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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第二章~中央事変~
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穴からぼたもち

マダコちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=156623


星美ちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=49772

「シット!! タコロウ、どこ触ってるデース!? 警備に突き出しマス!!」


「誤解だ! 好きで触るわけないだろ。 たぶん真多子(マダコ)の腕だって」


「ゴメンねミーちゃん……アタシ邪魔だったかな」


「だぁぁ、聞こえねぇだろお前ぇら! 狭いのは仕方ないんだから黙ってろっつの!」


 それほど大きくは無い点検口のような壁の穴。

 そこに四人の頭を近付ければ、押し合いへし合い揉みくちゃだ。


 深角(フカク)の兄貴の一喝で口をつぐむと、遠く離れた場所から反響する会話へと耳を寄せる。


「で、どうなんだいスクイラー。 あの使い捨てがしくじった以上、もう時間がないんじゃないかい?」


「はっ! それにつきましては他に手を打っております、イカージョ様。 その一つには……を送りました。 あれで頭はイカれた天才、必ず……へ細工を施してくれましょうぞ」


「あら、気が利くじゃないか。 この間の停電騒ぎの時も、腕は確かだったからねぇ。 アンタの拾って来た中では一番のアタリめちゃんだわ」


「そしてもう一つ。 先程提案いたしました……の件ですな」


「あぁ、それかい……に一度痛い目を見てるって言うのに、本当に上手くいくかねぇ?」


「ご安心を。 此度は恥を忍んで……に援助を頼んでありますゆえ。 このままイカージョ様の輝かしい功績に傷を付けるよりは得策かと」


「分かったよ、それで進めなスクイラー。 あとは……に任せて、こっちはその……を出迎えと行こうじゃないか」


 流石に曲がりくねった穴の先から反響して伝わって来るだけあり、音が重なっている。

 だが所々聞き取れない箇所があったものの、粗方は理解できた。


 そのまま続きを期待して耳を澄ませていたが、 結局遠のく足音が残響するだけ。


 コツコツと叩く堅いヒールと、タップダンスみたいに上等な革靴の音。

 おそらく声の通り、男女の二人組だろう。


「ねぇ、コーちゃん! もしかしなくても、今のって昨日の悪い人達じゃないかな!?」


「十中八九、そうだろうな。 聞き覚えのある老紳士と、イカがわしい感じの女の声。 忘れるわけも無いさ」


「ミートゥー!! 特にあのおっさん! リトルミーに酷いことしてマース!! 許せないデス!!」


 この中央へと来る晩、僕達は何者かに襲われた。

 襲撃とはその時のことだろう。


 奴らの狙いは、()国主(こくしゅ)様から預かった巾着袋。

 しかも、誰も知らないはずの中身まで把握している様子だった。


 一度は奪われたものの、星美(スターミー)の分身トリックと真多子の活躍があって取り返す。

 そうしてなんとか撃退に成功したものの、奴等はまだまだ諦めていないらしい。


「しっかし、あの爆発で生き残るたぁ……あの連中も相当しぶといじゃねぇの」


「兄貴もよく爆発して、ピンピンしてるじゃないか」


「それもそうか。 つっても、向こうは電気技術の車だったろうが? オレ様の蒸気機関とは爆発が全然違ぇよ」


「危険なのはどっちも一緒じゃないかなフカくん……でも電気かぁ~。 最初は珍しかったけど、ここでは見慣れちゃったね」


 兄貴や真多子との会話で、僕は一つ気になることを見つける。

 すっかり済んだことだと思っていたが、謎はまだ残っていたのだ。


(電気技術……そうだ、確かに使っていた。 電気は中央にしかない。 ということは、ここに奴らの拠点があるのか……?)


 馬車があたりまえのこの世界、そこに異質な車両を作り出し運用することが出来る者がいるはずだ。

 それが奴らの会話に出て来た『天才』とかいう奴か。


 名前は聞き取れなかったが、この先にある発電施設を停電させた張本人。

 油断できない相手だろう。


「そういやぁ……オレの記憶違いじゃなければ、アイツ等もう一人いなかったか? 声は聞こえなかったけどよ」


「えぇ~? アタシはあの晩、二人しか見てないよ?」


「いや、兄貴の言う通り運転手がいたと思うよ。 僕も詳しくは覚えてないけど」


「ウップス……ミーもあのおっさんに気を取られてて、そこまで確認してなかったデース……一番近かったのに……」


「ミーちゃんは一番危険な立場だったんだから、そんなこと気にしなくて大丈夫! とっても役に立ってたよ~!」


「お姉さま……!!」


 労をねぎらわれて感極まった星美が真多子へと抱き着く。

 そうやって甘やかし過ぎるから、生意気に育ってるんじゃないのかとたまに思う。


 もう少し素直になるよう、お灸を据えてやりたいものだ。


「そんなことよりも、アイツ等がまた悪さしようと動いているのが気になるかな」


「おう、細工とか言ってたぜ。 まぁこの辺で弄るつったら、この先の発電施設しかねぇな。 今度は停電じゃ済まねぇ騒ぎになるかもしれねぇぞ」


「やっぱり兄貴もそう思う? なら行って確かめるしかなさそうだね」


「もう一個の出迎えの方は、全然情報ないもんね。 アタシもコーちゃんの案にさんせ~い!」


「タコロウには賛成したくないデース。 だからお姉さまに賛成しマース!」


「お前なぁ……はぁ。 とにかくそろそろ怪しまれかねないし、先に進もう。 真多子、ソレもう一回ハメ込めるか?」


「ちょっと待っててね~よっと!」


 僕の頼みに応えて、真多子が四本の腕を添えて水平に蓋を押し込む。

 すると、外した時と同様にガコンと軽い音が鳴ってピタリと嵌った。


 最初と同じまったく継ぎ目見えない綺麗な壁。

 これなら盗み聞きしたこともバレはしないだろう。


 不要な騒ぎを起こさないと確信すると、僕達はまた長い長い通路を下っていくのであった。

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[気になる点] 言い合いの締めとして兄貴が大声で騒いだのが相手に聞こえてしまうのでは? というのが気になって気になって。
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