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第九十六話 赤腕の魔術師

 翌日を迎えギルドに行く。久し振りに両手が使えるようになったので狩りか何かがしたくなり何かいい仕事が無いのか聞きに行く事にした。魔力補充の仕事は楽でいいのだがそれだけだと何の為に冒険者をしているのか分からず面白くない。


 久しぶりに部屋の中に入って行くとイリーナではなく初めて見る女性が座っていて、この女性もイリーナに引けを取らない位の可愛らしい女性だ。絶対にフェドセイの趣味で選んでいるようにしか思えない。


 イリーナは事務所の中にいた様で、俺が姿を見せるとその女性から直ぐにイリーナへと引き継がれた。


「仁さんお久しぶりです。今日はどうされ…………」


 イリーナ話しながら俺の義手に気が付いたようで言葉を無くしてしまったようだ。


「昨日、義手が完成したのですよ、ちょっと派手なのですがどう思いますか」


 イリーナに義手をよく見て貰う為、指を広げたり閉じたりして見せた。イリーナは俺の義手に興味を持ったようで、カウンターから手を伸ばして触って来る。


「何でこんなに変わった形をしているのですか」


「やはりそう思いますよね、依頼したときは普通の義手が出来る予定だったのですが、完成したらこれになっちゃいましたよ」


「私は義手の方を色々と見ていますが、この義手の形と色は珍しいですよね、それにこんなに滑らかに動いているのは驚きですよ」


 俺の事を褒めてくれているようで嬉しくなり、隠してある仕掛けを見せてあげることにした。最初の仕掛けは拳を握り絞めゆっくりと魔力を込めると炎の剣が出て来る。


 その予定だったのだが、なぜだか火炎放射器の様に炎をまき散らしている。さらに運が悪い事に入口の扉を焼き尽くしてしまい、通路の先にいた冒険者にもこの事態を見られてしまった。


 俺は直ぐに炎を止めようとしたが中々上手くいかず時間が掛かってしまったので、部屋の中にあった物は殆ど消失させてしまい、壁にも甚大な被害を生んでしまっている。イリーナは顔が引きつっているだけだったが、先程の女性が事務所から現れたと同時にかなり大きな叫び声を上げてしまった。どうしようもなくなり思わず逃げようとするとイリーナに止められる。


「仁さん、逃げたらもっと状況は悪くなりますよ、わざとやった訳では無いのは分かりますからもう少しここにいて下さい。直ぐに出てきますから」


 イリーナの言いたい事は分かるが、かなり憂鬱な気分になりながらもい一度椅子に座りなおした。直ぐに事務所の扉が開きフェドセイが怒りに顔を赤く染めながら、俺の顔と部屋の様子を二ながら怒鳴り散らしてきた。完全な俺の予想通りだ。


「てめぇまたやりやがったな、今度は放火か、お前はギルドに何か恨みでもあるのか」


 こうなってしまってはフェドセイにはいくら弁解しても無駄だ。俺は謝っているのだがそれでも胸倉を掴まれて奥の部屋に連行された。この様子を焼失した扉から覗いていた冒険者により、「赤腕の放火魔」という称号を貰い、それを不憫に思ったのかイリーナは俺の二つ名を正式に「赤腕の魔術師」と変更した。


 ギルドで火事騒ぎを起こしたのはやはり俺が初めてらしく、フェドセイの説教は恐ろしく長く続き、一時は降級になってしまうところだったがチムールが間に入ってくれその件は一時保留となった。夕方になってようやく解放され、かなり疲れてしまったがそれでもキンケイドの元へ馬を全力で走らせた。


「キンケイドさん、何処にいますか、義手がもう壊れてしまったようなんですが見て下さい」


「どうしたんだ、やかましいぞ」


 不機嫌そうなキンケイドが出てきたが、それを無視しながら今日あった事を話始める。直ぐにキンケイドが魔道具を調べ始めると原因は簡単に判明した。


「お前の魔力が強すぎるんだよ、だから形を保てないでそうなってしまったんだな。どうせお前は剣を使えないからこれを止めて一先ず魔力制御の魔道具に変えてみるか」


 キンケイドは何かを考えて魔力制御の魔道具に変えたが、俺にはその魔道具が何のために付けられたのか意味がその時は分からなかった。しかし翌日の講義にその魔道具の効果が遺憾なく発揮した。


 魔力制御の魔道具は本来ならば身体の魔力を集め魔法を発動する為の物だが、俺にとっては魔力の流れを潤滑にサポートしてくれるので「魔法障壁」も「魔力探知」も簡単に扱えるようになった。いきなり当初の予定を達成したので、更なる講義を続けるか悩んだがアーシャ達が戻り次第にダンジョンに潜りたくなったので、一度講義を終了する事にした。


「まぁそれもいいだろう、また何か知りたい事があったら遠慮なしに尋ねてきなさい」


「はい、ありがとうございます。ようやくダンジョンに潜れそうですよ」


 この日から数日はこれからの未来を想像して楽しかった。



 まさかここまでかかるとは思いませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無駄にやり過ぎるあたりが少し気になる
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