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第七十三話 VSミドナ猿

 朝靄の中トメン草を探しに森に入って行く。この辺りは霧が深くあまり先まで見渡す事が出来ない。


「これじゃあ地図が全然役に立たないな、視界が悪すぎるよ」


「明日にはゴルドナに向かいたいから、今日頑張るしかないでしょ」


 本来ならば採取には不向きな天候だったが、これ以上この寂れた村に留まっても気分が滅入るばかりなので、早めに依頼を終わらせるために森の中をひたすら進んで行く。どれくらい歩いたのか定かではないが暫くするとアーシャが立ち止まった。


「ここから静かに移動して、この先に何かの群れがいるみたいだよ。仁は接近戦になるけど大丈夫なの」


「ちゃんと考えているよ、心配しなくても大丈夫だ」


 視界が悪いためいつもの陣形ではなくて、三人で横に広がり武器を振っても当たらないように距離をとる。


「向かって来るよ、注意して」


 アーシャの声は聞こえるのだが、その姿を見る事は出来ない。更に霧が濃くなってきて自分の手の先すら見えなくなってきている。


「仁、私達の場所が分からないなら撃つのは止めてね」


「うぉっ、この」


 左の方からラルフが戦っている音がする。すると目の前に俺の目を突き刺すように伸ばしてくる手が見えたが、「バリケード」で防ぎそいつは身体ごと勢いよく壁にぶつかる。ずっと練習していた瞬時に俺の目の前に現れる防御壁だ。但し壁の先端は鋭利になっている為、その上を通過しようものなら切れてしまうだろう。壁の先に気絶しているミドナ猿には「ニードル」でしっかりと息の根を止めた。


 想像以上の成功だと思う。ずっと練習していた成果を実感している。この程度の相手になら余裕で使えそうだ。


 ただ重大な欠点があり、俺が動けなくなってしまう事だ。俺が動いてしまった場所に「バリケード」を出現させてしまうと考えると恐ろしい。そんな事はありえるはずは無いと思ってはいるが一度想像してしまってからは、止まっている時にしか出せなくなってしまった。


「ごんっ」


 考えている最中に鈍い衝撃が後頭部を襲ってきて、俺は前のめりに倒れ込んでしまう。「ホール」で自分の身体を落とし、直ぐに天井の部分を塞ぐ。さらに身体の周囲に「ニードル」を広範囲にわたり出現させる。ミドナ猿の断末魔の声が聞こえてきたので運良く刺さってくれたようだ。


 フードを被っていたおかげで少しはダメージを防ぐことが出来たようだが、俺の頭は割れるように痛い。自分一人であったのならこのまま隠れていたいが、そんな訳にはいかないので天井を解除して這い上がると目の前にミドナ猿の死体を目が合ってしまった。


 二度と不意打ちを食らわないように周囲を警戒するが、それをあざ笑うかのように今度は左脇に爪を立てられてしまう。そいつは「バリケード」によって身体を分断し殺すが、次は後ろと右側に同時攻撃を食らってしまう。


 その二匹に対しても「バリケード」と「ニードル」の組み合わせで撃退し、俺の周りに円を描く様に「ニードル」で囲むが、一匹が簡単に飛び越えてきて俺の頬で削って来る。俺が仰向けに倒れたのでその上に乗っかってきた一匹に「バレット」で吹き飛ばすが、直ぐに別のミドナ猿が俺の肩に噛みついてきたので、頭に杖を向け「バレット」で吹き飛ばした。もうミドナ猿の攻撃は来ないが、俺の身体ももう限界を迎えてしまったようで身体が動かず、そのまま倒れ込んでしまった。


「仁、ラルフ、あいつらは逃げて行ったみたいだから、もう大丈夫だよ」


「分かりました、じゃあそっちに合流しますね」


 二人の声は聞こえているのだが、俺の身体は自分の身体ではない様な気がして、どうしていいか分からず声を出す事すら出来ない。すると今更ながら霧が段々と晴れてきて視界が良くなってきた。


「凄いですよ、こっちに大量のトメン草が生えています」


「じゃあどんどん採取しちゃってよ、ところで仁はどこにいるの」


 二人は合流出来たようだが俺にはその姿は見えない。


「あっアーシャさん、あそこに仁さんが」


「じーーん」


 ようやく発見してくれたようだが、頭の中に靄が渦巻いているようで何も考えられず、指一本も動かす事が出来ない。


 どれくらい時間が過ぎたのか分からないが、気が付くとアーシャの膝の上に寝ていて心配そうに見ているアーシャの顔が見えた。


「仁、大丈夫なの、もう少し寝ていてもいいよ」


「身体の傷は塞ぎましたけど、大丈夫ですか、痛い所はありませんか」


 ラルフの「ヒール」のおかげで大分身体が良くなったようなので、起き上がろうとするがまだふらついてしまう。


「ありがとう、アーシャとラルフは平気だったのか」


「私達は大丈夫だよ、仁こそ一体何があったの」


 アーシャもラルフも至って元気そうだ。それどころか服も全く汚れていない。


「ただミドナ猿にやられたんだよ」


 俺の言葉に二人は息を飲んだ。


「ごめん、私が撃たないでって言ったから」


「そうじゃない。俺が魔法を使いこなせなかっただけだよ、もう少し回復したら行くから先に採取を頼んでいいか」


 アーシャはともかくラルフでさえも無傷で戦えたのに、俺は「バリケード」さえあればミドナ猿ぐらいなら楽に倒せると思っていたのが失敗だった。決して顔には出さないようにしているが自分の対応力のなさに悔しくてたまらない。


「迷い人は無敵じゃないんだよ」


 ミネルバの言葉が頭の中を駆け巡る。

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