一周忌
「桜庭の一周忌どうする?」深瀨は、カウンターの横でクラフトビールを飲んでいる遠山彰に訊いた。
「もうそんな時期か、早いな」遠山は、じっとグラスの中の濁った琥珀色を見つめた。
「桜庭が居た間は、本当にプロジェクトがスムースに進んでいたからなぁ。いまだに抜けた穴を塞ぐ事のできる人材が居ないのが、残念だよ。」
「墓前で愚痴立ってダメだよ。」深瀨もまた、遠山と同じものを飲んでいた。強い苦みとフルーティな香りが舌と鼻腔を刺激する。
「あの世にPCが送られるものなら、送りつけて手伝って欲しいものだよ」遠山は、何もない宙を見つめた。もし、そこに霊が居るなら、聞いて欲しい気持ちだった。
「人材を持ってこようとするからだよ、人を育てられない会社は、クズ会社の証だぞ」深瀨は、厳しい口調で言った。遠山の部下が、深瀨が管理するプロジェクトに参入しているものの、力不足なのが否めなく、結果的に自社の人間を使って、レベルを上げさせている始末なのだ。
「ああ、身に染みているけど、なかなか上手く育てられなくてね。」遠山は、詫びるように頭を下げた。
「それより、一周忌だよ。私は花見がてら、墓参しようと思うのだけどさ、皆はどうかな?」
「関係者は連れてゆく。」遠山は、無言のままカウンターの向こうから差し出された皿を受け取った。皿の上には燻製されたナッツが無造作に盛られていた。
「ウチのNPOの連中は、三々五々に仕事の合間を見て各自行くって、この世に貧困がある限りは連中も暇がないからね。会社関係だと、瀬川を連れて行くよ、生きて居る間に散々プロジェクトでお世話になったからね。墓の前で土下座付きで、感謝の言葉を言わせてやろうかと思っている」
「おいおい、瀬川君ってあの気の弱そうな子だろ、鬱になったらどうする気だ」
「大丈夫、あいつはああみえて打たれ強い」深瀨は、空いたピルスナーグラスを掲げると。カウンターの中にいるミストレスに声を掛けた。
「天使の誘惑をダブルで、チェイサーもね」
「相変わらず、ハードリカーが好きですね」カウンターの女性が、深瀨からグラスを受け取りシンクに入れると、ロックグラスを棚からとりだした。深瀨は、その軽やかな手の動きから目を逸らしして、遠山に目を向けた。
「冗談だよ。流石に、そこまでやったらパワハラになる」
「安心しました。」と言ってミストレスはグラスを深瀨の前に置いた。「瀬川さんは、かなり気が小さい方とお見受けしましたので」
「楓さん、優しいなぁ。また奴を連れてくるよ。まもなく第二フェーズの納品が終わるからさ、小さい打ち上げぐらい此処でやらせてちょうだい」
「こんな小さなお店ですから、そういうお話はちょっと」栂坂 楓は、店の中を見回した。5席程度のカウンターと、二人席が二つだけの狭い店に過ぎない。店を切りもりして居るのも彼女一人だった。
「隣の酒屋の店主に言って広げて貰えばどうだい?」遠山は、ビールを飲み干した。「俺はお替わりで」とグラスを差し出した。
「もともと、角打ちの場所をこっちに移したようなお店ですし」と栂坂は笑みを見せた、やや垂れ目で、右目の下の泣きぼくろが、彼女を可愛らしくも、悲しそうにも演出する。「だから、酒屋のお客さんに、ここで安く試飲して貰うことぐらいしか当初は考えて居なかったんですよ。あわよくば、お店の方で一本買っていただけますから」と、カウンターに背を向けて、4つあるビールサーバーの口がねの一つに、口周りの広いグラスを当てた、濁った琥珀色の液体がグラスに泡と伴に満たされてゆく。
「今では、こうして小さいながらクラフトビールの製造まで手を出しているのだからさ、広くするべきだと思うな」遠山が、ポリッとナッツを口の中で砕いた。
「はい、和樺です。」と栂坂は、グラスを遠山の前に置いた。遠山の大きな手が、それを鷲づかみにした。
「あと、お酒だけだと、お口が寂しいでしょうから、お隣の酒屋の品物ですけど」と栂坂は薄茶色の四角いものを小皿に入れて、二人の前に各々置いた。小皿に脇には爪楊枝が添えられていた。「お豆腐の酒粕漬けです。」
「おいおい、これは日本酒の時に出してほしいなぁ」と遠山が、爪楊枝を手にして、柔らかくなったそれを、小さく崩してから口にした。「いたずらしたね」
「ちょっと、黒胡椒を……」と栂坂は悪戯っぽく笑った。「それならビールでも大丈夫でしょ」
特に、キッチンらしいものが無く、小さい一つ口電気コンロがあるだけなので
この店では、既成品くらいしか出せなかった。それでも、栂坂は僅かに手を入れるだけでそれなりの酒肴にしてくれた。
しかし、食事と言えるものは出ないので、客は、充分に飲食をしてからこの店に来るか、店を出てから駅前のラーメン屋か牛丼屋に行くのが常だった。
深瀨は、度数の高い焼酎を空けると勘定を渡し、未だ粘っている遠山に「じゃあまた」と言って。席を立った。
まるで普通の家の引き戸のような出入り口を開け、外に出ると街灯の少ないバス通りの両脇には、住宅が建ち並ぶ。
まだ冷たい春の風を頬に感じてふと振り返ると、イーゼルに立て掛けられた白板に、樽屋という文字がクリップライトで照らされていた。
その隣には、すでに閉店時間になっているが、大きな間口を構えた樽屋酒店が大きな看板を掲げていた。
家飲み用に、天使の誘惑をボトルで欲しいなと、深瀨は両手をスプリングコートのポケットに入れて、歩きはじめた。
☆
会社の昼休み、弁当男子である瀬川 剛が食事を終え、何時ものルーティンとして通勤用に使っているリュックから私用のノートPCを取り出して机の上に置いたのを見計らって、深瀨は声を掛けた。
「どうだい、調子は?」
「あ、特に問題はないです。」とまるで恥ずかしい本を隠すように、慌てて瀬川はPCを閉じた。長いストレートの髪を肩まで伸ばし、女性ならうらやましがるような、ほっそりした体型は、昭和時代のフォークソングの歌手を想像させる。
「別に隠さなくていいよ。お前のモノなんだし。それより、桜庭 柊子の一周忌を来月にやるからさ、空けておいてくれないかな、当然仕事があればそっちを優先してもらうけど」
「何時ですか?」
「3月21日、実際の命日にやりたいけど、多分祝日じゃないと皆時間が割けないからね」
「春分の日ですか、大丈夫です。」
「じゃあ、メンバーに入れておくから、2次会は何時もの酒屋でね」
「樽屋ですか?」
「不満か?」
「いえ、あそこ酒肴が少ないから」
「楓ちゃんが、適当に作ってくれるってさ、それにお酒を飲んでくれるなら、持ち込みをして良いと言ってくれたよ。ダメなら駅前で牛丼でも食べてから来ればいいさ」と深瀨は瀬川の肩をぽんぽんと叩いた。
「じゃあ頼んだよ」と席に戻ろうとする背中に、瀬川が声を掛けた。
「先輩」
「何だい?問題でも?」
「いえ、深瀨さんなら興味あると思うのですけど。桜庭さんのデジタルコンテンツで、未発表ぽいのが出ているの知っています?」
「まさか、亡くなって一年経っているし、彼女のPCは遺言で私が預かったままだぞ、そんなもの出てくるはずないだろ」
「でも、見てくださいよ」と瀬川は、PCを開くとエクスプローラーを立ち上げて、【画像】と記載されたフォルダを開いた、その中に【秘密】という名称のフォルダもあったが、【桜庭】というフォルダ名も存在していた。それを開くと、多くの画像ファイルが一覧になって表示され、彼が更新日付タブをクリックすることで、ファイルは日付順にソートされた。
【九相図補完1】というファイルをクリックすると、地面の上で腐敗が始まり、皮膚が壊れはじめた屍体の横に青葉を茂らせる木が立っていた。
「桜庭さんの最後の方の作品群の一つ、『死記』は確か九相図の脹相、血塗相、たんそう、骨相と桜の四季…夏から春の移り変わりを表した4作品で成り立っているものです。おぞましい絵ですけど、屍体の図は有名な小野小町九相図のパクリだと桜庭さんもHP上で解説していました。その九相図の中で桜庭さんが使用していない5つの場面が、なかなか上手に描いてあるのですよ」
「あれは、確かにぞっとするものだけど。何処でこんなの手に入れたんだい?」
「ここです」と瀬川は、ぐいと深瀨の体が背中に密着するのを感じながら、エッジのお気に入りを開き、山鍋 楓花のクローンの部屋と書かれたHPを開いた。
そこには、確かに見知った画風のデジタルアートが一覧で表示されていた。どれも、数千円程度のものだ。しかし、どれひとつとして、深瀨が知っている絵は無かった。
「誰が、こんな物を?」と深瀨は、より瀬川に密着する感じで、ディスプレイをのぞき込んだ。彼女の胸の感触を背中に感じ、瀬川は息が荒くなりそうになるのを必死で堪えた。
「ちょっと貸してと」深瀨は、さらに密着してPCを瀬川の背中越しに操作をはじめた。瀬川は、気が遠くなるような気持ちのまま、ずっとこのままでいられたらどんなに良いだろうと思っていたが、やがて体がすっと離れてしまった。
「最後の方に説明があるな…小さいフォントだけど」とディスプレイを指した。
「このデジタルアートは、亡くなられた山鍋さんの絵をAIに読み込ませ、作成したものです。従って山鍋 楓花氏の作品では無いことをお断りしておきます……だってさ」
「AIが作成?」瀬川は、膨らんでしまった下半身を隠すように、前かがみになりながら、文章と絵を交互に見た。「凄い人がいるものだなぁ」
「いずれ、瀬川くんもそうなるように期待しているからね」と言うとそっと耳打ちするように耳元に口を持って行った。低い声で、忘れたらただじゃ置かないぞという意味も込めて・・・
「あとで、このHPのアドレスを私の私用アドレスにメールしてくれないか」
瀬川は、思わずぞくっとして、頷いただけだった。
☆
自宅に帰ると、瀬川から送られてきたメールを確認し、そこにコピペしてあった、アドレスをクリックしてHPを表示させた。
背景には、おどろおどろとした、幽霊画が見え隠れし、表題には【山鍋クローン】と大きく表示されていた。その下には縮小表示された、作品群が縦に並んでいた。
それらの作品は、桜庭が作成した4枚の九相図を補完した5枚の作品の他に、彼女が常日頃テーマとしていた生と死を感じさせる作品が多い。
しかし、どれも既存の作品を元にして、素材を変えたようなものばかりが目立った。販売価格は、桜庭が公開していた絵の価格と大差ない値段設定にしている。
興味深い人だなと深瀨はディスプレイを眺めながら、缶ビールを飲んだ。香りが独特なよなよなエールだ。桜庭 柊子は山鍋 楓花というハンドルネームで作品を作成公開していたが、不気味な作品が多いためかファンは、それほど多くは無い。
しかしその分、熱心な固定層も存在していた。当然、唐突に新作が発表されなくなり、(深瀨は、桜庭のHP作成にも携わっていた関係で、彼女の死後にその旨をHPに記載し、作品はHPでの参照のみで、ダウンロードは不可と変更していた)
彼女の新しい作品を渇望していたファンにとっては、たとえクローン作品とはいえ、心の安寧には必要な存在になると思われた。
ホームページ上のコメント蘭には、まるで本人そのものの様で、素晴らしいという、絶賛するものや、本人の作品で無いものをこの様な形で発表するのは、如何な物かという、批判的な物まで毀誉褒貶が交じっていた。
-まあ、当然と言えば当然か-深瀨の目は、コメントを読み続けた。
この作者は、ハンドルを偽鍋 狂菜と名乗っていた。どこか河鍋 暁斎を思いださせるハンドルだった。確かに、暁斎を感じさせるような幽霊画をモチーフにしたのさえある。
多分AIに暁斎の画集からスキャナーで読み込ませた画像を、ディープラーニングで作られた山鍋 楓花により処理させたのだろうと思われた。
桜庭もまた、幽霊をテーマにした作品を描いている。しかし、彼女の作品には、おどろおどろさよりも、哀しみのようなものが感じとられたものだった。
しかし、これらの絵には、そういうものが存在しなかった。
-やはり、違う。-深瀨はそう思いつつも、こういう形で桜庭の絵を模倣しようとした、人物と連絡を取りたくなった。
HPの最後の方に、連絡先のメールアドレスが記載されていたため、彼女はそれに簡単な伝言を入れて送信した。
☆
その週末に、深瀨はかつて桜庭が暴漢に襲われ記憶を失った現場を久しぶりに訪れた。桜庭に出会ってしばらくの間、彼女に関しての手がかりが残っているかもと、この一帯の家々をあてもなく訪ね歩いていた時期があった。
ホームレスの野原とは、そういった時期に此処で出会った。そして彼女が、一時期遠く離れた河川敷の高架下や駅のホームを草枕にしていた事を知ったが、それ以上の事は彼の口から出る事はなかった。
いきなり季節が戻ったため彼女はダウンコートを着て公園に佇んで、辺りを見回していた。女性としては背が高い彼女は、通りを行く人々の目を引いた。
そんな人目を気にすることなく、彼女の視線の先にあるのは、かつては無かった大きなマンションだった。そういえば、あの頃は、周りの住宅地の塀にはマンション建設反対の段幕があちこちに掲げられていたものだった。
まぁ、土地が買収されてしまえば、反対を叫んでも工事は進んでしまうものだろう。そういや、この公園にも、買収反対の立て札があった筈だ。すると、マンションは建ったが、小さい公園はそのまま残されたのだろう…
マンションの方からやってくる車が、公園の横の細い道に入る前に、停止した。するとバス通りから右折して公園横に道に入り、マンションの方からやってきて停止した車の横を軽くクラクションを慣らして通り過ぎて行った。
この公園の横だけ、車の幅一台分しか無いからだ。できれば、公園を潰し、広い道にしたかったのだろうが、公園を買収できずにそれが出来なかったのだろう。
-ここに佇んでいるだけでは、過去の遺物は何処にも見つからないだろう-深瀨には判っていた。もう何年も経っているのだ。
-何を私は探しに来たのだろうか?-自分に問いかけても、冷たい微風が頬をなでるだけだった。
-知りうる限り如何なるデータベースにも現われない女性。-
-誰からも探されていない女性。-
-あるいは、そもそも天蓋孤独の身だった女性。-
-河川敷や駅のホームレスと共に生活をしていた女性-
-記憶という最低限の身分証を失った女性-
-しかし、彼女は生きていた。記憶を失う前も人との接点はあっただろう-
-ならばまだ見逃している事実が隠れているのは、間違いないだろう-
-それが分からない・・・-
自答自問ばかりを続けて居る内に、過去という牧草を何年も反芻し続けている牛のような気持ちになった。
-そもそも彼女は、新しい名を新しい人生を得てそして、過去と切り離されて死んで行ったのだ、いまさらそれをほじくり返してどうなるというのだ。-
-私は部屋にある分骨の行き場を見つけようとしているのだろうか?誰にも探されていないというのに。-
頭を左右に振ると、彼女の湿気で縮れた長い髪が左右に揺れた。そして、公園を出ようとすると、公園の隣の屋敷から霊柩車が出てきた。
たしか、壮年の人が住んで居なかっただろうか、いやあれからの年月を考えると初老になっているか、名の知れないホームレスと思われる女性の顔写真を片手に、見かけたことがあるかと、方々訪ねあるいた時に、出会った一人だ。
確か、喜山 秀樹と言ったか?気になって、喜山の表札が門にしっかり取り付けらえた奥を覗いてみれば、どうやらその時の男の葬儀が執り行われていたようだった。
今の平均寿命を考えれば、未だ若い方なのにと考えつつ、その場を去った。
桜庭の絵を模倣した人物からの連絡は、未だ無かった。得体の知れない奴からのメールの返事は無視するだろうな、と彼女は考え、しつこくメールで催促することもしなかった。
☆
大きな墓地の一角が、樹木葬用に整備されていた。そこに、桜庭の会社の関係者と、深瀨と瀬川が半円を描くように、蕾が膨らみ先がほのかにピンクを帯びている桜の木の周りに集まった。
3月にしては、暖かな東風が吹き抜けて行った。まもなく開花が近いだろうと思われた。各自、手を合わせては、わずかな思い出話に花を咲かせたが、あっさりと帰宅の途に就いた。
その夕、樽屋でビールを飲みながら故人の話で盛り上がっているところなのに、瀬川は、携帯ばかりを操作しており、会話の中に入ろうとして来なかった。
あまり飲めない方だから、やはり誘うべきではなかったかなと、深瀨は時々後ろを振り返り、二人がけテーブルを独占したままの瀬川の様子をみていた。
料理は、栂坂が自宅で調理して持ってきたという、牛ホホ肉のワイン煮込み、豆鰺の南蛮漬け、大根とホタテのサラダ、冷食のポテトフライ、餃子にミートソースを掛け上にシュレッドチーズをまぶしてオーブントースターで焼いた、栂坂曰く餃子グラタンが用意されていた。
ビールや日本酒、焼酎の注文があちこちに飛び交うなか、栂坂は一人で奮戦していた。「ちょっと、楓ちゃんを手伝ってあげな」深瀨は瀬川に小声で指示をした。わずかな人数とはいえ、一人で切り盛りしている栂坂の姿は、いじらしく思えた。
瀬川は、頷くとカウンターに移動し、栂坂が注いだ酒を手に持って注文した者の手に渡す作業に入った。瀬川以外は、みな健啖家であったので良く飲み、良く食べていた。
酒肴が尽きはじめると、栂坂はここぞとばかりに、スナック菓子をボウルに入れたり、オイルサーディンの缶を開け、ニンニクのスライスを放り込むと、そのまま一つしか無いコンロに掛けて温めたものを出したりした。
やがて宴も終わりを告げ、各自使い終わった食器をカウンターに運んで行き、栂坂がシンクで洗いものをはじめると、瀬川はすすぎ終わったものを拭いたり、テーブルの上を綺麗にしたりして、栂坂の作業を手伝った。
ひとりまたひとりと樽屋の扉から外に出て行った。明日は各自仕事があるので、さらにはしごをするには、皆、躊躇いがあった。深瀨が、静かになった店で、最後の一杯をねだろうとしていると、スツールの隣に瀬川が座った。
「一杯付き合うかい?」深瀨が訊くと、瀬川は首を振った。
「まさか、深瀨さんと飲むと殺されちゃいます」
「殺しはしないよ。お前が自滅するだけだろ、それよりなにか用かい?」
「あれから、山鍋クローンのHPは見ましたか?」
「ああ、最近見てないな、新作も出ていないみたいだし」
「じゃあ、時間があったら見てください、妙な絵が出ているんです」
「妙?どんな風に?」
「いえ、多分見て貰った方が早いです。僕の口じゃあ表現できないです」
「判った、帰宅したらHPに寄ってみるよ」そう返事をすると、瀬川は、お先に失礼しますと言って、店を出て行き、深瀨はカウンターに新たに置かれたグラスに口を付けた。
「水?」
「明日は平日なのに、今日は一寸、何時もより過ごしているようなので・・・」と栂坂は、笑った。