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第八十八話 学校での最後の授業

 俺は基本を飛ばして魔力感知と魔法障壁を学ぶことが決定した。


「魔法障壁って闘技場にあった魔法を跳ね返すものですか」


「そうだよ、君の魔法には全く意味をなさなかったあれだよ、君の嫌味で私のやる気をなくさせてどうするつもりだい」


 チムールは少し気分を悪くしてしまったようだ。勿論俺には嫌味を言っていたつもりはないので笑って誤魔化す事しか出来ない。


 説明によると魔法障壁は相手の魔力より多少弱くても魔法を弾き飛ばしてしまう。ただ闘技場のように広範囲で障壁を張るにはそれなりの時間と詠唱の力が必要になる。


「属性はあるのですか」


「属性は関係ない。魔力さえあれば誰でも出来る。早くやってみろ」


 俺は手を前に伸ばし、魔力を前面に出すように身体中に力を込める。


「待て待て、中止にしろ、今すぐ魔力を戻しなさい」


 チムールの焦った声は聞こえているが、何だか上手く言っているような気がしているので、申し訳ないが聞こえない振りをして、更に魔力を込める。


「おいっいいから止めなさい」


「どうですか、俺の障壁は」


 慣れていないせいか魔力をかなり失ってしまったので息が切れてしまう。


「いやいや、全く障壁になっていないぞ、それよりも騒ぎになっているかも知れないから場所を変えるぞ、早く付いて来い」


 チムールは慌てた様子で教室を出て行き、更には学校からも出て行こうとしたときに、フェドセイと獣人族猿種と思われる男が一緒になって駆け込んできた。チムールは何も言わず俺の手を掴み歩き始めるが、俺がフェドセイに肩をがっちり掴まれて動く事が出来ない。


「なぁ慌てて何処に行くんだ。やはり原因はお前だな、長官も逃げなくてもいいでは無いですか。マイルスは問題なしと伝えに戻ってくれ」


 フェドセイは何故かかなり怒っているようでこめかみに血管が浮き出ている。さっきは気にならなかったが学校の中も何やら騒がしく、先生らしき人物が何人もの生徒を抱えながら走り抜けていく。


「何か事件でもあったのですかね、俺も手伝いましょうか」


「君、黙りなさい。頼むから静かにしてくれ」


 チムールは顔をかなり近づけて小さいけれどはっきりと聞こえる声で言ってくる。その様子を黙って見ていたフェドセイだったが、とうとう烈火のごとく怒鳴って来た。


「全部お前の魔力のせいだろうが、大体、長官も付いていながら何をやらかしているんだ」


 勿論この言葉だけで終わるはずもなく、暫くこの場所で説教が続いた。余りの剣幕に帰ろうとしていた学生もこの場に近づく事が出来ずに遠巻きで見ている。


 原因は俺に合ったようで、いきなり魔力を開放してしまった為に魔力を感じる者や感覚の鋭い者にとっては驚きを感じた様だ。ただ殺気がこもっていないので危険は感じなかったが、只事では無いと魔力の元を探しにきたようだ。


 体力や気力がある大人達はそれだけで済んだが、子供にとっては恐怖でしかなく、混乱する子供や気絶してしまう子供が出てしまっている。運ばれている子供をフェドセイが見つける度に怒りが増すのか説教に終わりが見えない。


「あれっチムールさんが居なくなっていますよ」


 先程まで隣で一緒に説教を受けていたチムールがいつの間にか消えてしまっているので、親切に教えてあげたのだが、更にフェドセイは怒り始めとうとう別室に連れていかれ、終わりに見えない長い説教を食らってしまった。


 結論として俺は学校への立ち入りが禁止になり、さらに講義は魔法障壁に囲まれた闘技場の中でしか出来ないことになってしまった。それにより雨の日は講義は出来ない事になってしまった。それに加え勿論今日は家に強制的に帰らされる。


「どうだ、フェドセイの説教は終わったかね」


 ぐったりと椅子に座っている俺に対してチムールはどこからか現れ、呑気に言ってくる。


「何処に逃げたのですか、フェドセイならギルドに帰りましたよ。もう闘技場でしか駄目だそうですよ」


「そうなってしまったか、まぁ全て君が悪いんだから諦めろ」


 チムールは呑気に俺の肩を叩き笑いながら去って行った。何となく納得は出来ないが学校から出て行こうとすると、先生にすれ違うたびに睨まれているような気がする。


 外は雨がすっかり上がっていたので、商店街でも行こうと思ったら目の前に男が俺の進行を塞いだ。


「俺はA級のマイルスだ。少し時間はあるか」


 何だか嫌な予感しかしない。面倒な事にならなければいいが。

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