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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第一章【旅立て!宝箱配置人編】
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第十一幕【メンタルブレイク】

リーサを生き返らせる為に魔物刈りを始め、お金になりそうな素材をいくらか調達出来たリューセイ。


「よし、充分じゃないか?そろそろこの辺にしとくか」


リューセイがそう言うと、ユーリルも頷いた。


「そうですね!イズミル様ももう村に戻ってるかもしれないし一旦戻りますか!」


二人は一旦ムジナ村に戻る事にした。




〜〜〜〜〜




村に戻るが、イズミルの姿はない。

まだ戻ってきて居ないようだった。


「大丈夫かな?」


「あのイズミル様ですよ!心配する事ないですって!」


「まぁ、あいつにはディアゴも付いてるし…取り敢えず俺達は先に集めた素材を売りに行くかぁ…」


とはいえこの時間。店は全て閉まっていたが丁度旅の商人が村に来ていたのでその商人に素材を見て貰う。


「ふむふむ。これなら356Gといった所かな」


「356G!?こんなに素材集めたのに!?」


ユーリルは絶句する。


「まぁ無理もないよ。ここ近辺の魔物の素材なんてたかが知れてる。これでも稼いだ方だよ。とはいえ、リーサを復活させるのには少し足りない…後はイズミルの成果次第か…」


…と言った矢先、村の入口からイズミルの声が聞こえた。


「スミマセ〜ン!お待たせしました〜!」


「遅かったな!待ちわび…」


「キャアアアアア!!!??」


咄嗟にユーリルが叫ぶ!

イズミルはズルズルと"亀甲呪縛の章"で縛り上げた得体の知れない巨大な影を引きずって来たのだ。村の入口のアーチをくぐるがその影がつっかえ…そのままアーチを引き倒す!


ドーーーン!!!


「オイオイオイ!!!なんだよそれはどーなってだコレ!!!」


「ニシシ!!どうですかコレ!!こんな初手の草原にこんな高レベルのドラゴンが居るとはビックリじゃないですか!?」


「ドラゴン!?ドラゴンなのかソレ!?」


「はぐれのドラゴンでしょうね!こんなの野放しにする訳にはいかないのでサクッと倒しちゃいました!それにこれだけのドラゴン、売れば当分はお金に困らない…商人さん!査定をお願いします!!」


先程の商人は腰を抜かしながら震えた口調で口を開く。


「冗談じゃないよ!しがない旅の商人がこんなもん買い取れる訳ないだろ!!破産しちまうよ!!!」


「ガーーーン!!」


イズミルはヘナヘナとその場に腰を落としてしまった。


「いや、そりゃそうだろ!!!」


リューセイはヤレヤレと首を横に振るのだった。




〜〜〜〜〜




そんなこんなで、なんとかドラゴンの鱗を一枚だけ500Gで買い取ってもらい、どうにか目標の500Gを集める事が出来た。


「最初からイズミルだけに任せとけば良かったじゃないか…」


リューセイ達は早速工面したお金でリーサを生き返らせる為に教会に向かった。


「おぉ、我が主よ…その御心で彼女の魂を戻したまえ!」


シスターがそう唱えるとリーサの棺桶は消えて、中に居たリーサはゆっくりと目を開けた。


「大丈夫か?リーサ」


リューセイはリーサの顔を覗き込む。


「私は一体…」


「棺桶になってたんですよ!ダルクスおじ様は"明日生き返らせる"って言って宿屋に行っちゃうし、私達でどうにかお金を工面して…」


イズミルが言い終わる前に、リーサはボロボロと涙を溢れさせた。


「グスっ、私…また皆さんにご迷惑をおかけしたんですね…ウッウッ…」


…と、泣き出してしまった。


「大丈夫ですよ!まだ冒険は始まったばかりだし、こんな事もありますよ!」


ユーリルもフォローにまわる。


「うぅ…やっぱり私はダメな子なんです…!ほんとに…皆さんの迷惑になるので…私はやはり、パーティーを抜けさせて頂きます…ぐすっ」


ヨロヨロと立ち上がり教会を出るリーサ。


「待てってリーサ!ちゃんとみんなでフォローするし!これから一緒に頑張って…」


そう言いながら肩を掴もうとしたが、いきなりリーサは走り出した為、スカッと空振りする。


「もう追わないで下さーい!!」


そう言って泣きながら全速力で村を出るリーサ。


「またかよ!?イズミル!ユーリル!一緒に追いかけてくれ!」


「はい!」


そう言ってイズミルも走り出した所で、この村の村長が現れイズミルを引き止める。


「おい嬢ちゃん!このドラゴンの後始末はどうしてくれるんだ!?」


「え!?いや、今はそれどころじゃ…」


「困るよ、こんなデカい死体をこのままにされちゃ!」


「あぁ…あの〜…!リュ、リューセイさん!私は後で追い付くので先に行ってて下さい!」


リューセイはうんと頷くと、村長に捕まったイズミルを後に、ユーリルと二人でリーサを追った。




〜〜〜〜〜




「追わないでって言ってるじゃないですかぁー!!」


「そういう訳にはいかないだろ!!こんな暗い中走ってたらまた死にかけるぞー!!?」


夜は魔物も強くなる。

Lv1のリーサではひとたまりもないだろう。


「追わないでくれたら私も走らなくて済むのに…!!」


ズルっ


バシャァァアン!!


言い終わるや否や、リーサは川に足を滑らせ落ちてしまった。


「言わんこっちゃない!!リーサ!!!」


リーサはみるみる流されていく。


「ど、ど、どうします!?」


ユーリルも焦っている。

考えを巡らせながらリーサを追いかけるリューセイ。しかし、ユーリルの発光の範囲から外れ…そのままリーサは闇夜に消えていってしまった。

棺桶状態…つまり"死にかけの状態"なら蘇生魔法や教会で復活させられるが、完全に死んでしまったらアウトになってしまう。

最悪な事態を想定し、リューセイはリーサを探しながら必死に川沿いを走った。




〜〜〜〜〜




しばらく走っていると、川の真ん中に出来た中洲に何かが流れ着いているのを見つけた。


「ユーリル!発光!」

リューセイはそう言って中洲を指差す。


「ヤメて下さい!そんなモンスターに指示出すみたいに言うの!」


…と文句言いつつ、ユーリルは自分を発光させながら中洲に向かってヒラヒラと飛ぶ。


「リーサ様で間違いないです!」


「リーサ!!」


呼びかけるも返事がない。

リューセイはすかさず川に飛び込んだ。


「うっわ、さっっっぶ!!」


寒さに凍えながらなんとか中洲まで泳ぎ、リーサに声をかける。


「リーサ!おい、リーサ!」


「だ、大丈夫でしょうか?」


「分からない。ユーリル!イズミルをここに案内してきてくれ!」


リューセイがそう言うとユーリルは頷き、直ぐに飛んでいった。途端に辺りは暗くなり月明かりだけの薄闇になった。


「これは、命を救う為だから!!下心とかそういうの無いから!!」


誰が見ている訳でもないのにリューセイはそう言って断りを入れ、リーサに唇を重ね空気を送り込む。そして心臓マッサージ。…を繰り返した。


これは蘇生処置。これは蘇生処置。これは蘇生処置!!


「ーーーっ!!?」


暫くして、丁度唇を重ねた時に目をパッと開きリーサは息を吹き返した。


バチン!!


と、おもむろに平手打ちをくらった。


「いてっ!?」


「ゴホッゴホッ…!どさくさに紛れて…なんて事を…っ!!」


起き上がったリーサは顔を真っ赤にして頬に手を当てフルフルと首を振っている。


「違うって!意識失ってたからしょうがなく…」


「しょうがなく…!?しょうがなくで唇を奪ったのですか…!?」


「いや、だから…ヤメろよそんな言い方するの!!ただの蘇生処置で…」


「そんなの関係ありません…!どんな理由であれ…殿方と唇を重ねてしまったと言う事は…つまり…つまり…」



「リューセイ様との間に"赤ちゃん"が出来ると言う事ですよね!?」


「はああぁぁぁ!!?」


リューセイは思わず尻餅をつく。


「意味が分からん!!なんでそうなるんだよ!!」


「なにを言ってるんですか…殿方と口付けをすると赤ちゃんを授かる…常識じゃないですか!」


「出来ねぇよ!小学生か!!小学生の知識か!!」


どうやらリーサは本気で、今ので子供を身籠ってしまったと思っているようだ。勘違いをする事に関しては他の追随を許さないのがリーサだ。本気でそう思っていてもなんら不思議ではない。


「こうなっては仕方ありません!教会に行きましょう!婚姻届を提出しなくてはいけませんので…!!」


「って、ちょ、婚姻んんんんん…!!?情報量が多くて処理しきれん!!」


ここはハッキリと誤解を解かなくては後々が面倒臭い!と、リューセイはリーサの肩をガシッと掴み、キラチャームを発動させた!


「いいかいリーサ。君は勘違いをしてる。人口呼吸で赤ちゃんは出来ないし、それに、俺達はまだ知り合ったばかり…もう少しお互いの事を知ってからでも遅くないと思うぞ?」キラキラ


リーサはそれを聞いてフと、俯いてしまった。そして暫くの沈黙の後…


「逃げるのですか?」


リーサは俯いた状態でそう言った。


「は?」キラキ…


「私の"初めて"を奪ってオイテ…お逃げにナルのですか…?」


何だ?リーサの周りが急にどんよりとジメジメした雰囲気に…


「あまつサえ…身籠ラせてオイテ『俺は関係ない』デスか…?」


リーサの頭や肩からキノコがポンポンと生えてくる…


「いや、そんなこと言ってない…お、落ち着けリーサ!どうしたんだ?」


リューセイは顔を引き攣らせながらリーサから後ずさる。それと同時にリーサも一歩一歩近付いてくる。リーサの踏み付けた足元からもキノコがポンポンと生えている。その顔は怒っているのかと思いきや、満面の笑みだ。


「私が面倒臭い女ダと思いましたネ…?重い女だと思いマしたね…?だカら私を捨てル気なのでスね…?」ニッコリ


「いや、だからそうじゃ…」


シュッ


何かが頬を掠める。

…と同時に頬から血がダラ…と流れる。


「あ…これ…ヤバい…?」


「捨テラレルくらいナラ…アナタを殺シテ私モ死ニマス…♪」


いつもおどおどと泣き顔のリーサからは想像も出来ない程の満面の笑みを輝かせ、どこから取り出したのかその両手には強くナイフが握られていた。どうやら頬の傷はそのナイフのもののようだ。


「お、お、落ち着け!!話し合おうリーサ!!」


「アノ世デたーっぷりお話聞きマスからァ!」


シュッ!!


間髪入れずにリーサがナイフを振り下ろす!ギリギリで避けたがネクタイがスパッと切れてしまった。しかしお構いなしにリーサはナイフの連続攻撃を畳み掛ける。


(こっちは避けるので精一杯…てか、コイツLv1だったよな!?どっからこんな力が!!?)


殺意の波動に目覚めたリーサは限界突破。留まるところを知らず、怒涛の攻撃にリューセイは為す術がない。学生鞄でなんとか応戦するも、鞄はズタズタになり学生服も切り裂かれる。


「ちょっとおおお!!!マジヤバいって!!!イズミル早く助けに来てくれぇぇぇ!!!」


「フフフ…フフ…コレでグサッとしちゃえばあなたは永遠ニ私のモノです♪」


(なんでこんなに強いんだよ!!?

このままじゃマジで殺られる…!!!)


「ごめん、リーサ!!」


リューセイはここだ!と、リーサの攻撃をかわし、後ろに回り込んで咄嗟にズタズタになった学生鞄を振り降ろした!


「ミ"ャッ!!」


学生鞄は見事リーサの脳天に命中。

リーサは倒れ、そのまま気を失った。


「ハァ…ハァ…あ…危なかった…。なんだったんだ今のは…」


リューセイは倒れたリーサを見つめながら呆然と立ち尽くす。何が起こったのか整理するにはもう少し時間がかかりそうだった。


「ただこれだけは言える…。うん、リーサの扱いにはこれから気を付けた方が良さそうだ…」


すると、リューセイもフラフラっと倒れてしまった。体力が限界だったらしい。

イズミル達が駆け付けて来たのはそれから暫くしての事だった。




続く…

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