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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百八幕【結局こういう羽目になる】

ズザザザザー!!


ふっ飛ばされたリューセイは再び砂浜を滑りポニョがくつろぐビーチチェアの側に…と思いきや、そこにはポニョではなく綺麗な水着の女性がくつろいでいた。


「フン…勇者が聞いて呆れるな?リューセイ」


「ポニョ…お前…コロコロ姿変えやがって…」


「魔王か…あんな可愛い娘が魔王なんて世も末だなぁ…倒しちまうのが惜しいよ」


「ドーラは魔王を名乗ってるが…本当は良い奴なんだ。みんなに慕われて…愛されてる。そんなドーラを倒してしまうなんて…俺はどうしても乗り気になれない」


「なぁーに寝惚けた事を言ってるんだ馬鹿!アイツが優しかろうが慕われてようが、真意がどうであれ"魔王"を名乗っているのは事実。なら放っておく訳にはいかないのよ。"宝箱配置人の思い通りに動かない魔王"は特にな!さっさと倒して来いっ!!」


「………とは言われても…鼻血が出過ぎてちょっと貧血気味…」


起き上がろうにもフラフラのリューセイを見て、ポニョ…扮する水着の女性はヤレヤレと首を振り大きく溜息をついて立ち上がった。


「だぁー!!つっかえねぇなぁ!!お前が役に立たないなら俺が出るしか無くなるじゃねぇか…。クソ、太陽の下に出る羽目になるとはな…」


「ぽ、ポニョが行くのかっ!?ど、どうするつもりだっ?」


「魔王を黙らせるにはまずは…側近のタコ女を先に黙らせないと…後の魔王との決着はダルクスがどうにかしてくれる」


そう言ってポニョはコートに向かおうと歩き出す。


「なんだよ、えらく積極的だなぁ?自分から介入してくるなんて…」


「魔王を名乗るヤツを野放しには出来ないんだよ…そいつを黙らせるチャンスなら…そのチャンスを活かさない訳にはいかねぇだろ…!!」


言ってポニョは駆け出した。


「ちょ…!!ポニョ!!お前一体…!!チームに入ってないから怪しまれるぞー!!」


しかし、リューセイの声は届かなかった。


ポニョは新体操選手のようにタンタンターンとクルクルとジャンプすると…ボワンッと白い煙を発生させて一匹の"カニ"に変身した。


コートではジャックとダルクスのリレーが変わらず行われていた。


バコバコバコバコバコバコッ!!


「ちょっと!!貴方達だけで楽しまないでよ!?ワタシも活躍させてよー!!」


手持ち無沙汰なドーラは空中で繰り広げられている打ち合いに向かって叫ぶ。…が、勢いは留まる事は無かった。


(勇者一行をサッサと棺桶にして魔界で拘束しようって手筈だったけど…まさか魔王軍相手にここまで粘るとは予想外…それに…勇者の仲間風情が…)


そこに、カニとなったポニョがカサカサカサと入って来る。


ネットを張ったポールにカサカサカサ…と器用に登り…


上空を見上げるドーラに目掛けてピョンッと飛んだ!


ハサミをキラン…と光らせ、まるで必殺の殺し屋の様に…すれ違いざまにドーラのビキニの紐をチョキン!と切ってしまった。


ハラリ…


解ける胸のビキニ。


「ウ"ヒャッ!?」


咄嗟に胸を隠すドーラ。


「おぉッ!?」


周りで応援していた兵士達は思わず前のめりになってガッツポーズを取る。


空中のジャックもドーラの声に振り向き、その瞬間を見逃さなかった。


「あ、アホォ!!よそ見すなっ!!」


ガツンッ!!


フリルの叫びも虚しく…ジャックの頭に棘付鉄球がクリーンヒットした。


「……………痛……………」


タコ墨の様に黒い血をブシュッと撒き散らして…ジャックはドシャリと落ちてきた。


「ジャ…ジャ…ジャックぅぅぅーーー!!?」


ドーラは切れた紐を応急処置で結び直してジャックに駆け寄った。


「……………大丈夫……………」


「アホォ!!ホンマにアホじゃのおジャックは!!」


フリルは憤っている。


「衛生兵!ジャックの応急処置をっ!!ジャック!!しっかりして!!」


「……………眼福……………」


ドーラの呼びかけに集まった応援側にいた兵士が、何処か幸せそうなジャックを運び出した。


「うちの可愛い四天王をよくも…」


ドーラはキッとダルクスを睨む。


「えー?いや、今のは俺のせいじゃないだろ。お前のユルユル水着のせいだろ!」


「う、うるさいっ!!どうであってもアンタは許さなーい!!」


「理不尽過ぎるだろ…ま、邪魔なしでやっとお前と一騎打ち出来るんだ。手加減は無しだぞ魔王様?」


ダルクスは余裕そうにニヤリと笑い指をクイクイと曲げ挑発する。


ぐぬぬ…


歯を食い縛るドーラ。


(なんなのコイツ…勇者の仲間ってだけの癖に…なんでこんな自信満々なの!?)


落ちた棘付鉄球を持ち上げ…

ドーラは訝しげな表情のまま、棘付鉄球を高く放り投げダルクスに向けて打ち返した。


ーーーーー


「フゥ…」


戻ってきた水着ポニョは倒れる様にビーチチェアに寝転んだ。


「お前…凄いな…」


仰向けで安静にして倒れているリューセイが少し感心気味に言う。


「疲れた…明るさでだいぶ体力を削られた…後はダルクスが魔王を討ち倒してくれれば…」


「討ち倒すは言い過ぎだけど…とにかく、この危険な遊びはチャッチャと決着付けて終わらせないとな…」


「何を甘っちょろい事を…ダルクスは多分、ここで魔王を本気で討伐する気なハズだ」


「まさか………ダルさんにそんなポテンシャルがあるとは思えな………」


言いかけてリューセイは少し思案する。


(いや…あの人の秘められた力はちょくちょく見てきた…それも、ほんの一部を見たに過ぎない。ダルさんはまだ俺達が知らない想像を絶する力を持っててもおかしくない…!!)


「ドーラが危ないかもしれないっ…!!」


リューセイはフラつきながら立ち上がり、コートに走っていった。


ーーーーー


1vs1となったダルクスとドーラ。

チームの仲間が居なくなった分、二人の打ち合いは激しさを増していた。


バコォォォーーーン!!!


バコォォォーーーン!!!


一つ一つの打球が重く、とんでもない破壊力を有して打ち合われている。

その度に衝撃波が巻き起こり、砂煙で視界は塞がれ、応援していた兵士達やユーリルにイズミルも吹き飛ばされないように必死に耐えるのが精一杯だった。


「ちょっとちょっとぉ!!!あんまりやり過ぎないで下さいよぉ!!試合が見えないじゃないですかっ!!!」


地面に伏せてイズミルが必死に声を上げるも、二人には届かない。


バコォォォーーーン!!!


バコォォォーーーン!!!


(なんなのよアイツ…!?ホントに人間なの!?リューセイなんかより余っ程力を持ってる…!!コイツが勇者じゃないのが不思議なくらいに…!!)


ドーラはダルクスから放たれる棘付鉄球をなんとかムカデの尻尾で打ち返すも、その衝撃は段々と体力を削ってくる。


「どうした魔王っ!!ちょっと疲れが見え始めたんじゃないかっ!?」


しかし、ダルクスは全く持って余裕そうだ。

応援の兵士達も気が気じゃない様子で見守っている。


「姫様が押されてる!!」


「いーや、姫様の力は本当はあんなもんじゃ無い!!なんで本気を出さないんだよ姫様っ!!」


「"出せない"んだよ!俺達が近くに居て巻き込んじまうからっ!!」


ーーーーー


バコォォォーーーン!!!


ドーラが打ち返した棘付鉄球がダルクスに向かっていく。


「そろそろ終わりにしよう」


ダルクスは空中に"印を結び"向かってきた棘付鉄球に腕をかざした!

すると、棘付鉄球はダルクスの目の前でビタッと止まり、その場で高速回転しだした。

そして、闇のオーラを纏い始め…黒い煙を漂わせ始める!


「な…人間が闇の力を操ってる…!?」


それに驚いているのも束の間、ドーラの足元の地面がズブズブと…沈み始めた!


「えっ!?」


太ももまで沈み、身動きが取れなくなってしまった。


「じゃあな…センチュレイドーラッ!!!」


バコォォォーーーン!!!


ダルクスによって放たれる禍々しいオーラを放った棘付鉄球。

身動きの取れないドーラに容赦無く放たれた!


「ウオオオオオォォォォォーーーーー!!!!!」


そこに、リューセイが光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)を構えて走ってきた。


ザザザッ!!


足を滑らせドーラの前に立つ。


「りゅ…リューセイ!?」


迫った棘付鉄球を寸でのところで光伝力放射砲(ルミネーションキャノン)で受け止める!


ギャリギャリギャリ!!!


その場で音を立てて回る棘付鉄球を力を込めて一気に押し返す!


ガッキィーーーン!!!


ダルクスに向かっていった棘付鉄球。

ダルクスはサッと横にズレ棘付鉄球を回避した。


「チッ…おい、リューセイ!!テメェなに邪魔してくれてんだ!?」


「ダルさん!!またやり過ぎですって!!ほんと、力の制御出来てないんだからっ!!」


「馬鹿野郎!!俺は本気でその魔王を…!!」


しかしダルクスの言葉を聞かず、リューセイはドーラに手を差し伸べる。


「大丈夫かドーラ?」


ドーラは少し警戒しつつもその手を取った。

リューセイは手をゆっくり引っ張りドーラを救出した。ズボッと足が抜け、よろめいたドーラはリューセイに抱きかかえられる形になるも直ぐ様ドンッと押し退けてしまう。


「よ、余計なお世話よ!これくらい大丈夫だから…」


「素直じゃないな〜」


リューセイはヤレヤレと首を振った。


砂煙が晴れていくと、周りの皆の姿も見えてきた。


「ゴホゴホッ!!ちょっとちょっと!!何がどうなったんですか!?」


砂まみれになったイズミル達が駆け寄ってくる。


「悪かったわね皆。ちょっと熱が入り過ぎちゃったみたい」


「決着はついたんですか!?」


兵士の一人が言う。

しかしドーラは首を横に振る。


「いいえ…。でも遊びは終わり。これ以上やったら遊びの域を越えそうだったしね。折角の休暇が台無しになっちゃうわ」


「…もう良いのか?」


「興が削がれた。アンタが乱入しちゃったせいでね!」


「さいですか…」


リューセイは言って頭を掻いた。


「…ったく何考えてんだかウチの"勇者さん"は」


ダルクスがタバコに火をつけながら背後からリューセイに話しかけた。


「折角の魔王討伐のチャンスだったってのによ」


「何もここで決着つけなくても…ほ、ほら!今日は僕らは楽しく遊んでただけですから!」


「言っとくけどなリューセイ。お前はあの魔王に惚れちまったのか知らねぇけど、奴は人間界を支配しようとしている極悪人なんだぞ?それを忘れるんじゃねぇ」


「ほ、惚れてないわっ!」


「どーだか」


ダルクスは言って、面倒くさそうにその場を後にした。


ーーーーー


魔王軍の兵士達の元に戻るドーラ。

そのドーラの表情は少し曇っていた。

後ろを振り返り去っていくダルクスの背中を見る。


(あのダルクスって奴…。さっきは本気でワタシを殺す気だった。それに…あれ程の力…勇者でもない人間如きが何処で手に入れたの…?アイツの事を少し調べる必要がありそうね…)


ドーラはそう思いながら拳を強く握った。




続く…

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