一方、蒸気屋台では
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窓の外は目まぐるしく景色が変わり、僕達の乗る蒸気屋台『ヤタイヤタイヤ』の圧倒的速度を実感する。
こうして無事に走れているのを見るに、敵車両へ残した真多子は上手く事を運べたようだ。
(あとはアイツが無事戻ってきてくれるかが心配だ……)
急加速による衝撃で団子状態になっていた僕は、居てもたっても居られず立ち上がろうともがく。
しかし、なかなか立ち上がることが出来なかった。
あれだけ沢山いた星美の分身体も、子供の身体とはいえのしかかられると結構重い。
星美の本体が分身体を戻してくれれば早いのだが、本人は中に埋もれており、それどころではないのだろう。
(まったく世話の掛かるお子様だ。 自分の力を制御し切れてないじゃないか)
『力に飲まれるな』と、あれほど先々代が耳にタコが出来る程言い聞かせていたのに仕方のない奴だ。
視界を塞いでいる未熟な身体のくせにデカイ尻を押しのけ、ようやく上半身の自由が利くようになると、すぐに肉団子から抜け出した。
息を整えると自分の身体を右眼の『χ眼』を開き、異変がないか確認するため身体を見下ろす。
X線のように生物を透視するこの十字瞳。
平時は骨折や怪我の有無を確認するくらいにしか活躍の場は無いが、それでも無いよりずっと役には立つ。
幸いなことに、あれだけ派手に吹き飛んだ割りにはピンピンとしていた。
分身たちが丁度良くクッションの役割になったのだろう。
残る問題は、目の前の肉団子だ。
「ほら、後部扉が開けないだろ。 早く起きろって」
真多子が帰って来るにしても、窓から入って来るのは大変だろう。
後ろを開けて、少しでも楽に帰還させてやりたかった。
そのためにも、このお邪魔なヒトデ団子を片付ける必要があるのだ。
星美達はみんな見た目は同じだが、本体の一人のみは少しだけ身体が大きい。
ざっと『χ眼』で埋まっている奥の方まで見比べて、一番大きい尻を見つけ出す。
このように透視して奥まで見えるこの力は雑踏などの追跡でも使えるが、基本的に身体能力が凡夫の僕では相手に逃げられると追えない為、やはり今一つ使い道に困る能力だ。
「いた、コイツか。 今出してやるから大人しくしてろよ……」
団子の真ん中ほどで、アンコのように埋もれていた星美本体を引っ張り出そうと腕を突っ込む。
その時、遠くで爆発音が響き、音の衝撃が車体を揺らす。
「な、なんだ!? 真多子には砲塔をズラすようにしか指示してないはずだけど……本当に大丈夫だろうか……」
あの装甲車の上には、悪党の男女が二人組で揃っていた。
どちらかを黙らせても、片方が発射指示を出せば蒸気屋台は吹き飛んでいただろう。
だからこそ確実に攻撃を不発させるため、発射装置そのものを狙わせたのだ。
だというのに、一体何をしたらこんな爆発音が鳴るというのか。
「おわっと……!!」
予想外の異常事態に耳を澄まして様子を窺っていると、今度は蒸気屋台が後方に一瞬引っ張られるような傾きが生じる。
また団子に埋もれては厄介だ。
なんとか踏ん張り持ちこたえると、後部扉の窓から何かが見えて来る。
「鳥……いや、それにしては大きいような……?」
車内から洩れる灯りでは暗くてよく見えないが、グングンと蒸気屋台に追い付く速さで迫って来ていた。
近付くにつれて輪郭はハッキリとしていき、やがてそれが何なのか思い当たる。
(そうだ……あれは、あの見慣れた腕は……!!)
しかし、気が付いた頃にはもう遅かった。
否、予め分かっていても防ぎようは無かったのかもしれない。
次に僕が瞬きをして目を開けた時、すぐ目と鼻の先には『真多子』がいた。
「コーちゃん、ただいま~!」
「おかえ……ぶふぉ!?」
後部扉を突き破り、星美達をも蹴散らして、最後に僕の胸へと飛び込んで……いや僕を巻き込んで吹き飛んだ。
ロマンティックな再会とはならず、随分と騒がしいものとなってしまった。
肺の中の空気が全て吐き出され、衝撃で目がチカチカする。
扉と星美達が緩衝材となり威力が減ったとはいえこれである。
モロに受けていたら死んでいただろう。
こんな威力どうやったのか。
蒸気屋台に張り付けていたタコ腕が、ゴムのように一気に伸縮して戻って来たのだろうか。
だが、真相を考えるような余裕が今の僕には無く、真多子と抱き合うような形でゴロゴロと玉のように転がっていた。
まるで柔道の地獄車を受けているみたいだ。
死ぬほど目が回り、三半規管がおかしくなる。
「どわぁぁぁぁ!? あだっ!!」
どうやら炉に放り込まれる前に、なんとか止まったらしい。
頭を強く床へと打ち付けてしまった。
「う、うぅ……大丈夫か、真多子……」
「うん! アタシは全然ヘーキ! コーちゃんはなんだか辛そうだね」
タコ眼を持つ真多子は、逆さになろうが横向きになろうが、物を正確に捉える便利な眼である。
そのため、僕のように三半規管がおかしくなって酔うこともないのだろう。
空中や壁を縦横無尽に動き回る彼女に必須の特性だ。
僕もタコの特性を一部ながら持つが、残念ながら片目と掌だけだ。
それではなんの役にも立たず、こうしてへばっている。
「おう、タコロウ! 後ろで変な音がしたけど大丈夫かよ!? また敵じゃねぇだろうな!」
この騒動で心配したのか、伝声管から深角の兄貴の声が届く。
僕だって予想外の展開だ。
兄貴の方も、気が気じゃないだろう。
「大丈夫だよフカくん、アタシだから! コーちゃんは……今ちょっと返事できそうも無いみたい?」
「お、そうか、戻って来たのかマダコ! アイツらを片付けるたぁ、やるじゃねぇの! あとはオレ様の運転に任せてゆっくりしとけ」
「よろしくね~!」
グロッキーな僕に代わり、真多子が伝声管越しの兄貴へと返事する。
兄貴は速度の伸びている蒸気屋台を運転出来て、かなり気が大きくなっているようだ。
滅入っている僕とはかなり対称的である。
「うっぷ、真多子……そろそろどいてくれないか……?」
僕が床に後頭部を打ち付けて倒れ伏せ、その上で僕を押し倒すように覆いかぶさる真多子。
この状況を星美に見られたら、今度はもう片方の頬にも赤い紅葉が咲くに違いない。
「それに、目のやり場にも困るしな……」
真多子は今、戦闘服に着替えた状態だ。
かなり特殊な代物で、兄貴の発明品の一つである。
そう、あの大干支中の女性を敵に回した代表作、『特殊な海藻で作った透明の衣服』だ。
真多子はタコの保護色能力で身体を自由に変色出来るとはいえ、来ている衣服まで変色するなんて魔法みたいなことは出来ない。
当然、そんなことでは隠れることもままならない為、この衣服が役立つのである。
防御力は無いに等しいが、隠れて討つ忍者にとっては些細な問題だ。
そして隠れる時以外は変色して服を着ているように錯覚させているだけで、ボディペイントみたいなもの。
実際は布一枚かませているとはいえ、実情を知っていると中々に直視し難い。
特にこう密着していては錯覚の効果も薄れ、かなりクッキリと身体のラインが見えてしまう。
「あつ! ゴメンねコーちゃん、よいしょっと」
真多子は僕からどいて立ち上がると、タコ腕で僕を引き起こし肩を支えてくれる。
「すまないな……あれ、星美は?」
そういえば姿が見えない。
ビンタが飛んで来ると身構えていたのだが、不思議だ。
「ロンリー……ミーはここデース……」
内へ強引に開かれた後部扉が閉じると、扉の影からフラフラと千鳥足の星美が現れた。
真多子が入って来た時に挟まれたのだろう。
「ひゃぁぁ! ミーちゃんゴメンね!!」
「うぅ……いいんデスお姉さま……でもタコロウ許せないデース」
「何でだよ!」
ともかく色々とあったが、これで僕達の中央行きを邪魔する者はいなくなった。
あとは中央に着き、どこにいるとも知らない『返却物』を渡す仲介人を探すだけだ。
初めての作品のため、色々と間違っている所があると思いますので、ご指摘・アドバイスなどをいただけると助かります!
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