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第七十九話 疑惑も解消されて

 ラルフが仁の元に辿り着いたとほぼ同時位に客席から堰を切ったように歓声が巻き起こった。


「何なんだあの魔法は、チムールは知っているのか」


 フェドセイは仁の方を見ながらチムールに聞いた。


「初めて見る魔法だな、彼と我々とは魔力の使い方が違っているな」


 その間にも歓声は続いていて客席はお祭り騒ぎになっている。フェドセイは騒いでいる冒険者達に向かい声を張り上げた。


「おいお前ら聞け、噂で聞いていると思うが彼が隻腕の魔人殺し改め隻腕の魔術師だ」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉーーー」


 冒険者の誰もが両手を高く天に向かって突き上げ声を張り上げている。


「あの人は何をあおっているんだ。何だか凄く恥ずかしいんだけど」


「ねぇ手でも振って答えてあげなよ」


「勘弁してくれよ、全く」


 俺はこのバカ騒ぎに耐えられなくなり、フードを深く被ってフェドセイの方へ向かうが観客席にいた冒険者だけではなく、歓声を聞きつけた冒険者までもが集まり始めたので、先にあの部屋に戻る事にした。


 暫く部屋の中で待っていると、フェドセイ達がようやく戻って来る。入って来るなりチムールが俺に質問をぶつけてきた。


「まず聞きたいのだが、君の魔法は誰から習ったのか教えて貰えるかな」


 俺はヨアキムに話した時と同じように嘘と真実を混ぜながら話す。


「なるほど、氷壁の微笑と業火のエルフだったのか、それなら君の変わった魔法も理解出来るな、彼らの魔法も独特だったからな」


 変な二つ名はミネルバとルークのようだ。また会う事があったらこの名前で呼んでやろうと決めたが、果たしてミネルバに氷壁なんて言ってしまったら殺されてしまうのだろうか。


「君は幸運にもエルフに魔法を教わったのだから、詠唱を学ぶのは止めた方がいいと思うのだがな」


 チムールが言うにはエルフが使う自分の中にあるイメージを重視した魔法と原理を理解しながら行う詠唱魔法では魔力の使い方がかなり違うらしい。


「けど、無詠唱を使う人間もいるって聞きましたよ、コスティなんかオリジナル魔法を直ぐに自分の物にしましたよ」


「無論私も無詠唱を使う事も出来るがそれは詠唱魔法の系統であってオリジナルではない。コスティ殿は噂でしか知らないが彼は天才なんだろうな、だから使いこなせても不思議ではあるまい。私はな彼は迷い人ではないかと思っているんだ。ところで君は今のままでいいと思うのだが、詠唱魔法の何が知りたいのだ」


「土と風の詠唱魔法と回復魔法と魔力感知を習いたいですね」


 するとアーシャは会話に割り込んできた。


「魔力感知って多少なら私も出来るけど、あれって魔法だったの」


 チムールは首を横に振りながら答えてくれた。


「獣人族や大体の人間はそのように思っているが、実際には違うもので正確には気配感知だよ。本来の魔力感知は自分の魔力を飛ばして相手の魔力を探る事なんだよ、気配感知は獣も感知できるが魔力感知は魔力を持つ者にしか出来ない。ただ相手の力量は知る事が出来る。ただ仁君のように魔力をわざと隠されると正確には分からないけどな」


 チムールは俺の方を見ながら言ってきたが、別に気分を害している訳ではなさそうだ。


「さて、話を戻すが仁君は詠唱魔法を見る事や原理を知る事はいいが使う事はお勧めしない。時間をかければいいがそれまでの間に今の魔法に悪影響が出てしまう恐れがある。それと回復魔法は属性を持たない君には無理だ。魔力感知は誰でも平気だがな。私が君の専属教師になってあげようか」


「分かりました。是非ともお願いします」


 チムールと今後の予定を煮詰めていると、今までずっと黙っていたフェドセイが痺れを切らしたようだった。


「もういいか、それより疑って悪かったな、ちゃんと約束通り家の面倒は見るからイリーナに条件を教えてやってくれ」


 俺達は話し合いを続けている、一軒家で三つ以上の個室があって、勿論風呂付だは最低条件だ。


 フェドセイとチムールはどんな部屋がいいか話し合っている俺達を見ながら事務所へと戻って行く。ただチムールは俺の耳元に口を近づけ俺だけに聞こえる声で話した。


 俺が何も返せず冷や汗を流しているのをよそに、アーシャとラルフは只で住める家について未だ話し合っている。条件は多岐に渡っているようでイリーナは苦笑いを浮かべている。


 イリーナに案内された家は若干ギルドから離れているが俺達の条件に合う良い家だった。


「迷い人を私は初めて見たよ、それではまた明日な」

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