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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百四幕【情報量が多いビーチ】


「ヒャッホーーーい!!」


少し高い岩場から海に飛び込むイズミル。


ドパーーーン!


「ウヒャー!冷たーい!」


ジャバジャバと嬉しそうに水面を叩くイズミル。

その様子を先程の岩場から眺めるリーサとユーリル。


「気持ち良いですよ〜!お二人も早く〜!」


「リーサ様、お先にどうぞ」


ユーリルに軽く押され怯えながら下を覗き込むリーサ。


「あ、危ないですよ…!」


「大丈夫ですってば!一気に飛び込みましょう!」


ユーリルにそう言われ、決心したリーサは目をギュッと瞑り思いっきりジャンプする。


「や、やぁ!」


ドパーーーン!!


飛び込んだリーサは水中に消え…


プカァ…


身動きせずにうつ伏せで浮かび上がってきた。ジワ〜ッと周りに赤く血が滲み出ている。


「ギョッ!!リーサ様っ!!?」


ユーリルは顔を引き攣らせて叫び、直ぐ様リーサを空中に引き上げ、砂浜に寝そべらせる。

リーサは頭から血を流している。


「何事なんですかっ!?」


イズミルも駆け寄ってきた。


「うぅ…岩礁に頭をぶつけちゃったみたいです…アハハ…」


弱々しく口を開くリーサ。


「回復魔法かけて早くっ!」


ワーキャー


騒ぐ女性陣を遠目見ながら準備体操をするリューセイと…タバコを燻らせながら一人でかなり本格的に砂の城を作っているダルクス。流れ着いていた数本の木の枝を使い分けてカリカリ…と城壁に模様を彫っている。


「ダルさん…折角海に来たのにほんとに泳がないんですか?」


「あ?………俺はほっといて良いから、お前も女共とキャッキャウフフして来いよ」


「…そうですか?んじゃ、遠慮なく」


そう言ってリューセイは女性陣に向かっていった。


「おーーーい!!大丈夫かーーー?」


向かってくるリューセイを見て、怪我を自ら回復させたリーサは急いで海に入っていく。海に入っていた方が水着姿を見られないで済むからだ。


「りゅ、リューセイさん!私は大丈夫ですっ!」


「なんだよ。そんな恥ずかしがらなくても…」


「勇者様!こっちに来ちゃダメですよっ!主人公補正で私達が酷い目に合うんですからっ!!」


ユーリルがジト目でシッシッと手をあっちに行けと振る。


「あのなぁ…」


リューセイもその扱いに思わず顔を引き攣らせた。


「リューセイ様が来ると何があるんですか?」


イズミルが首を傾げながら質問する。

ユーリルは耳打ちをするようにイズミルとリーサにコソコソと話す。


「良いですか?勇者様は異世界から転生してるんです。そういう方の周りの女性はハレンチなハプニングに巻き込まれ易くて…こういう水着回では特にそれが顕著…」


「うぇ〜ヤダー」


「リューセイさん…そんな力も…」


「前の異世界ではそれはもう、そういうハプニングで鼻の下を伸ばしてデレデレだったんですから…まぁ、今の勇者様は【ハーレム症候群】にかかっちゃったせいで…」


「ハックショイ!!何をコソコソ話してんだ!?とにかく気を付けろよー!!」


「わ、分かってまーす!!」


そう言って女性陣はリューセイから離れるように沖に泳いでいった…。


「まるで腫れ物みたいな扱い…!!」


ーーーーー


暫くすると、女性陣はユーリルが持参したビーチボールを膨らませて、海の中で打ち合っている。


「楽しそうだなぁ〜…」


リューセイはそれを尻目に、ダルクスと一緒に砂の城を作っていた。


「あ、おい!リューセイ!よそ見すんな!そこの模様はココの城壁と同じにしろって…!」


「な~にやってるんですか…海にまで来て男二人で…」


いつの間にかドリンクをストローで飲みながらイズミルがジト目で二人を見つめていた。


「なんだガキんちょ!ボールで遊んでたんじゃねぇのかよ」


「ちょっと休憩です!それにしても…本格的ですねぇ〜。かなり凝ってて…」


イズミルが触ろうとすると、ダルクスが声を荒げる。


「ダァー!!ガキんちょ!!触んな!!壊すっ!!」


「こ、壊さないですよっ!私をどんな破壊神だと思ってるんですか!」


「壊してばっかだろお前は」


「ムッ…」


イズミルは頬を膨らませるとドリンクのストローを城の天辺に無造作に刺した。


「お、お前っ!!馬鹿っ!!何しやがるっ!!!」


「余計な事言うからですよ!!…砂の城も良いですけど、折角だし海に入れば良いのに…」


「良い大人は海ではしゃいだりしねぇの!」


「でも取り敢えず水着に着替えるくらいしたら良いのに…暑くないですか?」


「ほっとけよ!俺は泳がないからいいんだよ!」


「"泳がない"じゃなくて"泳げない"だったりして」


ギクッ…


ダルクスは身体を震わせた。

なんとなく言った事に反応があり、イズミルは口元に手を抑えて笑いを堪える。


「…えっ図星!海が初めての私でも泳げるのにっ!」


「……………」


「プープププ!なーるほど、だからココに来てやけに先を急いだり機嫌が悪かったんですね〜?」


「……………」


ダルクスは押し黙っている。


「カナヅチおじ様!私が泳ぎ方教えてあげましょうか?プププ」


少し調子に乗るイズミルに痺れを切らしたのか、ダルクスは立ち上がって無言のままイズミルをヒョイッと担ぎ上げた。


「うひゃっ!!ちょっ、何するんですかっ!!」


そのままダルクスはザバザバと波打ち際に入っていき…イズミルを沖の方に思いっきり投げ飛ばした。


「きゃあ!」


ドパーーーン!!!


手をパンパンと叩きながらダルクスは戻ってくる。


「ダルさん、子供なんだから容赦してあげて下さい…」


「良いんだよ。アイツは海に浸かって頭を冷やしてれば」


その時!


「キャァァァーーー!!!」


唐突にリーサの悲鳴が響き渡る。

リューセイは走って声のする方に助けに向かう。


「どうしたリーサ!!タコに絡みつかれたかっ!?それともカニにビキニの紐を切られたかっ!!?」


「心配の仕方が流石独特っ!!」


ユーリルが思わずツッコんだ。


リューセイが泳いでいくと…リーサは大きな渦に巻き込まれたらしく、ぐるぐると回っていた。リューセイは思わず泳ぎを止めた。


「ゴメン、この状況は始めて見た!!」


「助けてぇぇぇーーー!!!ゴポゴポ…」


そのままリーサは海中に引きずり込まれ、そのまま海流に飲まれ凄い勢いで流されていってしまった。


「リーサぁぁぁ!!!??」


「ど、どうするんですかっ!?あのままじゃ死んじゃいますよっ!!」


ユーリルも焦っている。


「ど、どうするったって…と、とにかくライフガードを呼ぼう!」


リューセイとユーリルは一旦砂浜に戻り、急いで救護所へ向かった。


その途中でダルクスの元を通りかかった。


「今度はなんだよっ!ドスドスと振動起こすんじゃねぇよ!」


「そんな事よりっ!!リーサが!!」


「リーサさんがどうした?死んだ?」


「今まさに死んじゃいそうなんですって!だから救護所に…」


「その必要は無さそうだぞ。ほら」


ダルクスが指を指した方向を見る…と、一周周って流れて来たのか、リーサがうつ伏せでピクリとも動かず砂浜に流れ着いていた。


「り、リーサァァァ!!!大丈夫かぁぁぁ!!?」


駆け寄るリューセイとユーリル。


リーサは目を回して気絶している。

その身体にはワカメやウニが大量に貼り付き魚が何匹も二の腕や太ももに噛み付いてビチビチと跳ねている。


「ユーリル…リーサの心臓マッサージをしてあげてくれ…」


「は、ハイ!」


ユーリルは言われるがまま心臓マッサージを開始した。


「リーサ…ほんと水場に来るといつも溺れてんなぁ…」


「リーサ様を海底で転がせば、漁獲量が跳ね上がりそうですねっ」


ユーリルは心臓マッサージを続けながら言った。


「ゴポッゴホッ…!!」


ピョン!と口から咳と共にエビを一匹吐き出して…リーサは意識を取り戻した。


「うぅ…私またやっちゃいました?」


「いつもの事だから安心しろ!ほんとリーサってこの世の不幸を一手に背負ったようにトラブルに巻き込まれるよな」


「も、申し訳ないです…」


一段落している所にイズミルも泳いで戻ってきた。


ザブザブ


「あのぉ…」


イズミルは何か思案しながら口籠っている。


「どうした?イズミル」


「いや…多分気のせいです!なんでもないです!」


そう言いながら、イズミルは遥か遠くに浮かぶ一つの大きな岩で出来た無人の島に目を向けた。


(誰も気付いてないけど…あそこの島の陰に隠れてるのって…大きい…船…?)




続く…

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