第六十九話 VS魔人族?
俺達は何も言葉を出す事が出来ないでいると、その魔人は優雅に地上に舞い降りてきた。
「黙っていないで何か言ったらどうなんだい」
「何で人間の振りをしてあの村にいたんだ」
魔人は首を横に振りながらまるで違うと言わんばかりに、人差し指を左右に振る。
「先に質問に答えてくれないかな、いいかい、どうして君達は生きているんだい」
「どうでもいいでしょ、そんな事」
アーシャはいきなり獣化しながら斬りかかって行った。魔人はその場から一歩も動かないで黒い煙の塊をアーシャに向かって放つ。アーシャはギリギリのところで躱すとその煙はラルフに当たってしまい、ラルフは煙に包まれる。
「うわぁーーーーーー」
ラルフは叫び声を上げた後仰向けになって倒れ込んだ。魔人は首をかしげながら掌をラルフに向ける。
「何をしたんだ」
叫びながら「バレット」を撃ちまくるが、避ける事もせずに全て弾き返された。それとほぼ同時にアーシャがもう一度斬りかかるが、魔人は何処からか黒い剣を出してきて偃月刀を防ぐ。
すかさず「ホール」で魔人を深く落とし、「圧縮」で直ぐに穴を塞ぎながら同時進行で森の中に「アロー」を隠す。地面から何ともないような魔人がゆっくりと上がって来たので、そこにアーシャが「ファイヤーボール」を当てる。顔を両手で隠した魔人に向けて「アロー」を森の中から放つが、魔人に当たる前に粉々に砕けてしまう。
「ねぇ、もういいかな、一回落ち着いたらどうなんだい」
魔人は無防備に両手を腰に当てながら話し掛けてくるが、その時にラルフが起き上がり叫んだ。
「ヒール」
ラルフの両手から光の束が魔人に向かって行く、魔人を回復させてどうすると一瞬考えてしまったが、神と反する魔人には有効なのかもしれない。
魔人は煙のような壁を出して、ラルフからの光を防いでいる。時間にして僅かだったが、ラルフからの光は消えて行った。
「仁さん、すみません。やはり駄目でした」
ラルフは全ての魔力を使い果たしてしまったようで、その場に倒れ込んだ。魔人はその場から離れ。今はまた頭上高くに浮かんでいる。
「あのさぁ、もういい加減にしてくれないかな、言っておくけど僕はドルムントの仲間じゃないからね、しいて言えば敵だよ」
魔人の言葉が全く理解する事が出来ずに、アーシャと目を合わせる。
「おーい、聞いているのか、思い出してごらんよ、僕は君達を一度たりとも攻撃していないだろ、僕は防御していただけだからね」
「私に何かをぶつけようとしていたじゃない、私の代わりになったラルフはあんなに苦しんでいたのに、何を言っているの」
アーシャが魔人に向かい叫ぶが、魔人は首を振りながら呆れたように答えた。
「俺は単なる視覚を奪うための煙だよ、意味わかるかい、単なる煙だからね」
そう言いながら両手を高く上げ、ゆっくりと降りて来る。
「じゃあ、何でラルフはあんなに苦しそうにしていたんだ」
「僕は知らないよ、本人に聞いてみなよ」
俺はラルフを起こしながら聞くと、ラルフは何故か恥ずかしそうにしながら小声で言ってくる。
「仁さん、実はやられたと思って倒れてしまいましたが何も感じませんでした。てっきり、回復魔法が使えるおかげかも知れないと思ってので、そのままやられた振りをしながらヒールの準備に入っていました」
ラルフはバツの悪そうな顔をしている。アーシャは余程心配していたのに騙された事を知って、ラルフの頭を黙って叩いた。
「ほらっ、何かがおかしいから解除しようとしたのに、君達は無茶苦茶な事をしてくるんだもんな、大体ドルムントとあったのなら彼との身体の違いに気が付かないのかな、翼はあるけど体格は普通でしょ、それとも知らないのかな」
そういえば、翼以外は俺達とまるで変わらない。あの時のような恐ろしさは全くない事に今更ながら気が付いた。
「あの、もしかして俺達を殺す気はなかったとか」
俺は恐る恐る魔人に聞いてみた。
「正解だよ、こんなに君達にやられたのに仕返しを一切していないだろ、ドルムントがこの国にいるって情報が入ったから、面倒な事が起きる前に対処するようにって竜魔王様から言われたんだよ、それにいいかな、僕は君達を簡単に殺せるんだぜ、ちょっと見て見なよ」
そう言いながら手を振り払うと、その方向にある木々が一直線に崩れ去って行く。
「何をしたんだ、それを俺達に撃つつもりなのか」
「そんな訳ないでしょ、そんな事をしたら僕が竜魔王様に殺されてしまうよ。君達がここまで僕を信じられないのはドルムントのせいだと思うけど、魔人が全て悪だという考え方は古いんじゃないかな、まぁ少し話をしないか」
未だに全てを信用したわけではないが、どうあがいてもこの魔人に勝つことは出来ないだろう。彼が何をしたいのか分からないが、話をしようと思う。




