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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第一章~大干支珍道中~
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分身・リトルミー

マダコちゃんのイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=4955


星美ちゃんイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=34832

 どこから鳴ったのか、ジャジャーンと効果音が場を盛り上げる。

 するといつの間にそこへ隠れていたのか、大きさ以外は瓜二つの小さな星美の姿。


 まるで見世物(ショー)の主役のように、少女の姿がライトアップされいく。

 リトルミーと呼ばれたその娘は、自分に注目が集まると分かるや、平らな胸を弧に反らせて満足気な表情を浮かべた。


 どうやらこの子も真多子(マダコ)星美(スターミー)と同様に目立つことが好きらしい。

 物凄い勢いで調子に乗っており、見えない声援でも受けているのか優雅に手を振っている。


「セーンキュウ!! リトルミーに何でもお任せしてくだ、サイ!!」


「わ~! 小っちゃいミーちゃんもおはよ~! 今日もお人形さんみたいで可愛いね~!」


「ヤァヤァヤァ、それほどでも……ありマース!!」


 まるで犬猫でも拾うように真多子がリトルミーを抱き上げると、頬ずりしながら撫でまわす。

 完全に扱いがペットのそれなのだが、撫でられている当人は特に気にしていないらしい。


 小さくても態度のデカくてふてぶてしいヤツだ。

 それにそのポジションはちょっと羨ましい。


「おいおい、どう考えたってコイツを替え玉にするのは無理があるだろ」


 真多子達が和やかなムードを作っているところ悪いが、流石に僕も口を挟まずにはいられなかった。

 しかし僕が口を開いた途端、星美がキッと眼を吊り上げて噛みついてくる。


「シャラァップ!! お黙りデース!! リッスン!! こんなにそっくりだというのに、一体どこに不満があるのデスカ!?」


 どこ、と言われても一目瞭然だろう。

 本当に言わないと分からないのだろうか、頭が痛くなる。


「いや、真多子ですら一目で見分けてるほど大きさが違うんだから、一瞬で先生や学友にバレるだろ……」


 星美(スターミー)はヒトデの特性を持って産まれた魔人類(キマイラ)である。

 身体を切り分けて小さな分身を作れるのだが、まだまだ未熟なためか分身体(リトルミー)は半分ほどの背丈までしか成長しないのだ。


 それでも数が集まれば色々と便利な能力ではある。

 毎朝のアサリ集めは彼女達の力があってこそなのだから。


「だいたいそんな中途半端な分身で変わり身なんて100年早いって。 また先々代に怒られるぞ」


「ウグッ! 痛い所を突かれたマシタ!! マスターを持ち出すのは反則デース!! タコロウのくせに生意気、デスヨ!!」


「小太郎な、コ・タ・ロ・ウ」


「タ・コ・ロ・ウ・デース!!」


「こいつ……」


 星美はわざと名前を間違ってるのかと思うくらい、僕のことを毎度タコロウと呼んで来る。

 その都度、僕も訂正するのだが。


 それに星美のマスター、先々代からの稽古は僕も受けている。

 だから関係性は僕が兄弟子ということになるはずなのだが、コイツから敬意というものを受けたことが無い。


「はぁ……いい加減諦めて、大人しく授業に戻るんだ。 それと分身の方も戻しとくんだぞ、コッソリ追跡させたってすぐ分かるんだからな」


「そうだよミーちゃん。 迷子になったら大変だもんね!」


(いや、流石にそれは子供扱いし過ぎだろう。 星美もちょっと傷付いてるようだぞ)


 頼みの綱の真多子にも注意されたのがよほど堪えたのだろう。

 分かりやすくショックを受けた表情で青ざめている。


 常に声も張っていれば、喜怒哀楽もハッキリしており、相変わらず役者のような忙しないやつだ。

 見ている分には飽きないので、これで僕のことを敵視しなければ可愛い妹分なのだが。


「グヌヌ……で、でも納得できマセン!! お姉さまがこんなスケベと一緒にいるなんて嫌デース!!」


「そうデース!! デンジャラス、デスヨ!!」


 分身体まで使って数の民意でゴリ押そうと最後の悪あがき。

 眼には涙まで溜めて、今にも零れ落ちそうである。


 そうやって駄々をこねるから、真多子からも子供扱いされているのだろうに。

 というか、泣くほどに僕と真多子が一緒にいることが嫌なのが、地味に傷付く。


(それとスケベは余計だろ……みんな言って来るけど、僕はそんなにスケベ顔に見えるのか?)


 自分ではそこそこの顔だと自負していたのだが、年頃の女の子に面と向かって言われると中々にダメージがあった。


「も~、コーちゃんはそんな悪い人じゃないから大丈夫だってば~! ミーちゃんも良い子なんだから、人のこと悪く言っちゃダメだからね、メッ!」


 苦虫を噛み潰したような表情の僕を見かねて、真多子が助け舟を出してくれた。

 躾けのために星美のキラリと光るオデコを指で弾くと、泣きそうな彼女を胸に抱き留めてあやしている。


(うぅ、僕のことを認めてくれるのは真多子だけだ。 やはり僕には真多子しかいないな……!!)


 一方、僕は思わぬところで彼女への想いを再確認することが出来た。

 じんと胸に染みるこの気持ちを噛みしめていると、ようやく星美も落ち着きを取り戻したようで真多子から離れる。


 顔上げた彼女の表情は心底不満そうで、不貞腐れているのを隠そうともしない。

 それでも消え入りそうな声で、なんとか言葉を絞り出す。


「わかりまシタ……今日のところは引き下がるデース。 でも!! いつかそのポジションはミーが奪ってみせまマース!! せいぜい覚悟しておくことデース!!!」


「覚えてろデース!!」


 お決まりの捨て台詞を残すと、分身体(リトルミー)と共に星美(スターミー)が走り去っていく。

 現れるのも突然なら、消えるのも突然で、なんとも嵐のような騒がしいお子様である。


 それと星美には悪いが、真多子の横は死んでも譲る気はない。

 口には出さないが、僕はお子様に対して小さな優越感を抱いていた。


「授業頑張るんだよ~! 友達と喧嘩しちゃダメだからね~!」


 真多子の方は、走り去って小さくなる後ろ姿へ温かい声を送っている。

 星美のご両親が不在の間は、いつも母親代わりになっているのだ。


 こういう面倒見の良さが、あの娘に懐かれる理由なのだろう。


「ふぅ、なんか朝からどっと疲れた気がするな。 腰が重くならないうちに、早く報告済ませて一休みしていこう。 帰りにどこか寄っていきたい茶屋とかあるか?」


「お茶していくの? いいね~! コーちゃんと一緒に行くなんていつぶりだっけ、どこにしよっかな~!」


 そういえば二人で茶屋に行くのは久しぶりだったか。

 僕はあまり甘いものが得意ではないので、積極的には行かないからだろう。


 それでも今は、何でもいいから糖分を採って頭を癒したい気分だったのだ。


「まぁそんな直ぐにじゃなくて、帰りまでに決めてくれればいいよ。 官邸まで歩きながら考えよう」


「えへへぇ、うん!」


 真多子が今日一番の笑顔を浮かべて頷いた。


 この顔が見れたのだから、あの騒がしいお子様も役に立ったと前向きに考えよう。

 真多子と茶屋に行く口実も出来たことなのだし。


 止まっていた脚を再び動かすと、真多子と二人並んで大通りを抜けていくのであった。

初めての作品のため、色々と間違っている所があると思いますので、ご指摘・アドバイスなどをいただけると助かります!


よろしければ、評価・コメント・ダジャレなどもいただけるとも~っと嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 舞台的に考えて……出合茶屋ですねわかります。
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