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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第一章~大干支珍道中~
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海底の星

マダコちゃんのイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=4955


星美ちゃんイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=34832

 早起きすると、何故かいつもより腹が減る気がする。

 あるいは真多子(マダコ)のタコスミを寝起きに舐めたものだから、腹がその気になってしまったのかもしれない。


 結局あの後に白飯を2杯もお代わりしてしまった。

 胃がどっしり重く、思考の巡りもゆったりと微睡む。


(ふぅ、腹いっぱいに飯を頬張るのは多幸感(たこうかん)で満たされるなぁ。 でもこの満腹感に慣れてしまうと遠征が辛くなるだろうし、なるべく自制しないと……)


 それでも先々代はあの御歳で4杯もお代わりしてたのだ、僕は小食な方だろう。

 魔人類(キマイラ)は身体が資本、みんな大食漢で米は山盛り食べるのだ。


「お待たせ~! 洗い物終わったよコーちゃん!」


 茶の間で腹鼓(はらつづみ)を打っていると、割烹着を畳む真多子が台所から顔を覗かせた。


 ウチの家事はほとんど真多子がやってくれるので、彼女には感謝してもし足りない。

 僕がやるのは精々井戸の水汲みと床磨きくらいだろう。


 僕の数少ない特性が現れている腕の力を鈍らせるわけにもいかないので、日々の日常でも自然と鍛えられる仕事は引き受けているのだ。

 それでも真多子は僕の身の回りのことを全部やりたがるのだが、先々代が釘を刺してくれたので僕の居場所はなんとか確保されている。


 家族とはいえ僕は居候みないなものだし、家で何もしないでいるというのはどうしても居心地が悪い。

 そういう諸々を先々代が察してくれたのだろう。


「いつもありがとうな。 それじゃ、昨日の報告に行こうか」


「りょーかい、レッツらゴー! おじいちゃ~ん! 行ってきま~す!!」


 真多子は元気いっぱいに頷くと、裏庭の方に向かって声を張る。

 食後すぐに自室へ戻った先々代に留守を任せたのだ。


 着替え終えた真多子を連れて家を出ると、大干支(おおえど)の繁華街へと脚を向ける。

 目指すは、()の国の首都大干支のさらに中心部、国主(こくしゅ)のいる官邸だ。


 一歩踏み出すと、外は既に初夏の涼しい風と眩しい日差しが出迎えていた。


 街道の捕物事件から一夜明け、また太陽が飽きもせず登っている。

 あれだけ苦労したというのに、大干支の街は昨日と同じような変わらない日常を送るのだろう。


 捕まえたあの盗人の女転生者は、たまたま事件の一部始終を見ていた『善良な一般人』から国守(くにもり)へと引き渡されており、僕達の出番も既に終わっている。


 聞き出した他の盗品も確認済みで、そちらも国守に伝えたから回収してくれるだろう。

 元の持ち主へ返す手続きなどは国がやってくれるはず。


(盗まれた人々、特に昨日見た魚面の男なんか泣いて喜ぶのが目に浮かぶな)


 こうして手柄は国主とそれに従う国守達へと取られてしまうわけだが、国が感謝されるのは良いことだ。

 そもそも僕達は忍者、顔を売るわけにはいかないのだから。


「えへへ~! これでアタシもヒッパリダコの人気忍者へ一歩近づいたかな?」


「いやいや、忍者が目立っちゃダメだろ。 先代だって名前が売れ過ぎて引退したんだぞ」


 先代頭目、僕の親父殿はこの国から姿を消している。

 優秀なのだが、優秀過ぎた故に他国から警戒されてしまったのだ。


『獲物は風吹く隙間にも怯えだす』


 こんな言葉が風間姓になぞらえて広まったほどである。


 実際、厳重に警備された他国の重役を人知れず殺めたこともあるらしいので、あながち嘘でもない。

 それどころか神出鬼没で八面六臂、必ず獲物を仕留める暗殺から諜報謀略、人攫いまで何だろうとこなしてみせた。


 まだ中央が純人類(ヒューマン)達による自力統治を成す前の時代は、それはもう世間を引っ掻き回したのだという。

 だがそれも巳の国の国主が代替わりするタイミングで、時代の闇として葬られてしまった。


 今の国主は干支連合(えとれんごう)としての結束を重視しており、親父殿を抱えていては信頼を得られないからだ。


「え~、コーちゃんのお父さんカッコイイじゃん! アタシもあんな風になるのが夢なのに~!」


「あれのどこが……息子に顔も見せたことのない親だぞ」


 僕は幼少期に離れて暮らしていたため、親父殿との思い出なんて何もない。

 だからカッコイイなどと言われても想像がまるで出来なかった。


 逆に、真多子は先代から直々に稽古を受けていたから面識があるのだ。

 そのせいか、こういう風に親父殿から悪い影響を受けてしまっている。


 忍者とはもっと慎ましく、世を忍んで生きるべきだ。


「顔かぁ……う~ん、そういえばコーちゃんは会ったことないんだもんね。 ミーちゃんもおんなじ気持ちなのかなぁ?」


星美(すたーみー)はそれでも年に何度か会えてるから大丈夫だろ。 愛情を受けているのはしっかりと伝わってるはずだ」


 ウチにいるもう一人の家族を想い、珍しく暗い表情を見せる真多子。


 似たような境遇だからか、星美がどれだけ恵まれているのか僕には分かる。

 それを教えてあげることで、少しでも暗い気持ちを払拭してあげることにした。


「それにあの娘には、お前や先々代がいるから寂しくないさ。 特にお前には本当の姉妹みたいに懐いているだろ?」


「えへへぇ、たしかに! じゃぁコーちゃんも混ざれば幸せいっぱいだ!」


「いやぁ……僕はどうも好かれてないみたいだけど……」


 真多子が僕のことばかり構うものだから、星美(すたーみー)は妬いているかもしれない。

 小さな子供らしくて可愛らしいが、正直どう接していいのか手に余っている。


「え~!? ぜんぜんそんなことないよ~! 今度一緒にミーちゃんと遊べばきっと分かるって!」


 当の真多子がむしろ全然分かっていないようだ。


 そんなやり取りをしながら繁華街の大通りに入ると、丁度煩いあの声が耳に入って来る。


「ストーッッッッッップ!! ハレンチな行いはそこまでデース!! ナウ!! 今すぐお姉さまから離れるの、デス!!」


 噂をすれば影が差す、件の星美(すたーみー)がなぜか学校の外にいた。

 金髪蒼眼のまだまだ未成熟な身体を僕と真多子の間へと捻じ込むと、グイグイと僕を押しのけて来る。


 魔人類(キマイラ)の彼女だが、成熟する前なので見た目は純人類(ヒューマン)とさほど変化はない。

 もちろん力だって僕よりも弱いので、当然押しのける事なんて出来ず、徒労に終わるのだが。


「はいはい、離れるから。 これでいいだろ? それで学校はどうしたんだよ、まだ昼前だぞ?」


 僕が三歩ほど後退ると、それでも警戒しているのか真多子の前で仁王立ちして立ち塞がった。


「あっミーちゃんだ! 今朝はアサリありがと~」


 真多子はこれを見ても、頑なに僕と星美が仲良いと思っているのだから不思議だ。

 一切の疑問を抱かず、呑気な顔して星美の頭を撫でている。


「ホワイ? なぜってそんなこと決まってるデース!! トゥデイ!! 今日は課外授業の日なの、デス!! ハァ……大人なのにそんなことも知らないんデスカ?」


 言われてから周囲を見渡すと、確かに星美(すたーみー)と同じくらいの子供があちこち出歩いていた。

 そんな僕を見かねてか、星美は肩をすくませ、ヤレヤレと首を振って落胆している。


「いや、そんなこと言われても、僕はこっちの学校通ったことないんだから知るわけないだろ……」


 僕は物心ついてすぐの頃、右眼から得た転生者の知識を口にした途端、中央学校の寮へと送られてしまったのだから。

 その間は夏休みや冬休みにしかこちらへ帰って来れなかったため、知りようが無い。


 転生者は前世の記憶を持つことから、新しい親との関係があまり上手くいかないことが多い。

 彼らのほとんどが15~18歳でこちらの世界に来ているため、元の両親のことが忘れられないのだそうだ。


 そして環境の変化や孤独感から心を病む者が多く、それを和らげるためにも転生者だけを集めた特別な全寮制の学校が用意されているのである。

 特に、前世の記憶という共通の話題が話せるのは、彼らの精神を安定させてくれるようだ。


 もっとも、僕にとっては逆効果で、周囲に転生者しかおらず孤独感に悩まされていたが。

 卒業してこちらへ帰ってこれた時は、心底ほっとしたものだ。


「ともかく、僕達は仕事に行くんところなんだから、お前も早く授業へ戻るんだ。 お子様は勉強が仕事だろ?」


「ノーゥ! ミーは子供ではなく、立派なレディデース!! 今度子供扱いしたら、シバキ倒し、マス!! ノープロブレム! それに授業ならリトルミーが出るから平気デース!!」


 星美が一歩横にズレると、なんとその後ろから半分ほどの背丈に縮めたもう一人の星美が出現した。

初めての作品のため、色々と間違っている所があると思いますので、ご指摘・アドバイスなどをいただけると助かります!


よろしければ、評価・コメント・ダジャレなどもいただけるとも~っと嬉しいです!!

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