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第九十四話 マイルスのテスト その二

 早くも模擬戦は折り返しを迎えることになる。一試合が意外と早く終わってしまうのが残念だ。


「チムールさん、さっきの試合はどう思いますか」


「いい筋をしているよ、実力はまだまだだと思うが足りないなりによく考えている。相手をしたウメリアは一撃一撃が軽すぎたというか速さに拘り過ぎたな」


 チムールは意外とちゃんと見ているようだ。魔法だけかと思っていたがそうでは無かったらしい。


「次はパウリーネとチェスラフだ。位置につけ」


「パウリーネは珍しいぞ獣人族雑種だ。雑種というと睨まれるから混成種が今の言い方だな」


「混成種とはなんですか」


「親の種が違うのだ。彼女は象種、馬種、犬種のどれかの組み合わせだと思う。完全な獣化は出来ないがそれでも普通の獣化は見ものだぞ」


 まだチムールの説明が終わっていないのにマイルスが始めに合図を出してしまった。もう少し説明を聞きたかったのに残念だ。


 パウリーネの人型はグラビアによくある様なスタイルの女性だが、獣化を始めると今まで見てきた獣人族より身体が大きく変化して、灰色の肌にこげ茶の毛をまとった巨木のような姿に変化した。いかにも棍棒や斧が似合いそうなのだが、パウリーネは盾だけしか持っていない。


 対するチェスラフは身体の大きな人間なのだが、パウリーネの体格に比べてしまうと見劣りしてしまう。それでも大きな剣の模擬刀を構えながらじりじりと歩いて行く。


「パウリーネは全く動きませんね、それに盾しか持っていないのですが大丈夫なのでしょうか」


「彼女は盾師だからな、中々彼女を生かすパーティが居ないからフリーで活動している。人気は高いのだが彼女がしっくりこないようでな」


 全く動かないパウリーネにしびれを切らしたチェスラフは、いよいよ攻撃を仕掛けるようで身体に力を込めている。盾を叩き壊すつもりなのかも知れない。


 チェスラフは大きく振りかぶり盾目掛けて力一杯振り下ろした。すると激しい音が鳴り響きチェスラフは身体ごと弾き飛ばされ、気絶してしまったのか全く動かない。


「パウリーネは合格だ。誰かチェスラフを見てやれ」


 たったの一撃で勝敗がついてしまったが、何がおこったのか意味が分からないのでチムールに解説をお願いした。


「シールドバッシュだよ、相手の攻撃力に自分の力をのせ弾き返す魔法だよ」


「獣人族って魔力がないと聞いていましたが」


「それは違う、ごく僅かだが獣人族にも魔力はある。魔法を使えるほどでは無いがな、ただ混成種は魔法を扱えるぐらいの魔力があるんだ。そうだな、彼女の魔力量はラルフ君と同じ位かな」


 チムールの話通りなら混成種はかなり力を秘めているように思える。普通の獣人族より身体能力に優れた上に魔法迄使えるのであればかなりの上位種ではないか。


「チムールさん、どうして異種の間で子供が出来るのにもっと混成種がいないのですか、いつから獣人族がいるのか分かりませんが純正の方が珍しいような事になっていてもおかしくないのではありませんか」


「やはり君はこの世界に疎いな、この街にいる間は何か疑問を感じたら私に聞きなさい。危なっかしくてたまらんよ」


 チムールのちょっとした座学が始まる。獣人族は基本的に種族の仲間意識が強く同種以外での結婚は滅多にしない。異種間で結婚した場合にその子供は混成種となるが、その子供達は漏れなく子孫を残す事が機能的にできないのだそうだ。その事があるので強さはあるのは分かっているが異種間での結婚は推奨されていない様だ。


「それだと獣人族の間では混成種は立場が低いのですかね」


「それは無いらしい、あれだけの戦闘力だから獣人族の間では重宝してくれるらしいぞ。ただ誰も結婚はしてくれないようだが」


 彼女は優しそうな顔をして、さらにあのスタイルなのに獣化したらまるで別人に変わってしまった。いいのか悪いのか分からないが稀有な存在だ。


「彼女はこの街に長くいるのですか」


「どうした、そんなに気になるのか、君も好きだね」


「そういう事じゃありませんよ」


 チムールは意味深な視線を此方に向けながら酒を飲み続けている。頼むから変な邪推をしないで欲しいものだ。ただ重宝されているはずの彼女が何故一人でここにいるのか気になっただけだ。


「アーシャは合格だ。以上三人には俺達と一緒にダンジョンに行ってもらう。よろしくな」


 おかしな事にマイルスが何故かテストの終了の言葉を話している。


「君と話していて最後の試合を見逃がしてしまったようだな、ほれっ行くか練習を始めるぞ」


 チムールは立ち上がり進み始めてしまったので付いて行こうとしたら、アーシャが駆け寄って来た。


「仁、何とか勝てたよ、どうだった私の試合は」


 冷や汗が額を激しく流れ落ちてくる中、必死に答えを考える。


「すまん、チムールのせいで見逃してしまった」


「えー、せっかく頑張ったのに、あのおじいちゃん少しむかつくな」


 アーシャはチムールの背中を睨みつけている。


「ごめんな、一応あれでも俺の先生なんだ。今度お詫びとして二人にご馳走するからさ」


 俺は心の中でチムールに誤った。



誤字を報告してくれて助かっています。有難うございました。

本編の流れしか見直さない私が悪いのですが。

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