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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第三章【導かれそうで導かれない時々導かれし者達編】
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第九十八幕【オトナの遊び場・ゴルドリーグ】

魔王軍四天王との戦いを終え日が沈む前に王都ヤオヤラグーンが営むカジノ街【ゴルドリーグ】にやってきた宝箱配置人一行。


「へえ〜?楽しそうだなぁ!どこもかしこもカジノカジノカジノ…!!」


リューセイが浮かれ気味に言うとイズミルが口を開く。


「リューセイさん?宝箱配置人の仕事の中で、このカジノ街に当たった時が一番大変だと言う人も居るくらい…とても重労働になるんですよ!浮かれてふわふわしてると痛い目見ますからね!」


「そ…そんなに大変なのか…?いつもの通り宝箱配置とか…クエスト発行とか…するだけじゃないのかよ?」


イズミルはチッチッチッと舌を打って指を振る。


「そんな甘っちょろいモノじゃないですよ!それに加えてプラスα…ねっ!ダルクスおじ様!」


イズミルが振り返るも、そこにダルクスの姿は無かった。


「ありゃ?」


「だ…ダルクスさんなら荷車を置いて『絶対勝つ』って言って何処かに走って行きましたよ…」


リーサが言った。


「あのオッサンんんんんん!!!やっぱりカジノで遊ぶつもりだったんですね!?」


イズミルが怒っている。


「まぁまぁ…ダルさんが居なくなるのはいつもの事だろ。俺達でパパッと仕事終わらせよう」


「そんな簡単な仕事じゃないんですって!!」


そこでイズミルからカジノ街に当たった際の仕事の内容を詳しく教えて貰うリューセイ達…


ーーーーー


「良いですか?まずここゴルドリーグには数多くのカジノ施設が乱立してますよね?ヤオヤラグーンが直接運営してるカジノ以外にも、個人事業主が運営するカジノもありまして…その数に紛れて、中には違法に運営してるカジノもあるのです」


「金銭を賭けてるとかか?」


「その通りっ!!」


ビシッ!とイズミルに人差し指を向けられるリューセイはユーリルと顔を見合わせてハイタッチをする。


「カジノはまず現金をメダルに替えて遊ぶ事になってます!それを無視して現金を賭ける事は世界法で禁止になってるんです」


「まぁ…俺の元いた世界と同じだな」


「"現金"を賭ける事は"厳禁"って事ですね…」


リーサが真面目にポツリと言うと、リューセイ、イズミル、ユーリルが苦笑いでリーサを見つめた。


「へぇ…リーサも…そういう事言うんだな…?」


「へっ?……………あ…」


自分が言った事に気付き、リーサは顔を真っ赤にして否定し始めた。


「ち、違いますっ!!今のは不可抗力で…!!狙って言った訳では…!!」


「取り敢えず、続けますよ!…で、そんな違法カジノは取締ります!射幸性を煽って勇者に悪影響が出ちゃうので!!後、景品にも気を付けて下さい。最近、世界法で【強過ぎる武器・防具は景品にしてはいけない】と発足されたばかりでして…」


「へぇ?そりゃなんで?」


「それを狙って勇者がカジノに入り浸っちゃう事象が後を絶たなかったんです!」


「なーるほど…そりゃ確かに…」


「でもそれを無視してるカジノがあったりするんです。ほら、"勇者が寄って遊んだカジノ"って箔が付きますから。どこも勇者を呼び込もうと必死なんです…で、その勇者を呼び込むのに躍起になってる業種がもう一つ…」


イズミルはチョイチョイと手招きして、リューセイとリーサとユーリルに近付く様に促す。

3人は耳をイズミルに近付ける。

イズミルはそれを確認して、静かに口を開く。


「カジノ街の奥側は…その…風俗街なんです…」ヒソヒソ


「ふっ…!!」


リューセイは思わず声を漏らしそうになるが寸でで口を抑える。

続けてリーサが口を開く。


「ふ、ふ、ふ、ふうじょく…って…あの、その、エッチなお店とか…の…」


「そです!」


「はわぁ…!」


リーサが顔を真っ赤にして湯気を出している。


「そもそも勇者は未成年なのでそういうお店は入れないのですが…勇者は別例と触れ込んでたり、キャッチをしてたりとか、本番OKとか、そういうのはモロモロアウトなので。勇者を誘惑するような不埒な店舗を摘発するのも宝箱配置人の仕事です!」


「警察24時で観た事あるぞ。アレを俺達がやるんだな…」


「けいさつ?」


「いや、こっちの話だ」


「とにかくその摘発には…ダルクスおじ様と私が…」


「いやちょい待て!ダメだろ子供がそんな店に踏み込んだら。ほら、なんか、ほら、不埒な事してるかもだろ?」


「大丈夫です!私はそういう行為も動物学的観点からでしか見ないので!!」


「まぁ…イズミルはそうだろうが…そういう問題じゃなく。ここは俺が行くよ」


「勇者様?貴方も未成年という括りなのお忘れじゃないですよね?」


ユーリルは冷ややかな視線をリューセイに向ける。


「あ、そうか…じゃあ…」


リューセイはリーサを見る。


「えっ!?わ、わ、私ですかっ!?」


「だってこの中だとリーサが唯一成人してるし…」


「いぃ!?一番年上はユーリルちゃんじゃ…!!」


「私達女神って、年齢とかって概念が無いんですよね。パッとこの姿で生まれて…成長する事も老いる事もない…言わば"現象が意思持って人の姿を模した存在"なんです」


「そうだったのか!?」


リューセイが驚く。


「そうですよ?…だから人間で言う所の女性の姿だから私は女性と名乗ってるだけだし、人の姿になった時を生まれたとするなら300年以上は経ってる…って話で私達は生物じゃないんです。現象の括りになりますね。それに、厳密、私は宝箱配置人じゃないので」


「まずはお前達の事を研究した方が良いんじゃないか…?」


盛り上がるリューセイとユーリルを遮る様にリーサが声を上げる。


「と、とにかく!!私には無理ですよぉ!!」


しかし、イズミルは少し考えて何かを決めたのか頷く。


「じゃあ風俗街の調査はダルクスおじ様とリーサ様にお願いします(なんか面白そうだし)」


イズミルは屈託のない笑顔で言った。


「あれ!?私の要望はフル無視っ!!」


「…とは言っても、暗くなってからの調査にしましょう。夜の方が摘発し易いんで」


「んじゃ、暗くなるまでは通常通り宝箱配置とサブクエストの用意をメインに…だな。宝箱配置は俺が。ユーリルは家宅捜索許可証を配ってきてくれ。リーサは住民に悩みを聞き出してクエストになりそうなのをピックアップ…イズミルはイベント配置…って感じで」


リューセイがそう言い、リーサを残して各々は仕事に向かって行くのだった。


「ちょっと…!!まだ私はOK出した訳じゃ…!!」


ーーーーー


日も沈みかけ夕方。

とあるカジノの店頭にボーッと立ち尽くすダルクスがいた。


力無くタバコを咥え、今にも口元から落ちそうになっている。


(あそこでヤメとけば…)


そんなダルクスを偶然、アイテムを大量に抱えたリューセイが見つけた。


「ダルさんこんなトコにっ!!アイテム配置手伝って下さいよ!!あの荷車、重くて僕らじゃ引けないし往復が大変で…よくあんな荷車引けてましたね?」


「………チッ」


ダルクスはトボトボと歩き出した。

リューセイはその後を追い掛ける。


「負けたんスね?」


「クソッ………あそこの二択を間違えなきゃ…!!クルブシなら引けてたんだろうな…チッ………羨ましい才能を持ちやがって………腹が立つ………!!」


「ダルさんそこ…」


「あ?」


ブジュ…

何かを踏むダルクス。


「犬のフン…」


「お前なぁ!?もっと迅速に慌てながら言ってくれねぇかな!?」


八つ当たり気味に怒るダルクス。

指を振って踏んだ犬のフンを浮かせた。


「ゲッ!!何を!?」


浮かせたフンを近くにあったリューセイが先程アイテムを入れる為に配置したツボの中にポイッと入れてしまった。


「腹いせに入れておく」


「うっわ!最悪!!えげつない事しますねぇ」


「良いんだよ!!勇者なんて良いアイテムばっか貰えると思って浮足立ってんだ!!たまにはハズレを引く気持ちも味わえってんだ」


(こんな八つ当たりみたいな理由でたまにツボとか樽にフン入れられてたのか…)


「勇者の旅ってのに苦難は付き物なんだよっ!!」


「そんな苦難は嫌だ…」


リューセイはヤレヤレと頭を抱えるのだった。




続く…

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