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第七十六話 冒険者の街ゴルドナ

 静けさが漂う街道をひたすら進んで行くと、段々と東の空が赤く光輝いてきた。


「ゴルドナの街が見えたぞ」


 ラニエロの声が聞こえたので荷物を避けながら前に向かうと、山と山の間を城壁で繋いだ巨大な要塞のような街が見えてきた。


「何だこれは、凄すぎないか」


「そりゃそうだろ、冒険者の街とも言われているが、魔国との唯一の境の街だ。あの城壁があっても足りない位だ」


 朝早いせいか門の周りは閑散としていてスムーズに街に入る為の手続きは終わりて、いよいよラニエロ達と別れる事になる。


「俺達は北側の地区のバーリ工房にいるからいい鉱石を見つけたら持って来いよ、ギルドに卸すより高く買ってやるからな」


「分かりました。是非そうさせてもらいますよ」


「兄ちゃん達またね、本当にありがとう」


 パオロが馬車の後ろから姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。


「今日はこの街の探索でもしないか」


「駄目だよ仁、まずギルドに行って登録しておかないと、それにこの街に暫くいるつもりなら宿より家を借りなきゃいけないからね、遊んでいる時間なんてまだないよ」


 馬に跨りアーシャの後ろに掴まりながらギルドを目指す。この街のギルドはこの国の本部だけあり遠くからでも発見できるくらいに大きい。


「いよいよあそこが本部か、楽しみだよ」


「私もだよ、それに仁と一緒にいれば私では入れないエリアに行けるからね」


「どういうことだ」


「B級以上の冒険者はギルドにとって宝だからね、特にここの本部ではかなり優遇されるよ」


 話している内にギルドに辿り着いた。ギルドの入口には警備員が立っていて入館する人間のカードをチェックしているようだ。俺の順番が回って来たのでカードを渡すと、今まで流れ作業のようにしていた態度が一変して丁寧に話し出す。


「お早うございます。クリフトの所属のようですが此方は初めてでしょうか」


「これからは此方の所属として仕事をしたいのですが、受付は何処ですか」


「私がご案内いたしますので、お連れのパーティの方はいらっしゃいますか」


 既に中に入っていたラルフとアーシャを呼び警備員の後に付いて行く。列に並んでいた時は魔術師の恰好でも隻腕でも別に興味を示さなかった他の冒険者達だったが、この状況には興味を持たらしく俺達に注目している。


 一階の受付の右側を通り過ぎ、その先の奥にあるやけに大きな扉の前には新たな警備員が立っていて、その警備員に引き継がれ俺達はその扉の中に案内された。部屋の中には誰もいなく両サイドの壁には何かが額に入れられて飾ってある。奥には三つのブースがあるがそのうちの一つに案内され、警備員はカウンターの上のベルを鳴らした。


 ブースの奥にある扉が開き、程よいスタイルの可愛らしい女性が現れ、警備員と何やら言葉を交わした後で俺達に向かい笑顔を見せた。


「大変お待たせいたしました。本日から担当させて頂きますイリーナと申します。隻腕の魔人殺しの仁様でいらっしゃいますね」


「あの、名前はいいのですが、隻腕の魔人殺しって俺の事ですか」


 初めて言われた二つ名に驚いてしまうが、イリーナは至って冷静に答える。


「勿論そうです。この時代に魔人を殺したのは仁様以外におりませんので、あの魔石が此方に届いた時にはここの事務所の中は大騒ぎになりましたよ。その中でついでに仁様の二つ名が決まりました」


 勝手に名前を付けた犯人がこの事務所の中にいる事が分かったので後で問い詰めようと思うが、それよりも重大なミスに何で気が付かないのだろうか。


「その二つ名は正直に言うと気に入らないのですが、それよりそのままでいいのでしょうか」


「何故ですか、そんなに気に入りませんか」


 イリーナは首を傾げ、意味が分かっていない様だった。


「ギルドがその二つ名を認めたって事は、魔人がこの国にいたって事になってしまいませんか」


 イリーナの顔はみるみるうちに青くなり、何も言わず勢いよく立ちあがって扉の中へ消えて行った。あの扉の向こうは事務所なんだろう。


「仁さんかなり痛い所をつきましたね、奥ではかなりの騒ぎになっているはずですよ、けど魔人殺しって凄いですね」


 ラルフもアーシャも笑いをこらえきれず背中を丸めている。


「勘弁して欲しいよ、そんな二つ名で呼ばれたら目立ってしょうがない」


 奥の方からは騒がしい声が聞こえてきて、何やら揉めているようだ。イリーナも全然戻って来ず、一体いつになったら受付をしてくれるのだろうか。





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