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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第二章~中央事変~
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壁に耳あり穴もあり

マダコちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=156623


星美ちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=49772

 案内の手続きは、意外にも簡単に済んでしまった。

 観光にも使われているだけありマニュアルがしっかりしているのだろう。


 こういうところでも、海岸あるウチのような田舎国との違いをひしひしと感じてしまうな。


 それが済むと受付嬢はフロアにいくつか分かれている通路の一つを指した。

 彼女はあくまでも受付であり、ここでお別れなのだろう。


「発電施設は地下行きの通路を真っ直ぐに進んでください。 向こうの発電部署の作業員が待っておりますので、着きましたらそちらの指示に従ってくださいね」


「真っ直ぐですね、わかりました」


「ちなみに……もしも怪しいことをするようでしたら、先程の堅円谷(カタツムラヤ)さんが飛んできますから。 面倒なことは起こさない様にお願いします。 私が疲れますので」


「ははは……苦労されてるんですね……」


 普段は入り口の警備担当だが、口実さえあればすぐにでもココへ寄って来るのだろう。

 あの男、熱心なのか浮ついているのか判断に困る人だ。


 しかしこう釘を刺されては、迂闊に本社を調べることは難しいだろう。

 手続きの際、人数を数えていたのもあって誤魔化しようがない。


 こればかりは、流石に星美(スターミー)を増やしたところで明らかにおかしいものな。

 大人しく受付嬢に見送られながら、僕達は地下への通路へとぞろぞろ連れだって歩き出した。






「……もう聞こえねぇか? しっかしよぉ、中央ってのはマジでスゲェのな! どこもかしこも光輝いてるんだぜ?」


 同じ景色が続くせいかやたらと長く感じる通路。

 それをいくらか進むと、後ろを気にしながら深角(フカク)の兄貴が興奮気味に語り出した。


 一見ガサツなところがあるように見えて、女性の前では良い恰好したがる節がある。

 オノボリさんだと思われたくなくて我慢していたのだろう。


「嬉しそうだね兄貴。 来るって言いだした時は騒ぎになるんじゃないかとヒヤヒヤしてたよ」


「まぁな……電気技術なんて他人の褌で得た知識だと馬鹿にしてたけどよぉ、流石にこのオレ様もちっとだけ見直したわけよ」


「フカくん、いっつも頭抱えて機械弄ってたもんね」


「おうよ。 転生者だかなんだか知らねぇがよぉ、一から功績を作り上げんのが漢ってもんよ!」


 グッと力こぶを作るように腕を捲るが、兄貴は喧嘩がからっきしなので平山だ。

 真多子(マダコ)くらい筋肉の塊な腕ならいざ知らず、普段から作業場に篭る人種には難しいだろう。


 下手をしたら生粋の魔人類(キマイラ)な兄貴よりも僕の方が腕力があるかも。

 だが持ち前の長身と口の回るフカしで誤魔化すので、チンピラ連中に舐められているのを見たことが無い。

 流石は兄貴だ。


「それにしてもどこまで続くんだろうね、この通路……?」


 飽きてきて手持ち無沙汰なのか、真多子がペタペタと壁を触れている。

 なにぶん、彼女の腕は6本もあるのだ、余る手は多いだろう。


 掌の吸盤をツルリとした綺麗な壁面へと吸い付け、キュポンと音を鳴らす一人遊びをしていたらしい。

 ()の国ではあそこまで綺麗な壁なんて珍しいから、感触が楽しいのだろう。


「真多子、変なスイッチとか押すんじゃないぞ。 急に警報とかなったりするからな」


「へぇ~、こっちにはそんなに便利なものがあるんだ~……あれ? ここだけ何か音が違うみたい」


 キュポンと反響させていた壁の音が、確かにそこだけ響きが軽い。

 壁の奥に空間があるのだろうか。


「ほぉん、オレにも見せてみろよマダコ」


 兄貴が丁度捲っていた腕で壁に触ると、コツコツと細かに叩きながら移動して範囲を絞る。

 そうやって粗方の四方範囲を確かめると、真多子に向かって押し相撲のようなジェスチャーを送った。


「どうしたのフカくん?」


「たぶん四隅を引っ張れってことじゃないかな。 そうだよね兄貴?」


 確認のために訊ねると、肯定の意を示す静かな頷きが返って来た。


「しっ……あんまり音立てるんじゃねぇぞ。 どこに響くか分かんねぇしな」


「なるほどぉ、ちょっと待っててね。 ほいしょ!」


 真多子の6本あるうちの4本を兄貴の指定した位置に張り付けると、均等に力を入れて吸盤を引っ張る。

 すると、ガコンとあっけなく壁の一部が外れてしまった。


 まったく継ぎ目の見えない綺麗な壁面だったが、そこにくっきりと暗い穴がこちらを覗く。

 取っ手が無くとも、タコの能力を持つ彼女にかかればこれくらいの芸当も朝飯前なのだ。


「なんだぁ? 思ったよりも深いな、こりゃぁ。 風は来てっから、繋がってはいそうなんだが……」


 穴が開くなり、迷わず兄貴が頭を突っ込む。

 まったくの躊躇なしだ。


 技術屋として、やはり施設の作りが気になるのだろう。


「兄貴、あんまりやり過ぎると警備が来るよ。 さっき注意されたじゃないか」


「堅い事言うなってタコロウ……お? 何か聞こえるぞ。 話し声……襲撃がどうのって言ってんな」


「……!? 兄貴、もうちょっと詳しく!!」


 思わぬところできな臭くなってきた。

 襲撃なんて商社に似合わない荒事、普通会話として出て来るわけが無い。


 この向こうに誰がいるのかは分からないが、もしかしたら僕達を襲った何者かに関連するかもしれないだろう。


 兄貴が頭を引っ込めて手を招くので、僕達も近くへ集まり聞き耳を立て始める。

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