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第九十五話 キンケイドの趣味

 アーシャとラルフのテストが終わった後の事は最悪だった。マイルスと何故かパウリーネは俺が講義を受けているのをずっと見学しているし、酒に酔っているせいか魔力が暴発して俺が出現させた障壁で闘技場を壊してしまうなど散々だった。


 チムールも酔っているので俺が闘技場を壊してしまう前に対処する事が一切できず、ただ見ていた。当然この事はフェドセイにバレてしまい直ぐに呼び出しをくらい散々説教を受ける羽目になってしまった。闘技場も使用禁止になってしまう事だったが、何とかチムールが取り持ってくれ最悪の事態は避ける事が出来た。


 アーシャとラルフに高級なレストランで奢ろうとしたら、そこにもマイルスやパウリーネが参加して更にはチムールやフェドセイまでもがやって来て全て俺が会計をする羽目になった。つい前に「中間の地」でかなり稼いだはずなのだが僅か数日で大部分を失ってしまうことになる。


 数日が過ぎ、アーシャとラルフがダンジョンに旅立って行ったのでこれから二週間ぐらいはこの広い家で一人だけで過ごす事になる。昼間に講義を入れてしまったので、「中間の地」には行く事が出来ず暫くは生活費を稼ぐ手段を失った様に思えたが、チムールに魔道具工房を紹介され午前中はそこに通って空になってしまった魔石に魔力を補充する仕事をしている。


 魔道具工房の仕事は楽な割には中々効率のいい仕事で、本気をだせば更に何倍もの金を稼げるのだがそこはチムールの指示により俺が魔力を込める量は決められている。


 一人になってから一週間が過ぎたころキンケイドから早くも義手が完成したと連絡が入ったので、その日は講義が終わったら直ぐに工房へと馬を走らせた。


 キンケイドの工房は相変わらず熱気に満ちていて、どのドワーフも熱心に何かを作っている。その脇を通り過ぎてキンケイドのいる事務所へと入って行った。


「キンケイドさん出来たのですか、早く見せて下さい」


「いやぁ面白い義手が出来たぞ、着けてから微調整するから上を脱げ」


 キンケイドが箱から出したのは右手よりも太くなっていて、それだけならまだしも真紅に輝いている。


「キンケイドさん、この前とかなり色が違っているのですがどうしたのですか」


「どうだ、いい色しているだろ、この色にしたかったからわざわざ他の工房に色を入れて貰ったんだ。そんな事よりさっそく着けるぞ」


 たしか完成予定の義手は肌色で太さもこんなには太くなかったはずなのに完全に別物になってしまっている。形も不自然なロボットのような手になってしまって違和感がかなりある。


 装着が終わった後でちゃんと見てみると、これが自分ではなかったら恰好良いと言えるかも知れないが、自分に降りかかってしまうと勘弁して欲しい。


 ローブの下には長袖を着ていたので、左の袖は切られてしまい、手を動かす度にローブから真紅の腕が現れる。


「これは目立ちすぎませんか、出来れば最初に見せて貰った方がいいと思うのですが」


 このままで終わりにはして欲しくないので、勇気を持ってキンケイドに告げた。


「嫌だな、この義手は俺は凄く気に入っている。もしお前が文句を言うのであれば、俺はもう作る気はしないからとっととそれを置いてでて行け」


 少しだけ気分を害してしまったのか睨んでいるようだ。ハビーブの顔を潰してしまうかも知れないのでここは了承して、後でハビーブに相談しに行こうと思う。


「置いて行く訳ないじゃないですか、ただ驚いただけですよ、ちゃんと使いますって」


 機嫌を直したキンケイドは義手に付けられた魔道具の説明と、ちょっとした仕掛けを説明してきた。どうやらおもちゃと勘違いしているようだ。それに付けないはずの灯りの魔道具が組み込まれていて、どうやらこれは目つぶしにも使う事が出来るらしい。自慢気に言われたが愛想笑いしか出来ない。


 工房を出た後で、ミサン商会のハビーブを訪ねる事にした。見た目以上に滑らかな動きをするこの繊細な義手は凄いと思うのだが、無駄に太い腕と見てくれと言わんばかりの色をどうしたらいいか相談する為だ。商店の中に入った途端、俺の顔を覚えていた従業員に案内されハビーブの元へ行く。


「仁さん、ようやく義手が完成したのですね、冒険者らしい素晴らしい義手ではありませんか、紹介したかいがありましたよ」


 ハビーブは挨拶もそこそこに義手を触りながら興奮しながら言ってきた。やはり物自体はかなりいい物らしく、細かい所まで見ながら何故か感動している。もうハビーブに相談することなど無かった。


「ただ仁さんこれだと服が着にくいですよね」


 ハビーブは直ぐに部屋の外にいる従業員に指示を出して新しい服を準備してくれるようだ。それは有り難いのだがどうせまた金は受け取って貰えないだろうと思い、腰袋に入れてある魔石を全て机の上に並べた。


「代金の代わりにこれを受け取って貰えませんか、魔力を失った魔石に僕が限界まで魔力を注いだ物です。どうですか」


 ハビーブは魔石を手に取りただただ見つめている。俺が暇つぶしに魔力を注いだ物だ。どうハビーブは判断をするのか。


「仁さん、本当は貰ってはいけないのですが、本当に頂いてよろしいのでしょうか。これはアトラス様に届けたいです」


 思いのほか喜んでくれたようだ。ちゃんとハビーブの分も受け取るように念を押してから、新しい服を受け取りミサン商会を後にした。


 嫌な予感は当たり、貰った服には全て左の袖は切られていた。




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