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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第二章~中央事変~
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善は急げ、便も急げ

マダコちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=156623


星美ちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=49772

「あっ、すいません。 長い通路なのもあって機会がなかったもので、催してきたんですが……」


 ここはベタだが、作業員の注意を僕へ引いておく。


 別に、本当に行きたいわけではない。

 上手くすれば、道案内などを怪しまれずに誘うことができるからだ。


「あ~ションベンっス? 大きい方だとちょっとキツいッスよ」


「お、連れション行くかタコロウ?」


 先頭を行く作業員が振り返りそうになったので、僕は逸るように前へと駆ける。

 少しでも早く案内してくれとばかりに、焦燥した表情も演じておいた。


 そのおかげか、作業員どころか深角(フカク)の兄貴も騙せているようだ。

 丁度良いので巻き込んでおこう。


「兄貴も行きたかったんだ。 なら絶対に行かないとね。 それでキツいというのは……?」


「まぁアレッスよ。 こんな所、酒でも飲まないと仮眠すら出来ないッスから……下からじゃなくて上からも色々出てるんで地獄みたいになってるッス」


「あぁ……えぇっと、それなら小の方だけで……」


 ここですら女性陣は耐えられないのに、それより酷いって確かに地獄だろうな。

 火山には呼吸するだけでぶっ倒れるガスが出ていると聞くが、それと同じレベルなんじゃないだろうか。


 流石にそこまで身体を張る気は無いので、少しでも安全そうな択を取っておく。


星美(スターミー)はちゃんと分身を潜ませたか……?)


 僕が先頭に立って振り返ったことで、チラと横目を動かせば後ろの動きが良く見渡せた。

 すると彼女と目が合い、スッと指を伸ばしたのが目に入る。


 指し示す先には、星美より一回り小柄な分身体が物陰に隠れていた。

 頭が隠れているのに、未熟な身体の割りに大きい尻が隠しきれていない。


 これでは、作業員が振り返ってしまえばバレてしまうだろう。

 中央で魔人類(キマイラ)が能力を使うなんて言語道断、言い訳なんてする間もなく問題となってしまう。


「ションベンはここから戻って……」


「あ、あ~! やっぱり大きい方もしたくなっちゃったな~!!」


 作業員が案内しようと振り返りそうになったので、慌てて声を張り注意を反らす。

 つい口が滑って大便の方に行きたいなどと言ってしまったのを今更公開し始めた。


「どうしたんだタコロウ? お前ぇ、何か悪いもんでも喰ったのかよ」


「え? い、痛たたた……いやぁちょっとね……」


「えぇ~!? 大丈夫、コーちゃん!? あれ……でも、ずっとアタシ達と同じもの食べてたよね?」


真多子(マダコ)ぉぉ!! 今は余計なことを言わずに合わせてくれ!!)


 純粋に心配してくれて、単純に疑問を口にしただけなのだろう。

 元からその場の猿芝居なのだから、ボロが出て当然なのだ。


 しかし、今このタイミングでそんな天然を発動しなくてもいいだろうに。


 思わぬ所からの不意打ちで、僕の頬に冷や汗が伝う。


「なんか辛そうっスね~。 オススメはしないッスけど、大ならこの先の入り口を横に行った所ッス」


 ただの冷や汗なのだが、どうやら腹痛による脂汗だと勘違いしてくれたらしい。

 不幸中の幸いだ。


 さらに大の方は、好都合にも星美の分身とは反対方向。

 地獄になんて絶対に行きたくはないが、これならバレずに済みそうだ。


「すみません、僕にはもう時間がないんです! 案内してください!!」


「え? そんなにピンチなんス? しょうがないッスね~。 こっちッス」


「マジかよ、肩貸すぜタコロウ! 女子はここで待ってろ、こっからは男の尊厳を賭けた戦いだぜ!!」


 流石は兄貴だ。

 ここぞという時に力を貸してくれる。


 僕の右腕を取ると、自分の首に回してガッチリとホールドしてしまう。


(そうじゃないんだよ兄貴……仮病だから本当に行きたいわけじゃないんだ!! これじゃ逃げられない!!)


 星美の分身が奥へ移動する時間を稼げればそれでよかったのだ。

 だんだんと僕の計算が狂い始めていく。


「善は急げ、便も急げッス。 同じ男として手を貸すッスよ」


 なんと作業員まで僕の左腕を取り首へ回す。

 これで完全に僕の動きは制限されてしまった。


「頑張ってねコーちゃん! きっとすぐに着くよ! アタシ達はここで応援してるね!」


 背後から真多子の能天気な声まで届く。

 こっちはこれから地獄の扉を開けるというのに、人の気も知らないで。


「ちょ、ちょっと待って! あっなんか、お腹の調子が急に良くなって……」


「よっしゃぁ、行くぜ案内の兄ちゃん!」


「ウッス!」


「うわあぁぁぁぁ!!!」


 成人男子の二人に担がれ、僕達は全力ダッシュで臭い汚トイレへと連行されていく。

 そして僕が情けない悲鳴を上げている僅かばかりの間に、便所に放り込まれ扉を封鎖までされてしまう。


「うっ……!?」


 まず身体の異変を感じたのは肺。

 一呼吸する度に焼けるような熱さを感じるのだ。


 次に眼。

 あのモモンガ女に喰らった唐辛子を思い出すような刺激で涙が止まらない。


 そして胃だ。

 逆流するように込み上げて来る胃酸、それがさらに喉を焼いて嗚咽が漏れて来る。


「た……助け……!!」


「タコロウ! 漢なら全部水に流してスッキリしちまえ!」


「楽になるッスよ~」


「うぅ……なんでこんな目に……」


 浅慮な策は身を亡ぼす。

 そう身をもって覚えた事件となった。

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