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第八十九話 A級冒険者マイルス

 俺の前に立ちはだかっている獣人は猿種なのかそれとも違うのか判断はつかないが、聞いていいものか戸惑ってしまう。


「暇になってしまったので時間はありますけど、何か用ですか」


「ちょっと俺と戦ってみないか」


 やはり彼は脳みそが筋肉で出来ている様だ。アーシャも最初そうだったが獣人族の特性なのだろうか。


「遠慮しますよ、戦う意味がありませんから。もう行ってもいいですか」


「意味ならあるぞ、俺はずっと魔人と戦いたかったんだ。だから魔人と戦った俺と戦いたい」


 全然意味が分からない。魔人と戦いたいのに俺と戦ってどうなるというのだろうか。


「あの、噂を聞いたのですがもしかして俺を嫌っている理由は、俺が魔人と戦ったからですか」


「どういう事だ。俺は別にお前を嫌って何かいないぞ、どこのどいつが噂を流しているのか知らんが気にするな、ただお前と戦って俺が魔人より強いのか知りたいだけだ」


 何となく言いたい事が分かって来たが、そんな事でわざわざ戦いたくない。


「俺とあなたとでは戦い方が違いますので戦ったとしても判断は難しいですよ。俺に勝てばあの魔人より強いって事になるのかも知れませんが、そんな事で俺は怪我をしたくないですよ」


 マイルスは首を傾け、納得がいっていない様だ。


「別に殺し合いをするつもりはないぞ、ただ戦うだけだ。その代わりに俺は手甲鉤を使わず素手でやる」


「俺は魔術師ですよ、当たってもさほど怪我もしない魔法を使って戦っても意味があると思いますか、それに俺はあの魔人の強さを全て知っている訳では無いです。相手が余裕をかましている間に全力でぶつけました。試合ではなく殺し合いだったので」


 俺の言葉をようやく理解してくれたのか、あからさまに落ち込んで腰をかがめ膝に手を付く。


「そんな落ち込まないで下さいよ。もし暇なら俺がとどめを刺した魔法を見ますか、それを基準にしてくれたらあなとの攻撃が通用するか分かるんじゃないですか」


 俺の言葉に分かりやすく元気になると、俺の手を引っ張り闘技場の中に入って行く。勝手に使ってしまっていいのか知らないが、全てマイルスのせいにしようと決めた。


 闘技場の中央に固めの柱を出してマイルスに強度を確認してもらう。その後で久しぶりに「偃月刀」を出してドルムントを倒したと同じように柱に向かって放った。


 今自分で冷静に見てみると随分とあらが多い魔法だと思うが、マイルスは真剣に見ている。柱が跡形もなくなった後でマイルスは俺の方を見て、同じような柱を出して欲しいと言ってきた。


 全く同じ柱を出すとマイルスは獣化を始め、身体が黒い毛で覆われ筋肉が競り上がって来る。そしてその大きな手に手甲鉤をはめて柱に向かい攻撃しだした。


 一瞬にして柱に近づきまるでバターを切るかのように柱を切り刻んで行く。そのスピードは今まで見てきたどの人間や獣人より速かった。仮に相手をしていたら素手でも顔を潰されていただろう。接近を許してしまったら対処の方法が思いつかない。戦わなくて本当に良かったと思う。


「どうだ、俺の攻撃力は合格なのか」


「ええ、十分過ぎると思いますよ、スピードも魔人と変わらないと思います」


 俺の答えに満足したのか闘技場から帰る様だ。去り際にマイルスは振り返り言ってきた。


「お前は何か色々と言われているが、困った事があったら遠慮しないで言って来いよ」


 スッキリとした笑顔を見せているマイルスの横をギルドの職員が通り抜け俺の方に寄って来る。


「爆発音がしたので来てみれば、またあなたですか。いい加減大人しくしてくれますか」


「ちょっと待ってくださいよ、今回はマイルスに強制されたせいです。全ての責任は向こうにあるのでそっちに言ってくださいよ」


「あの人に言葉が通じると思いますか、それにあの音はあなたの魔法ですよね、今回は目を瞑りますが次やったらギルド長に言いますからね、ちゃんと綺麗に戻して帰って下さい」


 職員は文句を言うだけ言うと戻って行った。マイルスが全て悪いのに何で俺が注意されないといけないんだ。やはりマイルスには距離を置いた方がいいと決めた。


 バラバラになってしまった柱を全て土に戻し、ついでに整地をする。これならば文句も言われないだろう。何だか疲れてしまい家に戻るが、家の扉を閉めたとたんに誰かがその扉をノックする。



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