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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第二章~中央事変~
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デリバリーチャンス

マダコちゃんのイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=4955


マイカのイメージ画像はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=41285

「マイカちゃん!」


 下へ下へと、まるで地獄へ落ちるかのような彼女へ、真多子(マダコ)は堪らず声を張った。


 そして枯れ葉のように儚くビルから離れていく舞華(マイカ)へ向けて、屈伸した脚のバネを一気に開放しながら真多子が飛び掛かっていく。


 頭よりも先に身体が動いたのが功を成したのだろう。

 まるで空を駆ける赤い彗星のように、友情という炎を燃やした灼熱の弾丸が瞬く間に追い付いた。


 なんとか意識の無い舞華を優しく両腕で抱き留めると、残る3本のタコ腕を広げて大きく宙を叩く。

 すると重心がクルリと回転し、真っ逆さまだった彼女達の頭が天を捉え、続けて広げたタコ腕が窓に貼りついた。


「おっとと……1本足りないと、ちょっとバランスが難しいね」


 身代わりとして切り離したタコ腕の分、やや不格好ながらも辛うじて落下を免れたようだ。

 そこまで見届け、僕はようやく息を吐き出す。


「ふぅ……ヒヤヒヤさせるなよ。 でも、お疲れ様……真多子」


「あっ! コーちゃ~ん、そっちは大丈夫~?」


 心配しているのは僕の方だったのだが、十数m下にいる真多子には聞こえていなかったらしい。

 激戦の後だというのに、夕陽に照らされ太陽のような笑顔をニコリと輝かせている。


 憑物が取れたかのように安らかに眼を瞑る舞華と顔を並べていると、幼少期に見た二人の面影と重なった。


「問題ない! それよりも、そっちの手当が先だろ! 早く戻ってこい!」


「おっけ~!」


 あれほどまでに張り詰めた緊張感はどこへ行ったのか。

 なんとも気が抜ける和やかな返事が届いたので、僕も肩の力を抜きながら割って出た窓へと這い上がる。


 しばらくすると、舞華を抱えた真多子も戻って来た。

 両腕で抱きしめていた彼女を床に横たえると、僕へ期待の眼差しを送って来る。


「分かってる、χ眼(カイガン)……ふむ、大丈夫だ。 直ぐに影響のある傷はないよ。 ただの気絶だ、腕を上げたな」


 僕の右眼の力を使い、舞華の身体を透過しながら調べていく。

 真多子の攻撃がほとんど急所を外していたのもあり、打撲程度で済んでいた。


「良かった~! ちょっとやりすぎちゃったかもって心配だったんだよね~」


「手加減なんてする余裕なかったもんな。 それよりお前の腕の方だよ」


「アタシ? こんなのすぐに生えるから心配ないよ~! たこ焼きの時だって……」


「おい待て! まさか僕に食べさせたのって……!?」


「え、あ~いやぁどうだったかな~えへへ」


「はぁ、まったく……」


 タコの特性を持つ真多子は、再生力もタコ譲り。

 内臓系が無事ならすぐに回復するのだ。


 防御力を捨て、生存力に振り切った忍者らしい生態ではある。

 だからといって、身体を粗末にしていいわけではないのだ。


 しかし僕は頭を抱えながらも、今日ばかりは彼女の茶目っ気を大目に見ることにした。


 いい加減、兄貴達の逃走劇で地上の騒ぎも大きくなってきている。

 上にいる僕達のことまで騒ぎになるのも時間の問題だろうからだ。


 早急にこの場を立ち去らなければならない。


「その前に……上に行かないとな」


「そうだった! さっきは良い所でマイカちゃんが来ちゃったもんね」


「あぁ、そうだったな。 それで、その娘はどうする? ここで安静にしておいた方が良いと思うけど」


「だめ! アタシが背負ってく! 一緒に行くもん!」


「そうか。 よし、行こう」


 駄目とは言わなかった。

 彼女が掴みとった友情だ、僕がどうこう口出しすることではない。


 なによりも、隠れているのが彼女だけとは思えない。

 失敗したものを始末する暗部が潜んでいないとも限らないのだ。


 身動きが取り難くなっても連れていくのはリスクだが、舞華の安全を買うなら安いのだろう。


 口を開けたまま待機していたエレベーターに乗りこむと、中にはボタンの類が見当たらない。

 何処だろうかと探している内に扉は閉まり、自動で何処(いづこ)かへと連れていく。


「まさか、これも罠じゃないだろうな……」


「でも、お届け物で開いたんでしょ? ならきっと大丈夫だよ!」


「そんな楽観視していいのかな……」


 しかし乗ってしまった以上、僕達に出来ることはもうない。

 ただ目の前の扉が開くのを待つのみ。


 そうして上昇していくグワンという箱全体の唸り音を聞いていると、今度はコーンと鐘の様な響きと共に揺れが治まった。


「着いたか」


「なにが出て来るかな?」


 特に道中の奇襲も無かった。

 そして、ゆっくりと開いたエレベーターの先にも、誰が待ち受けるという最悪の事態も回避できたようである。


 シンとした暗い部屋、装飾過剰なほどに電飾煌めく今までの部屋とは大違い。

 なんとも寂しい雰囲気の中、僕達はエレベーターを降りて周囲を見渡す。


「罠……ではないようだけど、倉庫か何かだろうか……?」


「真っ暗だね~」


 エレベーターから漏れる灯りから先は何も見えない。

 闇雲に動くのは危険だと感じ、壁伝いに手を当て慎重に歩き出すと何かが指先に触れた。


 途端、暗黒の世界が反転し、あまりの眩しさに目が痛くなるほどの光で溢れだした。


「な、なんだ!?」


「ひゃぁっ!!」

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