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エピローグ

 深瀨は、林田ゼミと書かれた金属の扉を静かに閉めた。教授は、部屋の一番奥のデスクでキーボードを叩いていた。ゼミ室には、沢山のテーブルが並び、そこでは、今年4年になったゼミ生が、卒論の為の研究を行っていた。


 そのゼミ生の間を通り、教授のデスクの前に備えてある、小さなテーブルと古い2脚の二人がけのソファーの一つに座った。


 林田教授は、デスクの向こう側で丸い壁掛け時計をちらりと見てから、立ち上がり、深瀨と対面する形でソファに着いた。


「ごぶたさしております。」深瀨は、座ったまま頭を下げた。


「久しぶりだね。深瀨さん」教授は、学生の一人を呼びつけると、お茶を持ってくるように指示をした。「なにか相談があるとか?技術的なものかい?」


「いえ、私的なものです。」


「まさか、仲人の依頼かい?」


「いえいえ、相手が居なくて」深瀨は笑って首を振った。「先生に顧問をしていただいた暗研の喜山 和子のことで伺いました」


「ああ、あの子か・・・君が卒業してから、あの子を巡って散々な事になって、暗研もとうとう解散してしまったね。そういや、警察も彼女の件で訪ねてきたけど、亡くなったそうだね」


「はい、亡くなるまでにいくつかの作品をHP上に載せていました。そして、亡くなってからも、彼女の作品のクローンを載せる者も現れました。」


「ほう、そんなに有名だったのかい?」


「先生、あなたがクローンのHPを立ち上げたのではないですか?」


「いや、私ではないと思うがね」


「先生は、暗研以外にデジタルアート部の顧問もやっていましたよね」深瀨は、鞄からノートPCを取り出しテーブルの上で開いた。


「アート的な指導はできなかったが、ツールの使い方などを指導したよ」


「あのクローンと呼ばれる作品群は、未発表の彼女の作品なのですよ。ただ恣意的に加工をしていましたが」と深瀨は、クローンのHPを表示させ、そのうち一枚の幽霊画を選択し、大きく表示させた。


「これを同じものを、警察の方から見せられました。警察の方は、これを喜山 和子が部活に入って居た頃に作成したものだと言いました。貴方なら、全部持っていてもおかしくはないです。それに、桜色の16枚矩形の作品に・・・AIにより単純な命題を与える事により、ディープラーニングしたAIの嗜好を見極める可能性について・・・でしたっけ?

先生の論文と似ているような解説が付けられていたのです。」


「君は、相変わらず研究熱心というか、執念深いというか・・・」


「喜山 和子に頼まれたのですか?」


「ああ、未発表の作品を公開したいというからね。ただし匿名で、改変した箇所は、彼女の指示によるものだよ。矩形の作品もね、ただあまりにも彼女らしくないので、私なりの解釈を付けたのさ」


「ただ、何故それが私の目にとまる事になったのか、普通ならこのHPに私が辿り着くことはないです」


「瀬川君だっけ、君の部下だろ。彼も君の後輩になるよ。私のゼミの卒業だ。私が彼に教えたんだよ」


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