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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第百幕【導かれないすれ違いとそうでない導かれし者達】

【王都・ヤオヤラグーン】

とあるカフェにて。


「お…おまたせしましたっ…!」


ウェイトレスがカチャカチャと震える手でトレイからブラックコーヒー2つとホットココアを一つ、円形のテーブルの上に置くと逃げるようにその場から立ち去った。


そのテーブルを囲むように座っていたのは魔王軍四天王のイクリプス、バッカル、ランドルトブラックの男三人衆の面々だ。


「全く嘆かわしい…」


そう言ってイクリプスはブラックコーヒーを啜って続けた。


「私達が魔族だからと、それだけの理由で怯え…逃げ惑い…怨恨の眼差しを向けて来ます。人間は差別を生きがいにする生き物…というのは本当のようですね」


「確かにさっきまでいっぱい人が居たのに…居なくなっちゃったね」


バッカルは言いながらココアにフーッフーッと息を吹きかけて冷ましている。


「姫様の言う通り…やはり人間には教育が必要です」


言ってイクリプスは目の前の席のランドルトブラックに目を向ける。

腕を組んでジッとしているランドルトブラックは目の前のコーヒーを飲もうとしない。


「ブラックさん。飲まないのですか?冷めますよ?」


「見て分からんか。マスクをしているのだ。飲める訳が無かろう」


「マスクを外したらどうです?」


「ヒーローたるもの…本当の姿を民衆に晒す事は出来ないのだ」


「…じゃあなんでコーヒー頼んだんですか?」


イクリプスはイライラをなんとか鎮めながら、顔を引き攣らせて聞く。


「コーヒーとは薫りを楽しむものだ。フフ…紳士ともあろうものがそんな事も知らないのか。聞いて呆れるな」


「あのなぁ…」


「アンタに奢られた訳では無い。このコーヒーは経費で落ちるのだ。迷惑をかけては無いハズだが?」


イクリプスは顔に血管を浮かび上がらせるも、怒りを抑える。

それを見てバッカルはヤレヤレと首を振り…ふいに思い出したように口を開く。


「そういや…ジャックちゃんはどうしたの?」


「ジャックさんは休暇を取りました。姫様とバカンスに行くとはしゃいでおられましたね…。ヤレヤレ…ほんとに彼女の自由さには困らせられます…。私達は一刻も早く勇者一行を捕らえないといけませんのに…」


「ふ〜ん。ま、ボクは人間を虐めてる方が楽しいし、バカンスとかに興味は無いかなぁ〜」


バッカルは言ってテーブルに突っ伏して続ける。


「あぁ〜〜〜…イズミルちゃん可愛かったなぁ~〜〜…早く見つけて、今度こそはつま先からゆっくりと味わっちゃうんだけどなぁ〜??」


「全く…バッカルくんの凶悪性にも教育が必要な気がします…」


「ねっ!早く探しに行こうよ!前会った所からさほど離れてないハズだよ!」


「まぁまぁ…コーヒーブレイクは優雅に静かに仕事を忘れて…が私のルールです」


イクリプスはそう言って優雅にコーヒーを飲んだ。


ーーーーー


そんな3人が集まるとは露知らず…カフェの外側…オープン席の方に、ガウラベルとアンカーベルトが座っていた。


「クサカベ君遅いねぇ」


アンカーベルトは頼んだカフェオレに刺さったストローをクルクル回し、氷をカラカラいわせながら言った。


「買い物に行くから待ってろって言ってたけど…一体何やってんだか。アタイもう牛乳飲み干しちゃったぞ?」


ガウラベルはテーブルに肘を付いて暇そうにしている。


そんなガウラベルに背後霊のように貼り付くヒュードロド。


しばらくすると…


ガシャン ガシャン ガシャン


と、大きな音を立てて何かが近付いてきた。


ガシャン ガシャン ガシャン


ガウラベルが音のする方に目を向けると…


「おまたせしましたー!」


そうクサカベの声がする。

そこには重そうな甲冑を身に纏ったガチガチ装備のクサカベが立っていた。


「な、なにその格好?」


ガウラベルは目を丸くする。


「何って…今この街で買える一番防御力の高い防具一式揃えたんですよ!」


ガシャガシャン


動く度に音が鳴る。


「やれやれ…それならそうと言ってくれれば良いのに」


ガウラベルはそう言って両手杖を構えクサカベに向ける。


「デフォトル!」


そう唱えると、クサカベは元の姿に戻ってしまった。


「えっ!?あれ!?防具が消えた!?」


「心配しなくて良いよ。防御力はそのままに、見た目だけ魔法で元に戻しただけだから」


「へぇ〜!便利ですねぇ!」


「さて、クサカベも戻ったし…そろそろ行くか」


そう言ってガウラベルは立ち上がり続ける。


「魔王を倒すには【勇者の剣】が必要…それがここ、ヤオヤラグーンで手に入れた新しい情報か」


「噂程度で…それが何処にあるかまでは分からなかったですけどね」


「ここから東にあるカジノ街【ゴルドリーグ】に居る情報屋がそういう伝説に詳しいって話だったよね?」


アンカーベルトも立ち上がり背を伸ばして言った。


「勇者の剣か…。それっぽくなって来ましたね!」


「あぁ。このまま魔王まで突っ切るぞ!………って言いたい所だが…」


ガウラベルは胸の谷間から何かを取り出し空中に投げるとそれをパシッと取ってクサカベに見せる。


チャリン


それは変わった形をした一つのカギだった。


「な、なんですかソレ…」


「フフフ…【マスター(じょう)】さ。この街の高級住宅街を探索中に見つけてさ!今まで旅して来た中で鍵のかかった宝箱とかあったろ?」


「ありましたけど………まさか!」


「そ!ソレを開ける為の鍵ってところだ」


ガウラベルは嬉しそうに言う。


「え!?開けに戻るんですか?」


「鍵のかかった宝箱には結構良い物が入ってるって相場が決まってるんだ。取らない手はないよ!アンタには一度行った街に瞬時に戻れる魔法もあるんだしさ?」


「それはそうですけど…!それでもだいぶかかりますよ!?良いんですか!?」


「まぁ、問題ないだろ!」




【ここでイズミルちゃんの解説ですっ!

宝箱配置では定期的に鍵の開かない宝箱を混じらせていました。理由は2つ!1つ目は鍵を入手した勇者に今一度訪れた街や村に戻って貰い、以降問題は起こってないか勇者にパトロールして貰う為!

2つ目は勇者一行が宝箱配置人に追いつかない為の時間稼ぎ〜!ってな訳で、勇者一行は大人しく鍵付き宝箱を開けに戻って下さいね!】




「ハァ…分かりましたよ。んじゃ取り敢えず…エンエンラ王国の鍵付き宝箱開けに戻りますか?またあそこに戻るんですね…」


「そうしてくれ!」


「んじゃ、【ワーピヨン】(訪れた街や村に瞬時に戻れる魔法)唱えますから…捕まって下さいよ!」


言われ、ガウラベルとアンカーベルトはクサカベの肩に手を置く。

クサカベがワーピヨンの詠唱を始めた…その時!


バコンッ!!


「アイタッ!!!」


クサカベの後頭部を何かが直撃し、よろめいたクサカベの背中に何者かが見事なジャンピングキックをお見舞いする。


「バゴスッ!!?」


ドザザザザーーーーー!!!


吹っ飛んだクサカベは人々の行き交う大通りの中を滑っていく。


スタッ


クサカベが元々居た場所に着地する謎の人物。


「…あれ?」


キョトンとした顔で首を傾げる。

しかし、ガウラベルは即座にその人物に蹴りを入れて反撃する!…も、その人物は"大きな鉄の円盤"でそれを防いだ。


ガキンッ!


「なんだよアンタ!いきなり攻撃するなんて…良い度胸じゃないか?」


「失礼」


その人物はタンッと地面を蹴って後ろに下がる。

白いチャイナドレスを身に纏い…長い白髪を大きな赤いリボンで結んだ華奢な少女。


「僕の名前は熊猫辣(シオンマオラ)。この武器【磁塊鉄盤(じかいてつばん)】を広める為に旅をしている」


その謎の人物の正体は熊猫辣(シオンマオラ)だった。


「勇者が魔王を倒す為に旅をしていると聞いてな。どれ程の強さか試してみたんだが…」


熊猫辣(シオンマオラ)は大通りの真ん中でピクピクと痙攣して倒れているクサカベに目をやって溜め息を吐く。


「なんだ…大した事ないではないか」


そう言って首を振る熊猫辣(シオンマオラ)


「あ、アンタ…」


ガウラベルは震える人差し指を熊猫辣(シオンマオラ)に向ける。


「なんだ?」


「それ、気にならないの?」


熊猫辣(シオンマオラ)はヒュードロドにベロベロベロと全身を執拗に舐られている。しかし、熊猫辣(シオンマオラ)は全く微動だにしない。


「………?なんの事だ?」


気にしてないというか、気付いてないようだ。


「アッハハ!彼女、霊感が著しく無いみたいだねぇ〜!………オバケとはいえ魔物の類だから、余っ程の人じゃないとヒュードロドは見えるハズなんだけど…」


「???」


首を傾げる熊猫辣(シオンマオラ)

どうやら霊感に関しては鈍感なようだ。


「…んなこたぁどーでも良い!!勇者はこれから強くなっていくんだよ!まだ…その…あんなだけど!」


ガウラベルが言った。

しかし熊猫辣(シオンマオラ)は顎を触りながら首を傾げる。


「…だと良いがな。今のアイツにこの世界が救えるとは思えん。だけど…磁塊鉄盤越しの一撃だけで伝わったぞ。貴女の強さ。是非手合わせ願いたいな」


熊猫辣(シオンマオラ)はガウラベルに目を合わせ言った。


「え、アタイ?」


「僕の磁塊鉄盤とどちらが強いか…試してみたい」


「えぇ〜…?なんかベトベトしてそうで嫌だな…」


ベロベロベロ!!と、尚もヒュードロドに舐められ続けている熊猫辣(シオンマオラ)


「べ、ベトベトなんてしてないっ!!ちゃんと風呂入ってるっ!!」


「アハハ!ヒュードロド、彼女から美味しい肉汁の味がするみたいだねぇ!」


アンカーベルトは笑顔で語る。


「とにかく!貴女の力見せて貰いたい!」


熊猫辣(シオンマオラ)は言って磁塊鉄盤を構える。


「一体なんなんだよアンタは…。どうなっても知らないよ…!」


ガウラベルも足をグッと踏み込む。

熊猫辣(シオンマオラ)の決闘を受けるようだ。




続く…

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