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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百九幕【花火は世界を…救う?】

日が沈み…月明りで照らされる砂浜。

人は少なくなり…カップルがちらほらと夜の海をデートしているのが見える。


宝箱配置人一行は近くのラウンジでバイキング形式の夕食を楽しんでいた。


「ダルクスおじ様はどうしたんですか?」


イズミルが綿菓子を頬張りながらリューセイに問い掛ける。


「ダルさんはホテルに向かってったの見たきりだな。ベッドで寝てるんじゃないか?」


「ふむ…」


話していると、ラウンジの隅の椅子に縛り付けて座らせていたリーサが目を覚ました。


「ハッ…わ、私は一体…」


「あっ!リーサが目を覚ました!」


「えぇッ!?なんで私、縛られてるんですか!?」


「ゴメンゴメン!生き返らせた後に暴れ出さないようにと思ってね。直ぐ解くよ!」


リューセイは言ってリーサの縄を解いた。


「うぅ…頭がクラクラします…」


「無理もないよ(教会で生き返らせた瞬間、限界メンヘラ突破するのを恐れて後頭部をドツイて気絶させたからな)」


「リーサ樣も一緒にバイキング食べましょ!その後、ユーリル樣が何か楽しいもの用意してくれるみたいですしっ!」


イズミルはリーサの手を引いていった。


(そういや…ドーラ達はどうしてるだろ…)


リューセイは鉄串に刺さった肉を齧り付きながら月明かりに照らされる水平線を見て考えていた。


ーーーーー


一方ドーラ達は、鐵球をしていた離れのビーチでひっそりとバーベキューを始めていた。


「ドーラちゃん……………お肉焼けたよ……………」


ジャックがドーラを呼びに行く。

ドーラは一人、水平線を眺めながら思案にふけっていた。


「ドーラちゃん……………?」


「あぁ、ゴメン。すぐ行くわ」


「あのダルクスって……………人のコト……………?」


「え?………えぇ、そうね。どうも引っ掛かるのよ………」


(あれだけの力を持ってるなら…アイツ自身が勇者として魔王討伐に迎えば良い。国だって彼に行ってもらった方が安心だと考えるハズだ…。アイツの力を誰も知らない?それとも、アイツが勇者を辞退してる…?いや、それにしては勇者に同行して一緒に冒険を…)


「ドーラちゃん…………」


ジャックが人差し指をドーラの唇に押し当てた。


「!」


「仕事の事……………今は無し……………休暇中だから……………」


「………そ、そうね。ごめんなさい」


「行こ……………ドーラちゃん……………」


ジャックはドーラの手を引いていく。

それでドーラも吹っ切れたようだ。


「あぁもう、馬鹿みたい!そうよ!ワタシは休暇中なんだって!仕事の事は無し無し!!バカンスをおもっきり楽しんでやろーじゃないのっ!!」


そう言ってドーラは駆け出しジャックを追い抜いた。


「食うわよ肉ーーーーー!!!」


そんなドーラを見て、ジャックは嬉しそうに微笑んだ。


ーーーーー


戻って宝箱配置人一行。

バイキング形式の料理を取り分けて、各々が好きに食事をした後膨れたお腹を休ませてソファでくつろいでいた。


「皆さーん!!くつろいでる暇は無いですよぉぉぉ!!!」


ソファでお腹を擦っていたリューセイの肩を後ろから掴みかかりブンブンと振り回しながらユーリルが声を上げた。


「ヤメロヤメロッ!!吐くっ!!吐くっ!!」


「この為に用意したんですよっ!!ホラッ!!」


ユーリルが取り出したのは、何かがパンパンに詰まったビニール袋。


「そう言えば水泳袋と一緒に何か持ってきてたよな?何を持ってきたんだ?」


「フッフ〜!コレでーす!」


ビニール袋の中を広げてみせる。


中には普遍世界から取り寄せたのだろう、カラフルな手持ち花火の詰め合わせパックが大量に入っていた。


「夜の海と言えば花火!!皆さんで遊びましょう!!」


リーサとイズミルが興味津々といった具合に集まってきた。


「何ですかソレっ!カラフルで綺麗な袋ですねぇ!」


イズミルは目をキラキラさせて言う。


「手持ち花火です!袋より火を付けた時の方が…」


「は、花火って打ち上げて爆発する…あの、素人が扱うには危険じゃないですかっ!?」


リーサは怯えながら言う。

ユーリルはフルフルと首を横に振って答える。


「いえいえ、これは…言うなれば手持ち用に小型化した誰でも扱える花火…と言ったところです」


「へぇ。ファンタジー世界は打ち上げ花火はあっても手持ち花火は珍しいんだな?」


リューセイが言った。


「やりましょうやりましょう!手持ち花火〜!!」


イズミルは年相応にはしゃいだ。


ーーーーー


「キャハハー!!凄ーい!!」


「あ、危ないですよぉ!イズミルちゃん!」


砂浜の波打ち際で、火花を勢いよく散らせる手持ち花火を両手に持ち振り回しながらクルクル回るイズミルを危なっかしそうに宥めるリーサ。


「いつも大人びてるイズミルが…子供みたいにはしゃいでる姿見ると…なんか幸せな気分になるな」


それを見ながら、リューセイがポツッと呟く。側でユーリルはピクリとも動かず線香花火を眼の前で凝視している。


「お前…まるで、アンコウの疑似餌におびき出された小魚みたいだぞ」


「勇者様…静かに…!私はこの先っちょがポトリと落ちる瞬間を見極めようとしているんです…!」


「どんな楽しみ方だよ…ソレ…」


言いながら線香花火に集中するユーリルは放っておいて、リューセイはなんとなしに歩き出した。


何を思い立ったか…向かったのはドーラ達の居るビーチ。


バーベキューの終わった魔王軍達は焚き火を燃やし、各々が好きな事をしてくつろいでいた。

そこに来たリューセイに気付いたのは元の姿に戻ったゲル族の兵士だった。


「あっ!!おい、貴様!!今度は何のようだゲルっ!!」


ゲル族の兵士は戦闘態勢をとった。


「いや、別に喧嘩しようって訳じゃないよ。ドーラは居る?」


「気安く姫様を呼ぶなゲル!!本来はお前になど会わせる訳にはイカン、高貴な御方だゲルぞっ!!」


そんな騒ぎを聞きつけたのか、ビーチチェアで読書をしていたドーラがやってきた。


「何の用リューセイ?貴方、警戒心ってもんが無い訳?」


「向こうでさ、花火で遊んでるんだけど…ドーラ達も一緒にどうかなって…」


「花火〜?なんだソレはゲル」


ゲル族の兵士は首を傾げる。


「待って…。花火………聞いた事ある。確か玉を空中で爆発させると綺麗な火花の花が咲くって言う…」


ドーラは思案しながら言った。


「それとはちょっと違うけど、手持ちで遊ぶコンパクトなタイプの花火を俺の元いた世界から取り寄せてさ。興味あるかなと思って…」


「いい加減にしろゲルッ!!姫様がそんなもんでお前達と馴れ合う訳が…」


「いいわ。花火…一度見てみたかったのよね」


「ひ、姫様ッ!?」


「なに?何も危ない事ないわよ。何かあれば返り討ちにすれば良い。ほら、皆を連れてきて。リューセイ、案内ヨロシク」


「あ、あぁ…」


思いの他すんなりと受け入れられ戸惑いつつも、リューセイはドーラを案内する。


ーーーーー


「あ!ドーラちゃん!!」


最初に気付いたのはイズミルだった。

イズミルはドーラに抱き着いた。


「来てくれたんですねっ!一緒に花火で遊びましょう!」


「イズミルちゃん…ほんとワタシに良く懐いてくれるわね…」


その後からぞろぞろと他の魔王軍の兵士達も集まってきた。


「ヒィ〜!ま、魔王…」


リーサはブルブル震えている。

それに気付いたドーラは片手を上げて話しかける。


「昼では悪かったわね!本気じゃ無かったんだけど…まさかあんなに簡単に棺桶になるとは思わなくて」


「まぁまぁ、リーサはあれが通常運転だから」


そう言って笑うリューセイのほっぺをユーリルがつねった。


「イタタタ」


「勇者様…!!これはどー言う事ですかっ!?…魔王を誘うなんてっ…!!」


「いやだって、人数が多い方が楽しいだろ?」


「だからって魔王を誘わなくてもっ…!!」


「まぁまぁ、良いじゃないか。ダルさんはホテルに戻って居ないし。ドーラは今は何もして来ないって!」


言ってリューセイはドーラに振り返り続ける。


「なっ!ドーラ!」


「ま、まぁ…今は休暇中だからね…」


「ぐぬぬ…」


しかしユーリルは不服そうだ。


「で?花火ってどれ?」


ドーラが問い掛ける。


「これだよ。こうやってマッチで火を付けてな?」


リューセイは実演して見せる。

バチバチバチッ!


派手に火花を散らす初めての花火を見て、魔王軍から"おぉっ!"と一瞬歓声が湧いた。


「これが…"花火"…か…」


ドーラは感動し、少し頬を緩めるのだった。




続く…

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