な面持ちで言った。

リーサに合わせたアイドル衣装も急遽サヤカに突貫で合わせていた。


「リーサの分…私がやるわ…!リーサが預けてくれた想いを無下には出来ない…!!」


「では、サヤカさん出番お願いしますっ!」


スタッフに言われ、サヤカはステージに向う。

その背中は…なんとも凛々しく見えた。




〜〜〜〜〜




ガチャ…


スタッフ用の更衣室のドアが開かれる。


黒髪ショートのスタッフの一人が入って来た。


「……………チッ!!クソッ…!!」


バン!と何かにイラつきロッカーを叩く。


「誰かが妨害してる…!!ユーリルってヤツ…昨日仕掛けたステージの罠で演目中に黙らせるつもりだったのに…!!」


スタッフは不穏な事を言いながらロッカーを開ける。


(それだけじゃない…!!仕掛けた他の罠が全部無くなってた………それに、衣装をズタズタにして、なおかつ替えの衣装も隠してやったのに…サヤカも普通に出場してるし…!!)


ギリギリ…と歯を食い縛りながらスタッフは服を脱ぐ。


(ハグレ………アイツの妨害も出来なかった。ほぼ見かける事すら出来なかった…手荷物も何も持ってないし…仕掛けようが無かった…それなのに本番だけちゃっかりと現れてるし…!!)


ロッカーからキラキラなドレスを取り出す。


(リーサ………。アイツだ。アイツが勘付いた。アイツが罠を全部ダメにしたんだ…!クソッ…!ぽけーっとしてるから脅威として見てなかったけど…アイツから先に排除しておくべきだった!)


スタッフは綺麗なドレスを纏い…さながら、アイドルに変身してしまった。


「計画が台無しよ…!!こうなったら………後は実力で勝負するしかない…!!」


言って彼女は更衣室を出ようとする…が…


「待って下さい!!!」


急にそんな声が上がり、彼女は足を止める。

更衣室の出口にガタガタッ!と何かが立ち塞がる。


「……………ゴミ箱が喋った!?」


一人でに動く大きなゴミ箱が出口を塞ぎ………


バッ!!!


…と中から飛び出したのは勿論…


「犯人は貴女ですねっ!!ミクリさんっ!!!」


リーサだ。


「り、リーサッ…!!……………なんでゴミ箱!?こんなにロッカー並んでるんだから普通ロッカーの中に隠れない!?」


「コッチの方が落ち着くので…」


パンパンと服を払って…

リーサは両手杖を構えてミクリに向けた。


「観念して下さい!もうこれ以上は好きにさせませんよっ!!」


「クッ………!!!」


ミクリはすかさず踵を返して、更衣室奥に走っていく!!


「あ!待ちなさい!!」


リーサも追いかける。

しかし、更衣室の奥は行き止まりのハズだった。


が、しかし!


バリーーーーーン!!!


なんと、ミクリは窓ガラスを突き破って外に逃げたのだ。


「うぇえ!?ちょ、アグレッシブ過ぎますってぇ!」


リーサは戸惑いながらも…怪我しないように窓枠をゆっくりと飛び越え外に出た。


「うわあぁぁぁぁぁ!!!!!」


全速力で逃げるミクリ!

リーサもその後を必死に追いかける!


「に、逃げないで下さぁい!!」


大通りを二人の女が駆け抜ける。

行き交う人々、店の中の人々もなんだなんだと振り向いている。


そんな時!


シュルルルル!パコーーーン!!


何処からか飛んできた"銀のトレイ"が逃げるミクリの足元に命中!

それに足を取られ、ミクリは派手に転げてしまう。


ドターーーーーン!!!


「…ック!!!」


リーサがトレイが飛んできた方を見ると…

そこには元シスターで元アイドル候補の現ウェイトレスがかっこよく投げのポーズで立っていた。


「ど、どなたか存じませんがありがとうございます!!」


リーサは深々とお辞儀をする。


「なんでよっ!!私だってば!!元シスター兼元アイドル候補兼現ウェイトレスの…!!」


「それより、早く捕まえないと!!」


リーサはウェイトレスの話を途中で切り、転げたミクリに近寄り水の魔法で手足を拘束する。


「クソッ…!!離せ…!!」


そこにウェイトレスも近寄る。


「コイツがミクリ…?やっぱり初めて見る顔ね」


「そうですか?良く見て下さい」


リーサが言う。ウェイトレスは目を丸くして、ミクリの顔を良く見てみた。


「……………う〜ん…言われてみれば見覚えがあるような無いような……………」


「アイドル達を罠に嵌めるには、スタッフに変装するだけだと限界があります。効率よくアイドル達を罠に嵌めるなら…アイドル達の中に入り込む必要もあった…」


「アイドル達の中に!?どうやって!?」


「アイドルになってですよっ!!」


リーサはミクリに向き直り続けた。


「そうですよね?ミクリさん……………いや【ドルメシア】さん…!」


「……………ッ!!」


ミクリは言われ…ギリリと歯を食い縛った。


「え、え、えええええぇぇぇぇぇ!!?」


ウェイトレスはただただ狼狽えるばかり。


観念したのかミクリは抵抗をやめ、ガクリと項垂れてしまった。




続く…

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