第九十一話 アーシャとラルフ
仁が酒場で魔族の女と遭遇していた頃、アーシャとラルフはダンジョンの中で休憩をしている最中だった。
「アーシャさんこのダンジョンは地図に書かれている情報とは違って全然ろくなのがいませんね」
「何組も入っているから既に狩られているのだろうね、また生まれてくるには時間が掛かってしまうかも」
「二人だと深いダンジョンには行けませんし、他の浅いダンジョンもこのような感じでしたら鉱石狙いの方がいいですかね」
食事を取りながら二人だけの反省会をしている。現在二人が入ってるダンジョンはおそらく有力な魔物を狩られてしまったばかりのようで、今日二人が倒した魔物からは大した魔石が取れていない。
「ここにはダンジョンが沢山あるからって油断していたよ、練習のつもりで適当にここを選んでしまったのが失敗だったね、仁がいればB級以上専用ダンジョンに入れるからいけど、それまではちゃんと作戦を考えないと」
「どうせここで粘っていても意味ないような気がするから、明日は早めに帰って情報を集めましょう」
反省会を終えた二人は交代で仮眠を取ってから行動を開始した。出会う魔物を殆ど逃がさずに倒していくが二人で得た魔石は大銀貨二枚になるかならないか程度のものだ。約二日もかかってこの金額なので、とてもではないがC級の稼ぎと言えるものでは無かった。
まだ陽が明るい内にギルドに戻り依頼表を暫く眺めた後、次にダンジョンの案内図を見に行った。そこには各ダンジョンに何組が現在入っているか分かるようになっている。何組なので正確な人数は不明だがそれで立派な情報だ。
「その偃月刀は魔人殺しのパーティの子だな、中々の切れ味がありそうだな」
いきなり背負っていた偃月刀を抜き取られながら話掛けられ、アーシャは驚きながらも振り返る。
「ちょっといきなり何すんのよ、何なのアンタは」
「すまんな、俺はマイルスだ。ちょっと昨日おたくらのリーダーと遊んだばかりだからつい声を掛けてしまったよ」
ラルフは偃月刀を取り返そうと動き出すが、マイルスの正体に気が付いたアーシャによって腕を掴まれる。
「流石はA級だね、抜き取られるまで全然分からなかったよ、それより遊んだって事は仁と揉めたって事なの」
「おいおい勘違いするなよ、揉めてはいないぞ、何なら後で聞いてみろよ俺達は友達になったんだ。それより難しい顔をしているがどうかしたのか」
マイルスは笑いながら偃月刀をアーシャに返してきた。アーシャは同じ獣人族だからかマイルスは嘘を言っていないように感じて、更にはるか格上のA級と話しが出来る事は滅多にない事なので思い切ってダンジョンの事を相談してみた。
「そうか、確かに二人だけで行くとなるとしっかり情報を得ないといけないぞ、それにこの街でパーティを組んでいる奴らは五人以上で組んでいる。三人組だとかなり厳しいな」
「深い所に行くにはそれなりにいないとやはり駄目ですよね」
「当たり前だろ、臨時のパーティ募集もあるから探してみろよ」
仁が行動を共にするようになったとしてもやはり厳しそうだ。どこかのパーティと共に行動するか、それともパーティを増やすか考えないとこの先やっていけない。帰ったら仁と相談しよう。
「有難うございます。ちゃんと考えてみます」
「そうだ、お前ら俺達と行くか、十人位でヒドラの住処があダンジョンに行くのだけどまだ人数が足らなくてな、ただ実力が無い奴は邪魔になるだけだからテストはさせて貰うけどな」
A級と一緒にダンジョンに行けるなんてまたとないチャンスだ。直ぐにでも返事をしたいがラルフはどう考えているのだろうか。
「アーシャさん、テストを受けませんか」
ラルフも考えている事は同じだったようでその場でマイルスにお願いをした。テストは明後日行われ現在は何人かが受けるのが決まっているらしい。受かれば一週間後に出発して約二週間はダンジョンの中だ。
アーシャもラルフも二週間もの期間をダンジョンに籠る事は経験した事はないが、やってみる価値は十分にある。二人は仁に一刻も早く報告をしたくなったので家路に急いで行く。
「アーシャさん、何だか面白い事になりそうですね、失敗が帳消しになりそうですよ。絶対に合格して一緒に行きましょうね」
家に着いてみたがそこには仁の姿はなく、この前の「中間の地」での稼ぎがとんでもない事になっているのが分かる迄もう少し時間がかかる。




